桜の花、舞い上がる道を
エレファントカシマシ / CD [Single] / 2008
桜の季節の歌なのに、リリースからひと月以上ほったらかしておいたら、感想を書かないうちに、桜の花がすっかり散ってしまいました。いけません。
なんにしろ、これはエレカシ35枚目のシングル。最近放送された某テレビ番組で36枚目と紹介されていたけれど、おそらくあれはカップリング曲を変更してリリースされた再発版の 『悲しみの果て』 を加えた枚数で、A面というか、タイトル曲だけでカウントすれば、35枚目が正解のはず。いずれにせよ、なかなかすごい数になっている。
このシングルに関しては、ひと月以上、放っておいたのでもわかるように、僕はそれほど盛りあがっていない。この歌の中に「桜が町彩る季節になるといつも/わざと背を向けて生きてたあの頃」という歌詞があるけれど、まさにその「あの頃」の宮本の引きこもりまくりな姿勢に激しく共感してしてエレカシを特別視するようになり、それからたいした成長もないまま現在にいたる僕のようなリスナーにとっては、こういう風にわけもなく前向きなエレカシというのは、いまひとつぴんとこない。
カップリングの 『それを愛と呼ぶとしよう』 というサンボマスターみたいなタイトルの曲にしても、60年代のフォークソングみたいな曲調には、かなり違和感がある。この曲とか、最新アルバムに収録されていた 『こうして部屋で寝転んでると……』 うんぬんという、むやみに長いタイトルの曲とか、この手のビート感に乏しく、おだやかな曲調の歌というのは、エレカシにとって新機軸ではある。新しいことをやろうという意欲は買いたいところだけれど、だからといって好きになれるかというと話は別。僕はこの手の曲をやるエレカシにはあまり関心が持てない。
ただし、 『桜の花』 やこれらの曲で聴ける宮本のボーカルは、いままでになく明朗で開放的だ。怒りを爆発させるのではなく、素直に朗々と歌い上げるその声は、とても気持ちいい。もしかしたらこれは、宮本浩次というボーカリストの魅力が、これまでで一番、引き立ったシングルかもしれないとも思う。そういう意味では、これらの曲が大好きだという人たちがいるのはよくわかるし、僕自身もなんだかんだいいつつ、しばらく前までは、桜の花を見るたびに、「さく~らの~花舞い上~がる~」と口ずさんでしまっていた。
ということで、個人的には特別名曲だとは思っていないけれど、それでもそれなりにいいシングルだとは思う。初回限定盤のボーナスDVD2種類も、ファンとしては、まあ嬉しい。願わくばシングルのおまけなんかじゃなく、普通にフルサイズのライブDVDとしてリリースしてくれたほうが、もっと嬉しかったけれど。
(Apr 08, 2008)