小石川近況
Photo
更新履歴
2024-04-19 | 映 | 『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』 New! |
2024-04-17 | 蹴 | J1 第8節・鹿島-京都 |
2024-04-15 | 蹴 | J1 第7節・F東京-鹿島 |
2024-04-13 | 映 | 『ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男』 |
2024-04-11 | 本 | 『デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界』 |
新譜
マンガ新刊
読書中
最近の五本
モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ
アンナ・サワイ、渡部蓮/2023~2024年/アメリカ/Apple TV+
モンスター・ヴァース・シリーズ初の連続テレビ・ドラマ。
劇場版最新作の『ゴジラ×コング 新たなる帝国』はまったく観る気になれないので(なんでゴジラとコングが駆けっこしているんだよぉ)、モンスター・ヴァースもそろそろ観るのをやめようと思っているのだけれど、これは主要キャラに日本人がいたり、日本が舞台の一部になっているようだし、なにより連続ドラマでゴジラをいかに描いてみせるのかに興味を惹かれたので、観ておくことにした。
舞台となるのはサンフランシスコほか世界中の大都市をゴジラが襲ったあとの世界。
ゴジラの襲撃を受けた日は「Gデイ」と呼ばれ、ここでは日常的に怪獣の襲撃を想定した避難訓練が行われている。見慣れた東京の街中に「ゴジラ注意」みたいな交通標識が掲げられているビジュアルがおもしろい。
物語はお互いの存在を知らずに育ったケイト(話題作『SHOGUN 将軍』にも出演中のアンナ・サワイ)とケンタロウ(演じる渡部蓮はなんと渡部篤郎とRICAKOの息子さんだそうだ)という腹違いの姉弟が、ケンタロウのガールフレンドのメイ(キアシー・クレモンズ)とともに、失踪した父親が残した謎を探ってゆくうちに、ゴジラをめぐる陰謀に巻き込まれてゆくというもの。
このメイン・ストーリーと並行して、タイトルでもあるゴジラ対策本部的な秘密組織『モナーク』発足の歴史が、1950~60年代を舞台に描かれるのが、本作のより重要なポイントだ。
でもって、そちらのシーケンスの主要人物のひとり、リー・ショウを演じているのが、カート・ラッセルの息子さんのワイアット・ラッセルで、生き延びて年をとった彼の老後を演じているのが、父親のカート・ラッセルという。
この画期的な親子共演が見事。さすがに親子だけあって、よく似ているから、役者の引継ぎにまったく違和感なし。このキャスティングの妙が本作の魅力のひとつ。
彼とともにモナークの発足にかかわる女性生物学者の役を、山本真理という日本生まれの女優さんが演じているのも日本人としては見逃せないところだ。
もちろん、ゴジラやそのほかのモンスターも一話に一回くらいの感じで出てくる。テレビドラマとは思えない完成度で描かれるゴジラの雄姿こそが、やはり本作のいちばんの見どころでしょう。
というころで、いろいろと見どころは多いし、物語もおもしろいと思うのだけれど、残りあと二話というところで『ゴジラvsコング』で描かれた異世界への扉が開かれてしまい、「あぁ、またそっちのほうへいっちゃうのか……」とがっかりした。
でも、そのあとの最終話で驚きの大どんでん返しがあって、ちゃんと盛り返してくれてよかった。最終的には満足のゆく出来でした。
まぁ、とはいえ、当然のように続編ありきの終わり方をしているにもかかわらず、ここで終わってつづきを観れなくても後悔はしないかなと思う。
(Apr. 14, 2024)
鹿島アントラーズ1-0京都サンガFC
J1・第6節/2024年4月13日(土)/カシマサッカースタジアム/DAZN
前節で2連敗を喫して、下位に低迷する京都との試合となれば、優勝を目指すクラブとしては勝ち点3は必須。
――とはいっても、どのクラブもそう簡単には勝たせてくれないのがJリーグだよなぁ……と、スコアレスで終わった前半を観ていて思った。
