対談集 妖怪大談義
京極夏彦/角川書店
気がつけば、京極関連の積読が、再読用の文庫版・京極堂シリーズを含めて、十冊以上なんて状況になってしまっていた。こりゃいかんと思って、とりあえず単行本だけでも年内ですべて読み終えようと決心した。
手はじめは四年前に刊行されて、すでに文庫にもなっているこの対談集。文庫版には対談がひとつ追加されているそうで、いまさら単行本で読んでいると、少なからず損をしている気分に……。
まあ、それはともかく。
僕は京極夏彦の小説が大好きだけれど、妖怪にはさほど関心がないので、妖怪にまつわる対談集なんて読んで楽しめるのか疑問だったのだけれど、これが読んでみたらば、思いのほかおもしろい。
京極堂シリーズが妖怪をキーワードにしながら、さまざまな話題を内包しているのと同じように、この対談集も妖怪のうんちくに終わらず、そこから現代社会の問題点を考察したり、学術的な話題をわかり易く説明してくれたりしている。
唐沢なをきを相手に児童向け妖怪図鑑にまつわるバカ話でさんざん盛りあがったあと、今度は一転して民俗学の第一人者らと学術的なトークをしてみせる。この辺の硬軟とりまぜた多様性がすごい。
陸軍中野学校など、京極堂シリーズにまつわるキーワードを読み解くような部分も多々あるし、門外漢の僕にも十分に楽しめる内容だった。なにより知的好奇心をやたらと刺激される。
それにしてもすごいなあと感心したのが、専門家とのあいだで交わされる会話の濃さ。対談だから実際の会話を文章に起こしたものなのだろうけれど、まるで京極堂シリーズでの中善寺の語りに負けないような会話が、あちらこちらで平然と交わされている。こういう会話が本当にできる人たちが実際に世の中に存在しているというだけでも、僕なんかには未知の世界だった。
いやぁ、世界は広い。
(Aug 07, 2009)