マジックディスク
ASIAN KUNG-FU GENERATION / CD / 2011
僕がアジカンを聴くようになってから初めてリリースされた、アジカンの最新作。
これ、ひとことで言ってしまえば、アジカンにとっての『ビジターズ』(By 佐野元春)だと思う。それまでストレートなロックンロールを鳴らしていたアーティストが、もっとワールドワイドな音楽スタイルを視野に入れ、ヒップホップを導入したりしてきた点で──さらには部分的にニューヨーク録音を行っているところも──、非常にあのアルバムに近いものを感じる。
とはいえ、全編に渡って統一感のあった『ビジターズ』と比べてしまうと、こちらはオープニングを飾る『世紀末のラブソング』がそういう曲だから、それに引きずられて全体イメージがそちら方向に流れているという感じで、個々の曲を見てみれば、ヒップホップ寄りの曲がそんなにあるでもない。
それでも、『迷子犬と雨のビート』ではホーン・セクションを導入したり、全体的なビートがこれまでよりもゆっくりになっていたりと、確実な変化──それも意識的な変化──を感じさせる曲が多い点で、アジカンにとっての新たな第一歩となる、記念碑的な作品なのだろうと思う。それこそ、佐野元春にとっての『ビジターズ』と同じく。
まあ、『ワールド ワールド ワールド』 の素晴らしさにやられて遅まきながらファンになった僕としては、いままで通りの路線を期待していたために、やや肩透かしをくった感はあるけれど、それでもアーティストとして新しい音楽を目指そうとする意欲は確実に伝わってくるし、これはこれでいいアルバムだと思う。
僕のいちばんのお気に入りは8曲目の『ラストダンスは悲しみを乗せて』。それも、その曲のラスト45秒。この部分がも~、好きで好きでたまらない。
(Jun 30, 2011)