京都は今年も
でもそのわずかな選手が3トップの豊川、山崎凌吾、原大智というのが侮れない。
豊川、原はなにげに元・海外組だし、山崎にも2年前にゴールを許している。
果たして、豊川、原にボールが収まると、ひやひやさせられる場面がなきにしもあらずだった。豊川が打ったジャンピングボレーを植田が空中で止めたシーンが前半いちのファイン・プレー。
この日の鹿島のスタメンは、前節の11人から仲間を外して藤井を入れた形。でもってチャヴリッチは前節につづき右サイドでプレーしていた。
彼は前の所属クラブではそちらが主戦場だったそうなので、本来はそちらのほうが得意なのかもしれない。
でも鹿島では――少なくても現時点では――左でプレーしているときのほうが機能している気がする。
この日は後半からは左にポジションを変えてきたこともあり、そこからの鹿島の猛攻がすごかった。前半はまぁ互角といってもいいかなって内容だったけれど、後半はもうずっと押せ押せ。これでなぜゴールが決まらなんだって不思議になってしまうほどの攻めっぷりだった。
なのに濃野のシュートがクロスバーをたたき、チャヴリッチのシュートはポストに弾かれる。
これだけ攻めててノーゴールで終わっちゃったらダメージでかいだろう?――という心配を杞憂に終わらせる決勝ゴールがようやく決まったのは、後半の40分だった。
セットプレーの流れから、右サイドにいた関川がヘディングで折り返したボールをゴール正面に詰めていた濃野が頭で押し込んだ。絶対勝つというチーム全体の意思統一のもと、ようやくもぎとった渾身の1点だった。
濃野は学生時代には背番号10をつけていたこともあるそうで、このところ実況が何度もその話を繰り返していたのだけれど、この日はゴールの場面以外にシュートを打つシーンが二度もあり、昔エースナンバーを背負っていたころに培った得点感覚が存分に発揮された感じだった。おめでとう、J初ゴール!
この日の途中出場は松村、師岡、パレジの3人だけ。決勝点の起点になった関川へのクロスは師岡が入れたものだから、とりあえず師岡の投入が功を奏した形だった。
まぁ、ということで、攻めまくったわりには1点しか取れなかったけれど、それでも後半はいい形のフィニッシュが何度も見られて、なかなか楽しい試合だった。
裏では首位に立っていた昨年J2王者・町田が、昨年J1王者・神戸に負けて首位陥落。ここまで無敗のC大阪が首位に立った。
同じく無敗の広島が勝ち点2の差で2位。川崎はこの日までですでに5敗もしていて、降格圏内の一歩手前まで沈んでしまっているし、今年のJ1は例年にも増して先が読めない。
(Apr. 14, 2024)
FC東京2-0鹿島アントラーズ
J1・第7節/2024年4月7日(日)/国立競技場
サッカーの感想は鮮度が大事だと思っているので、普段はできるかぎり試合の当日か翌日には書くようにしているんだけれど、先週はイベントが多くて――なんたってこの試合に加えてライヴが三本もあったもので――すっかり疲弊してしまい、怠けていたら一週間もたってしまいました。いけません。
さて、コロナ禍も過ぎてようやく例年のイベントとして復活したFC東京戦のスタジアム観戦。今年の会場はいつもの味スタではなく、新国立競技場だった。
去年のスタンド三階席の印象が悪すぎて、毛嫌いしていた国立だけれども、今回はメインスタンドの一階席ど真ん中の前から17列という特等席だったので、ビールの売店がすぐのところにあったりして、まったくのノーストレスだった。
いやもとい。席の間隔がせまいので、同列の人が席を立つときには立ち上がらないと通り抜けられなかったりするのは、やはりどうかと思うし、うしろの席のグループがやたらとうるさくて、いささか気が散ったのは残念だった。とくにサッカー初観戦らしいバスケ部のマネージャーっぽい女の子が「あがれ! あがれ!」「ピー! ピー!」とやかましいこと……。
でも不満はそれだけ。たぶんメインスタンドで、フィールドを横から俯瞰する形で、それもベンチから出てきた監督の挙動が肉眼でわかる距離でサッカーを観るのはこれが初めてだし、これまでにないシチュエーションがとても新鮮だった。よい席のチケットを譲ってくれてありがとう!
