ジェイン・オースティンの読書会
カレン・ジョイ・ファウラー/矢倉尚子・訳/白水社
この本のおかげで僕はジェイン・オースティンの長編がわずか六作品しかないと知って、それじゃすべて読んでみようかという気になった。そしてとても楽しい読書タイムを過ごさせてもらったんでしたが。
オースティンをすべて読み終えて、さて、それでは次はこちらをと読んでみたところ、これがそれほどおもしろくない。いや、映画化されたくらいだから、おもしろいと思う人はたくさんいるのだろうけれど、こと僕に関しては、あまり楽しめなかった。どこがいいのか、よくわからない。
物語は女性五人に男ひとりの六人グループが、一章ごとにオースティンを一作品ずつをとりあげて読書会を開くという趣向で、参加者それぞれの人となりを浮かび上がらせてゆくというもの。──なんだけれど。登場人物が女性ばかり(それも若者ゼロ)なせいか、その人たちの言動に僕はあまり共感できなかった。書き手が女性目線だからか、唯一の男性キャラもいまいち共感を呼ばないし。「私たち」と称する語り手の正体があきらかにされてない点も、全体の印象をあいまいにしている気がする。章によってはオースティンの作品について語る時間がまったくなかったりするのも残念だ。
とにかくこの本に関しては、僕が苦手とするタイプの女性作家の作品というイメージで、最初から最後までその世界に馴染めないで終わってしまった。作者がオースティンから吸収したものがあったとしても、僕にはそれがほとんど感じられなかった。楽しみにしていただけに、ほんと残念。
でもまあ、とりあえず僕の目をジェイン・オースティンに向けてくれたことには感謝したい。この小説をふたたび読み返すことがあるかどうかわからないけれど、オースティンはいずれまた読みたくなるだろうから(まぁ、長生きするようならば)。この本はそのタイトルになによりも価値があるじゃないかと思ったりする──なんていったら失礼か。
(Jun 17, 2012)