A Creature I Don't Know
Laura Marling / 2011 / CD
UKの若き女性フォーク・シンガー、ローラ・マーリングのサード・アルバム。
彼女の音楽を聴くようになってまだ1年ちょっとにしかならないけれど、いや~、僕はこの子、大好きだわ。声、音、リズム、どこをとってもどんぴしゃ(歌詞は残念ながらわからない)。すくなくてもここ1、2ヶ月に限定すれば、まちがいなくマイ・フェイバリット・フィメール・ボーカリスト、ナンバー・ワンだ。
いや、声ってことでいえば、フィオナ・アップルとか、キャット・パワーとか、ファイストとか、似た声質の持ち主はたくさんいる。みんなそれぞれに素敵。でも彼女の場合、そこにアコースティック・ギターの弾き語りを中心としたフォーク・ロック・サウンドが加わる。
たぶん、このアコギの弾き語りという部分が重要なのだと思う。自らギターを鳴らしながら歌うことで、彼女の音楽は彼女個人のリズム感をはっきりと打ち出したものになる。で、そのリズム認識が僕にはとってもしっくりくる。
アコギは、もっともお手軽なバッキング・ツールだけれど、それだけでなく一種の打楽器でもある。もっとも手軽にビートを刻める楽器でもある。ブルースの昔から、それゆえにギターは多くのミュージシャンに愛されてきたのだと僕は思っている。
ローラ・マーリングの音楽からは、そんなギターを弾く人ならではの一貫したリズム感が伝わってくる(特別に強調されてはいないけれど)。そして彼女のギターを中心としたフォーク・サウンドは、その混ざりもののないナチュラルな響きで僕を惹きつける。
メロディって面ではやや地味目ではあるけれど、彼女の声とこの音があれば、そんなことはあまり気にならない。というか、逆にこれくらいのメロディのほうが、飽きがこなくていいとさえ思えてくる。
さらに今回のアルバムでは、これまでのオーガニックなフォーク・サウンドに加え、『Salinas』や『The Beast』などの曲で、絶秒のディストーション・ギターを聴かせくれる。これが僕としてはツボ。
どちらの曲もはじまりは普通にアコギの弾き語りかと思わせるんだけれど、途中からバンドが入ってどんどん音が厚くなってゆき、最終的にはいままでの彼女の作品にはなかったラウドさでエレクトリック・ギターがかき鳴らされる。特別なギター・ソロとかがあるわけではなく、単にコードを鳴らしているだけなのだけれど、これがもう最高にかっこい~。
オープニングを飾る『The Muse』の初期ボブ・ディラン的なブルースのタッチもたまらないし、前作に比べるとややトラッド色が薄くなって明るい旋律も増えているし、いやぁ、僕の今年ナンバー・ワンはおそらくこれで決まりってアルバム。
万人受けするタイプのアーティストではないかもしれないけれど、こういうのが好きな人にはこたえられない作品だと思います。
(Oct 30, 2011)