ということで、晴れ渡った絶好の観戦日和のもと、午後5時のキックオフをメインスタンドから見届けたこの試合。
鹿島のスタメンはGK早川、DF濃野、植田、関川、安西、MF知念、佐野、樋口、仲間、FWチャヴリッチ、優磨という11人だった。
途中交替は仲間→藤井、樋口&チャヴリッチ&知念→松村&ミロサヴリェヴィッチ&土居、海舟→パレジの5組。
樋口と仲間がひさびさにスタメン起用されたのと、新加入が発表されたばかりのミロサヴリェヴィッチ(名前長い)が途中出場ながら、いきなり出てきたのがトピックだった。あと、チャヴリッチのポジションがこれまでと違って右だった。
対するFC東京はGK野澤大志ブランドン、DF白井康介、土井幹太、エンリケ・トレヴィザン、バングーナガンデ佳史扶、MF松木玖生、
五輪代表世代の野澤、松木、俵積田、安斎といった選手が名前を連ねる一方、森重、長友、東ら、なじみのベテランはベンチ外や出番なしだったりする。知らないうちに世代交替が進んでいるっぽかった。ディエゴ・オリヴェイラは故障中とのこと。
鹿島からのレンタル移籍中で、今季ここまで5ゴールと大活躍の荒木遼太郎は、残念ながら契約の都合でベンチ外。鹿島サポとしては、荒木のプレーも観たかったんだけれど、でも彼のプレーで試合の結果が左右されたら、それはそれで微妙なことになりそうだし、仕方ないんだろうなぁと思う。
なんにしろ、東京は現時点でのクラブ得点王の荒木と、D・オリヴェイラを欠いての対戦だ。おのずから鹿島有利なのでは――と思っていたら、まるでそんなことなし。
ともにいまいち成績があがらないものどうし、一進一退の攻防で、前半はスコアレスのまま終了する。でもって、後半に2失点しての敗戦……。
仲川に決められた1点目は仕方ない。相手がうまかった。手数少なく運んだ右サイドから松木が入れたクロスに、仲川が背走しながら頭で合わせた。植田と関川のあいだのスペースに入り込んでヘディングを決めた仲川の勝ち。
でも後半ロスタイムの2点目は余計。ミロサヴリェヴィッチのクリアミスを途中出場の原川に拾われ、彼がそのまま松木とのワンツーから豪快なミドルを決めたものだけれど、あの時間帯にあのボールロストは駄目でしょう。集中力が足りない。あと、1点目と同じようにCB二人のあいだのスペースを使われたのも印象が悪い。
監督のクラモフスキーが試合後のインタビューで「もう何点か取れてもおかしくなかった」と語ったいるけれど、ほんと中川のシュートがクロスバーを叩いたり、途中出場のジャジャ・シルバというブラジル人がフリーのシュートを外したりしていなかったら、4-0の負け試合だった。
まぁ、前節とくらべると試合内容は悪くなかった気がしたけれど、でもそれはスタジアム観戦の高揚感のせいかもしれないし、なんともいえないところ。
現地観戦していて印象的だったのは、FC東京の最終ラインの高さ。前半のキックオフのときに、最終ラインがセンターラインの近くにいて、おいおい、そんなに高いのかと驚いた。植田、関川が引いて守る鹿島とは対照的だった。ポステコグルーの攻撃サッカーを継承するクラモフスキーだから?
――って、まぁ、ずっと気にして見ていたわけではないから、たまたま僕が気にしたときだけ、極端に高かった可能性もあるけれど。
もうひとつ、驚いたのがミロサヴリェヴィッチ(名前が覚えられん)のプレー位置。
どういう選手か、この日までまったく知らなかったので、出てきて最初のプレーで、植田と関川のあいだに降りてきてボールをさばき始めたのを見て、おいおい、この人ボランチかよ?――思った。てっきり攻撃的な選手を取ったのだと思い込んでいた。
というか、ここ数節の低迷は得点力不足が原因なのだから、補強が必要なのはFWだろうよと思うんだが?
