The King of Limbs
Radiohead / 2011 / CD
2月に発表からわずか1週間たらずで配信リリースされて話題となったレディオヘッドの8枚目のアルバム。
知ったかぶったことを言わせてもらえば、最近のトム・ヨークのクラブ・ミュージック志向と、ジョニー・グリーンウッドの映画音楽でのキャリアがバンド・サウンドとして結実した作品、といった感じ。一聴した印象ではビョークを思い出させる緻密なクラブ・サウンドのようでいて、耳をすませば、音のコアは打ち込みではないバンド・サウンドで構成されている。さらには、なにげない装飾音の細部まで抜かりがないという。終盤に並んだ暗いバラード群も、もの悲しくも美しい。
要するに前作『In Rainbow』のサウンドを、より密室的に洗練させた作品なのだと思う。わずか8曲という収録曲の少なさはややもの足りないし、これぞレディオヘッドの代表曲と呼べるようなメロディの切れを感じさせる曲はないけれど、そのロック・バンドらしからぬ緻密なサウンド・デザインには、やはり耳をすます価値があると思う。
少なくてもここでのレディオヘッドはいまだ守りには入っていない。それがなにより大事なところ。彼らが90年代以降でもっとも重要なバンド足りえているわけは、この姿勢ゆえだろう。これだけの名声を手にしてなお、こんな風に新しい音を模索しつづけるバンドはほかにない。ポスト・レディオヘッドの敷居はまだまだ高そうだ。
(Jul 31, 2011)