競売ナンバー49の叫び
トマス・ピンチョン/佐藤良明・訳/新潮社
トマス・ピンチョンの長編第二作目にして、ピンチョンの長編のうちではもっとも短い作品。
この小説の主人公はエディパ・マースという人妻。彼女のもとへ、かつての愛人だったカリフォルニアの大富豪が死んで、彼女がその遺言執行人に指名されたという知らせが届くところからこの小説は始まる……のだけれど。
そもそも遺言執行人というのが、どんなことをすべき立場なのかが僕にはわからない。もしかしたら、たっぷりとした解説(80ページ以上ある)をきちんと読めば書いてあったのかもしれないけれど、あったとしても僕は読み落とした。そもそもこの解説、長いわりには問題提起してばかりなので、読むとかえってストレスが増える感あり(だからこの佐藤という人は……)。
なんにしろ、主人公のエディパは、僕にとっては意味不明な役割を引き受けて、カリフォルニアへ出かけてゆき、あちらこちらで様々な人と出会ううちに、富豪の死に「トリステロ」なる秘密組織が関係しているらしいことを知る。で、彼女がその正体を探ろうとし始めたとたんに、それまで知り合った関係者らが次々と死んだり、行方不明になってゆく。
彼女のまわりでいったいなにが起こっているのか。トリステロとはなんなのか(そもそも実存するのか、はたまた彼女の妄想の産物なのか)。大富豪は彼女になにを託そうとしたのか。──というようなミステリ風の展開が興味を引くものの、そこは純然たるミステリとは違って、答えはほとんどが藪の中。
いや、このうち最後の問いに対しては、最後に驚くべき結論が下される──のだけれど。
なんでそういう結論になるのか、僕にはさっぱりわからなかった。短くてもそこはピンチョン。やはり僕には手にあまる。今回も勘どころを読み損ないまくっている感ありすぎ。
でもまあ、短い上に、この人の作品にしては珍しく物語が直線的だから、ピンチョン初心者がその作風を味わうにはぴったりの一作という気もする。そんな作品。
(Feb 29, 2012)