チャーリー・ウィルソンズ・ウォー
ジョージ・クライル/真崎義博・訳/ハヤカワ文庫NF(上・下巻)
表紙がとてもポップだったので、ついついジャケット買いしてしまった同名映画の原作ノンフィクション。ただしこの表紙、映画のシーンをあしらった帯をとるとあまりおもしろくない。表紙をとったら拍子抜け──という駄じゃれはさておき本題に。
1979年、ソ連がアフガニスタンの共産党政権を支援すべく、同国を占領するという事件が起こった。これを俗にアフガン侵攻と呼ぶ……のだそうだ。当時からロックや小説ばかりに夢中で、世界情勢にむとんちゃくな僕は、自分の学生時代にそんな事件があったことなど知りもしなかったし、思えばこの事件のことは、今年の初めに読んだカーレド・ホッセイニの 『君のためなら千回でも』 でも描かれていたけれど、そのときには気にも留めなかった。面目なし。
さて、ともかくそれから十年にわたってソ連はアフガンに常駐しつづけ、現地の反乱軍と激しい戦闘を繰りひろげることになる。しかし
しかし、やがてアメリカは大きな方向転換をして、何億ドルという巨額の予算をつぎ込み、前時代的だったアフガンの反政府組織をハイテク・ゲリラ化して、ソ連を撤退に追い込むことになる。そうした方向転換の立役者となったのが、本書のタイトルにもなっているチャーリー・ウィルソンという名のテキサス出身の下院議員であり、また彼の協力者としてCIAで横紙破りの活動をした、アブラコトスという変わった名前のエージェントだった──。
ということで、原書のサブタイトルに「もっともワイルドな国会議員とはぐれ者のCIAエージェントがいかにしてわれらの時代の歴史を変えたかについての尋常ならざる物語」とあるように、この本は彼らがどのようないきさつでこの戦争にかかわりあうようになり、どのようにしてアフガンを勝利に導くことになったかを、文庫本二冊にわたって丹念に説明してゆく。事実は小説よりも奇なりという格言を地でゆくようなおもしろい本だけれど、いまの僕には、ちょっとばかりボリューム過多だった。
それにしても、アメリカがにっくきソ連をやっつけるため、アフガンに膨大な兵器を与えて、みごと大敵にひと泡ふかせてやったはいいけれど、それからわずか二年でソ連は崩壊、それからちょうど十年後に、今度はアフガンで育ったテロリストがアメリカ国内で9.11を引き起こすという歴史の皮肉のものすごさ……。
もしも神様が本当にいるとしたら、その人は史上最悪の皮肉屋にちがいない。
(Sep 10, 2008)