2016年10月の音楽

Index

  1. Heads Up / Warpaint
  2. Keep Me Singing / Van Morrison

Heads Up

Warpaint / CD / 2016

HEADS UP

 いま現在、僕がいちばん好きな女の子バンド、ウォーペイントのサード・アルバム。
 先行シングルの『New Song』を聴いたときには、なんだかイントロでシンセが鳴っている風のダンサブルなそのナンバーに、あれ、彼女たちも変わっちゃったかなと不安を覚えたりしたのだけれど、いやいや、なんのなんの。
 アルバムを通して聴いてみたら、そのクールなバンド・サウンドは健在。確かに以前よりもダンサブルにはなったけれど、それで魅力が損なわれるどころか、かえってカッコよくなっている。
 最初に疑問をおぼえた『New Song』も、ちゃんと聴けばそのイントロで鳴っているのはシンセではなく、どうやらエフェクトの強くかかったコーラスみたいだし(つまり人の声)。いや、シンセも鳴っているのかもしれないけど、そこにコーラスがかぶさることで、ひと味違った感触が生まれている。ちゃんと聴けば、これはこれでとてもカッコいい。まったく俺はなにを聴いていたんだろう。
 たぶんベーシストのジェニーリーのソロ活動(残念ながら僕はちゃんとフォローできていません)がいいほうに機能したんだろう。彼女のベースがぐいぐいバンドを引っぱっている感じで、前よりだんぜんグルーヴが豊か。ギター・オリエンテッドな4ピース・バンドとしての個性はそのままに、(ちょっぴり)キャッチーでダンサブルになった、とてもいい作品だと思う。
 いまや時代はすっかりラップやヒップホップ中心って感じになってしまったけれど、それでもやっぱり俺はこういうロックが──暗めのギター・サウンドが──好きなんだよなぁって。そんな自分の趣味を再確認させてくれた、とても気持ちのいい一枚。
(Oct 15, 2016)

Keep Me Singing

Van Morrison / CD / 2016

KEEP ME SINGING

 ヴァン・モリソンの新作。前回がセルフ・カバーのデュエット集だったから、オリジナル盤としては四年ぶりとなる。
 しかしまぁ、これは見事にオヤジだなーと。一聴してそう思った。老境の白人ソウル。
 もともと若いころから枯れた音楽をやってきた人ではあるけれど、今回のアルバムはこれまでになくおとなしい。音もボーカルも控えめで、あまり大きな音は出さないように、ゆっくりと丁寧に演奏していますって感じがする。
 気がつけば、モリソン先生も今年で71歳だ。さすがにもう歳だから、あまりでかい音は出したくないって──そんなことを思ったかどうかは定かではないですが。
 とにかくいつもの音楽をいつも通り良質に、それでいていくらかおとなしめに鳴らしている。後半のブルース・ナンバーなんかでは、ちょっと力の入った歌を聴かせてくれたりもするけれど、基本はとにかくゆっくり、ゆったり。まぁ、のんびりやろうよ、リラックスして聴いてよって感じのアルバム。
 でも、だから駄目ってんではなくて。そののんびりとしたグルーヴと控えめで優しい音作りがいまの僕にはやけに気持ちよかったりする。
 うわー、俺もほんともう若くないなぁって。日々のしかかる疲労感とともに、僕はこのアルバムを聴きながら、来し方行く末をしみじみと考えている。
(Oct 26, 2016)