2008年4月の音楽

Index

  1. 桜の花、舞い上がる道を [Single] / エレファントカシマシ
  2. Accelerate / R.E.M.
  3. Rockferry / Duffy

桜の花、舞い上がる道を

エレファントカシマシ / CD [Single] / 2008

桜の花、舞い上がる道を

 桜の季節の歌なのに、リリースからひと月以上ほったらかしておいたら、感想を書かないうちに、桜の花がすっかり散ってしまいました。いけません。
 なんにしろ、これはエレカシ35枚目のシングル。最近放送された某テレビ番組で36枚目と紹介されていたけれど、おそらくあれはカップリング曲を変更してリリースされた再発版の 『悲しみの果て』 を加えた枚数で、A面というか、タイトル曲だけでカウントすれば、35枚目が正解のはず。いずれにせよ、なかなかすごい数になっている。
 このシングルに関しては、ひと月以上、放っておいたのでもわかるように、僕はそれほど盛りあがっていない。この歌の中に「桜が町彩る季節になるといつも/わざと背を向けて生きてたあの頃」という歌詞があるけれど、まさにその「あの頃」の宮本の引きこもりまくりな姿勢に激しく共感してしてエレカシを特別視するようになり、それからたいした成長もないまま現在にいたる僕のようなリスナーにとっては、こういう風にわけもなく前向きなエレカシというのは、いまひとつぴんとこない。
 カップリングの 『それを愛と呼ぶとしよう』 というサンボマスターみたいなタイトルの曲にしても、60年代のフォークソングみたいな曲調には、かなり違和感がある。この曲とか、最新アルバムに収録されていた 『こうして部屋で寝転んでると……』 うんぬんという、むやみに長いタイトルの曲とか、この手のビート感に乏しく、おだやかな曲調の歌というのは、エレカシにとって新機軸ではある。新しいことをやろうという意欲は買いたいところだけれど、だからといって好きになれるかというと話は別。僕はこの手の曲をやるエレカシにはあまり関心が持てない。
 ただし、 『桜の花』 やこれらの曲で聴ける宮本のボーカルは、いままでになく明朗で開放的だ。怒りを爆発させるのではなく、素直に朗々と歌い上げるその声は、とても気持ちいい。もしかしたらこれは、宮本浩次というボーカリストの魅力が、これまでで一番、引き立ったシングルかもしれないとも思う。そういう意味では、これらの曲が大好きだという人たちがいるのはよくわかるし、僕自身もなんだかんだいいつつ、しばらく前までは、桜の花を見るたびに、「さく~らの~花舞い上~がる~」と口ずさんでしまっていた。
 ということで、個人的には特別名曲だとは思っていないけれど、それでもそれなりにいいシングルだとは思う。初回限定盤のボーナスDVD2種類も、ファンとしては、まあ嬉しい。願わくばシングルのおまけなんかじゃなく、普通にフルサイズのライブDVDとしてリリースしてくれたほうが、もっと嬉しかったけれど。
(Apr 08, 2008)

Accelerate

R.E.M. / 2008 / CD

Accelerate

 いやー、これは傑作。4年ぶりのR.E.M.の新作は、いっきに20年くらい時をさかのぼり、デビュー当時に戻ったかのような若々しく、勢いのある作品に仕上がっている。
 キャリア25年にもなるバンドが、こんな風に往年のスタイルに回帰するってのは、非常に稀有なことだと思う。いまどきのストーンズが 『メインストリートのならず者』 のようなアルバムを作って見せることはまずないだろうし、エレカシだって、二度とファーストのようなアルバムは作れないだろう。そう考えると、R.E.M. がいまになって、こういうデビュー当時や絶頂期と比べてなんら遜色のない作品をリリースできるってのは、かなり奇跡的なことのように思える。
 なまじここ数作は、音的に凝ってはいるものの、いたっておとなしめの作品が続いていただけに、ここへきてのいきなりのパンキッシュな原点回帰は、非常にドラスティックで感動的だ。これはぜひ一度、生で聴かせてもらわないことには気がすまない。来日祈願。
(Apr 27, 2008)

Rockferry

Duffy / 2008 / CD

ROCKFERRY

 全英チャートでナンバーワンを獲得したという新人女性ボーカリスト、ダフィのデビュー・アルバム。僕の大好きな元スエードのギタリスト、バーナード・バトラーがプロデュースを務めているというので聴いてみたのだけれど、クレジットを見たら、彼が手がけているのは4曲だけだった。
 スタイル的には、去年大ブレイクしたエイミー・ワインハウスに通じるところのある、非常に古典的なスタイルの白人ソウル系フィメール・ポップ。どうやら巷ではこういうレトロ・テイストのある音楽が流行っているらしい。
 このダフィという女の子は、ボーカリストとしては特別好みじゃないのだけれど、それでも作品自体にはプライマル・スクリームの 『Give Out But Don't Give Up』 に通じる、(白人がソウル・ミュージックをやった場合に特有の?)なんともいえないフィーリングがあって、あのアルバムが大好きな僕は、けっこう気に入っている。とくに2、3曲目のソウル・バラードがお気に入り。
(Apr 27, 2008)