明日への記憶
エレファントカシマシ / 2010 / CD
エレカシが来月リリースの新譜 『悪魔のささやき ~そして、心に火を灯すたび~』 に先行して2ヶ月連続でリリースしたシングルの第一弾、『明日への記憶』。
この曲、あいかわらずメロディ・センスは抜群だし、歌詞の方向性にも違和感はない。ストリングスをフィーチャーしたアレンジも 『サージェント・ペパー』 あたりのビートルズに通じる味があってカッコいい。つまり基本的な部分では文句はない。……ないはずなんだけれど、いまいち盛りあがれない。
なぜだろう……と考えて行き着くのは、『明日への記憶』 というタイトルが象徴する、曖昧さというか、ありきたりさ。なんだか抽象的すぎてひっかかってこない感じ。かつてのように日常性をきちっと切りとっている感じがなくて、いまひとつ親近感が湧いてこないのだった。
カップリングの 『歩く男』 もタイトルにひっかかる。エレカシについては、昔からタイトルに「男」とつく曲は特別だという思い込みがあるのだけれど、この曲からはまったくそういう特別さを感じない。最近よくあるタイプの明るい曲のひとつって感じ。
そんなこと、普通ならばつべこべいうべきではないと思うけれど、仮にも 『歩く男』 なんて、とても宮本らしいどんぴしゃなタイトルをつけたからには、もっと後世に残るような名曲を期待しないではいられない。死ぬまで聴いても聴き飽きないような、そんな曲であってくれないことには。それこそ、エレカシにはそういう曲──二十年以上たっても、いまだに聴き飽きずにいる曲──がたくさんあるのだから。そう考えると、この曲はどうにも名前負けしている感がある。
ということで、曲の出来がうんぬんの前に、このシングルは2曲ともタイトルでひっかかってしまって、素直に賞賛しきれなかった。まあ、とかいいつつ、ここ数日、僕の頭んなかでは 『明日への記憶』 が鳴りつづけているので──そういや、このごろは 『絆』 もけっこうかかる──、やっぱりいい曲ではあると思うんだけれど……(つづく)。
(Oct 29, 2010)