ひとりの体で
ジョン・アーヴィング/小竹由美子・訳/新潮社(全二巻)
前作からわずか一年のインターバルで登場したジョン・アーヴィングの最新作。
このところのアーヴィングの作品はどれも同じパターンな気がする。自伝的エピソードを下敷きにしていて、作家である主人公の少年時代から老境までを、セックスにまつわるエピソード満載で描いてゆくというパターン。まぁ、前作はそれほどエッチではなかった気がするけれど、今回は主人公がバイセクシャルという設定のため、最初から最後までセックス絡みのエピソードばっかりだった感がある。
とにかくバイセクシャルという設定がこの作品の最大の肝。そのせいでエロが多いのみならず、後半になるとエイズが猛威をふるって、悲惨極まりないことになる。
とにかくたくさんの人がエイズでばたばたと死んでゆく。それこそ人類が滅亡しそうな勢い。こんなに切実にエイズの悲惨さを強く感じさせられた小説は初めてだ。
あと、意外性があるのは、前半とても存在感のあった重要キャラクターの何人かが、いったん舞台から姿を消したあとに、再登場することなく、静かに退場してしまうこと。
いずれ主人公が彼らに再会して、ふたたびなんらかの事件が起こるのだろうと思っていると、そうなることなく、ほとんど人が帰らぬ人となってしまう。
そういう意味では、僕はこの小説のテーマは一期一会なのではないかと思う。いわば、バイセクシャルの主人公をめぐる、再会の叶わない、(いくつかの)いびつな恋の物語。その辺の感触に老境を迎えたアーヴィングの実感がこもっているような気がする。
(Jan 05, 2014)