Chaosmosis
Primal Scream / CD / 2016
プライマル・スクリーム、3年ぶりの新作。
先行トラックとしてスカイ・フェレイラがゲスト参加した『Where the Light Gets In』のミュージック・ビデオを観たときには、自分がこのアルバムをこれほど気に入るとは思ってもみなかった。曲やビデオの出来映えはともかく、その80年代風シンセ・サウンドにはかなり時代錯誤な感があったから。今回のアルバムがこういうシンセ主体の音作りになるのならば、たぶんそんなには聴かないなと思った。
ところがどっこい。音の方向性に関してはほぼ予想通りだったのだけれど、それ以外の部分でこのアルバムは僕の予想を大きく裏切っていた。
とにかく曲がいい。もう一曲もはずれなしってくらいに全曲がポップ。とくにスカイ・フェレイラやハイム姉妹らをゲストに迎えた楽曲群がどれもアッパーで最高にゴキゲンだ(ボビー・ギレスピーは『Screamadelica』の昔から不思議と女性の生かし方が上手い人だったりする)。全10曲でわずか37分というランニング・タイムの短さもあって、ついつい繰り返し聴きたくなる。
そういう意味ではこの作品、前作の『More Light』とは対照的だ。あのアルバムは音響的にはとても濃厚で好印象だったものの、1曲目が9分もの大作なのを筆頭に、ボーナス・ディスクを加えると2時間に近いボリュームについてゆけず、結局あまり聴かずに終わってしまった。
それに比べて、今回はサウンド的にはそれほど惹かれないものの、とてもポップでコンパクト。売出し中の若くてイケイケな女の子たちをはべらせてガンガンやっているところも、なんかちょっといかがわしい感じがあっていい。これぞロックン・ロール。
やはり音響的な面が影響してか、英米での評論家受けはいまいちよろしくないようだけれど、僕はこのアルバムのポップさにはどうにも否定しきれない魅力があると思う。最近ではもっともお気に入りの一枚。
それにしても、アニマル・コレクティヴやウィーザーの新譜もそうだけれど、思春期をアナログ盤とともに過ごした世代としては、やはりロック・アルバムは40分以内がベストに思える。
(Apr 10, 2016)