2016年3月の音楽

Index

  1. Butterflies / BUMP OF CHICKEN
  2. Painting With / Animal Collective

Butterflies

BUMP OF CHICKEN / 2016 / CD

Butterflies(初回限定盤)(Blu-ray付)

 前作『RAY』から2年足らずという短いインターバルでリリースされたBUMP OF CHICKENのメジャー6枚目のスタジオ盤。
 エレカシが3年アルバムを出さなかったのも珍しいけれど、反対にバンプが2年もしないで新譜をリリースするのも珍しいというか、じつにメジャー・デビュー以来初の快挙。今回はその間もコンスタントにシングルをリリースしていたので、なおさら短い感じがする。
 前作同様、収録曲にはその間のシングル曲5曲をすべて含むため、純粋な新曲は6曲だけ。ただ、僕個人は今回のシングル群をあまり聴き込んでいなかったので、全体的な印象はとても新鮮だった。聴いたことのある曲も、このアルバムのなかで聴くと、よりよく聴こえる。シングルではそれほど好きだと思わなかった曲まで、妙にヴィヴィッドに心に響いてくる。
 とくに個人的には『You were here』がよかった。前回のツアーの途中で、オーディエンスへの贈り物として作られたアンサー・ソングだけれど、このアルバムの中に置かれたことで、ファンへと向けた藤原くんのメッセージが、さらに切実に伝わってくるように感じがする。こんなに沁みる曲だったっけ? と思ってしまった。
 これぞアルバムであるがゆえの相乗効果。それぞれの曲がおたがいを引き立てて、アルバム全体のイメージをより広がりのあるものにしている。
 配信ビジネスの普及により、楽曲が一曲ずつ流通するのがあたりまえの時代になってしまったけれど、それでもやっぱりアルバムで聴くのって違うよねって。そこには絶対になにか特別なものがあるって。そう思わせてくれるところが素晴らしい。
 オープニングの『GO』やアルバム・タイトルにつながる『Butterfly』では、『ray』で聴かせた大胆な打ち込みの採用をさらに推し進め、真正面からEDMにアプローチしてみせている。それらのキラキラとした華やかな音のイメージが強いこともあって、今作のイメージはとても明るい。
 BUMP OF CHICKEN のこれまでの作品の中でも、とびきり明るくポジティヴなイメージを持った、とてもいいアルバムだと思う。
(Mar 13, 2016)

Painting With

Animal Collective / 2016 / CD

Painting With

 Apple Musicでは聴けないと勘違いして、フライング気味に買ってしまったアニマル・コレクティヴの最新アルバム。
 実際には Apple Music で聴けたし(それどころか輸入盤より1曲多い)、聴けるならばわざわざCDを買わなくてもいいかなって思うくらいの距離感のバンドなんだけれど、でもこのアルバム、けっこうおもしろかったから、買って後悔なし。
 恥ずかしながら僕にはアニマル・コレクティヴというバンドがどんな風に音を出しているのか、いまいちよくわからない。
 今回の作品では、ドラムなどの打楽器も含めたほとんどすべての音がシンセで鳴っているみたいに聞こえる。実際にどうかは知らないけれど、僕にはそう聞こえる。でも、それでいて、決してコンピュータに頼っているんではなく、音を出しているのは生身の人間だぞっていう生演奏の感触がある。
 音の組成はかなりのパーセントで人工的なのに、それでいてちゃんと生身の演奏者の息づかいが感じられる。そこんところがこのバンドのおもしろいところだと思っている。
 今回のアルバムではミニマルな音作りでポップな作品を目指したとかいう噂をどこかで目にしたので、どんな作品になるのかと思っていたら、出てきた音は(あまり彼らに詳しくない僕からすると)やはりこの人たちらしいと思えるものだった。
 まぁ、前の二作と比べれば音数は少ないような気がしないでもないけれど、それでもピコピコとしたパーカッシヴな音を積み重ねたサウンド・デザインは、じゅうぶんに考え抜かれた感があって、あまりミニマムな気がしない。でもポップなのは間違いなし。短めで楽しげな曲がずらりと並んでいる。
 あと、このアルバムでなにより印象的なのが、アルバム全編に及ぶ、凝りに凝ったコーラスワーク。ほんと、どの曲も最初から最後まで、みんなで休みなく歌いっぱなしな印象。いまどきのロックバンドで、こんなに全員で歌うたってますって作品は珍しいと思う。こういうのを聴くと、活動拠点こそ東と西で異なるけれど、やはりこのバンドは二十一世紀におけるビーチ・ボーイズの後継者なんじゃないかと思えてくる。
 とにかくみんなでピコピコしたサウンドにのせて楽しげな曲を和気あいあいと歌いまくっている感じがとても微笑ましい。聴いているとついこちらまで頬が緩んでしまう。音楽を演奏することの楽しさが、聴いている側にまでダイレクトに伝わってくるような。そんなハッピー感あふれまくりの好作品。
(Mar 31, 2016)