去年から背番号9と11が欠番になったままだし、なんか鈴木満氏引退後の鹿島のフロント、駄目なんじゃなかろうか……。
まぁ、柴崎はいまだ戻らないし、夏には海舟が海外移籍するのではという噂もあるので、樋口や名古をボランチと認識していないらしいポポヴィッチにとっては、頼れるボランチの補強が必須だったのかもしれない。
でもこの日の2失点目は、海舟をさげて代わりに入れたミロサヴリェヴィッチ(入力が難しい)のミスからだからね? そういう意味では自業自得だ。
後日、DAZNの見逃し配信を観たら、試合後の松木と小泉の走行距離が13キロ近かったのにも驚いた。サッカーセンスあふれる中盤の要のふたりにそこまでハードワークされたら、そりゃ難しい試合になるのも当然かもなぁって思った。
まぁ、とりあえず、試合には負けたけれど、よく晴れた春の夜のスタジアム観戦はそれだけで楽しかったし、試合後に千駄ヶ谷で食ったベーコンバーガーはうまかった。
(Apr. 14, 2024)
ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男
ジョージ・C・ウルフ監督/コールマン・ドミンゴ、アムル・アミーン/2023年/アメリカ/Netflix
60年代のアメリカ、公民権運動のさなかに、百万人を超える人たちが集結したワシントン大行進を企画・運営した黒人社会運動家、バイヤード・ラスティンの半生を描く伝記映画。
ワシントン大行進というと、僕の知っているところだと、スパイク・リーの『ゲット・オン・ザ・バス』や、リチャード・パワーズの『われらが歌う時』でも描かれていたけれど、この映画はその実現に至る裏事情を取り上げている。
ラスティンは黒人であると同時に同性愛者でもある。彼の同性愛者としての(いささか乱れた)恋愛事情を、社会運動家としての活動と並行して赤裸々に描いているのもこの映画の特徴だ。ポリコレが叫ばれる現代を象徴するような作品だと思う。
様々な面で差別を受けながら、肌の色を超えて多くの人たちが団結しあい、世紀の一大イベントを実現させてゆくまでを辿るこの映画はそれゆえになかなか感動的。
監督は『マ・レイニーのブラックボトム』のジョージ・C・ウルフで、主役のコールマン・ドミンゴはその作品につづく出演だった(まったく記憶にない)。彼やキング牧師役のアムル・アミーンという俳優さんはあまりメジャーじゃないけれど(僕が知らないだけ?)、脇役にはコメディアンのクリス・ロック(去年のアカデミー賞でウィル・スミスに殴られていた人)や、ジェフリー・ライトが出演している。
クリス・ロックがまったく笑いのない、黒人グループのいちばん偉い人の役を演じているのが、なんかいい感じで新鮮だった。
(Apr. 13, 2024)
デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界
村上春樹/文藝春秋
最近やたらとご自身のレコード・ライブラリーの紹介に熱心な村上春樹氏によるジャズ・レコードのお披露目本。
内容的にはアルバム五枚程度をセットにして語るという『古くて素敵なクラシック・レコード』と同じフォーマットだけれど、今回はあれみたいな四角形・プラケース入りという特殊な装丁ではなく、普通の大きめのハードカバー(菊版?)になっている。出版社は一緒なんだし、どうせならばどっちかに統一して欲しかった。
タイトルになっているデヴィッド・ストーン・マーティンは主にクレフというジャズ・レーベルのレコード・ジャケットのデザインを手掛けていたイラストレーターだそうで、ジャズに詳しくない僕が知ってたのはチャーリー・パーカーの『ウィズ・ストリングス』というアルバム(赤と黄色のやつ)くらいだった。
この本を見て「お、このジャケットはカッコいいから聴いてみよう」と思ったものがあったかというと――。
正直ない。まったくない。
僕が好きなレコードのアートワークは、モノクロ写真にカラフルなレタリングをあしらったブルーノート系のものが主で、イラストのジャケットに惹かれたことがあまりない、というのもある。クラシックの本のときにも思ったことだけれど、春樹氏が取り上げるそれらのアートワークのよさが、僕にはまったくといっていいほど伝わらない。
残念ながらこういう趣味の違いはいかんともしがたなものがあるなぁと思った。
(Apr. 11, 2024)