インフェルノ
ダン・ブラウン/越前敏弥・訳/角川書店/Kindle版(上・下合本)
『ダ・ヴィンチ・コード』のダン・ブラウンによるロバート・ラングドン教授シリーズの第四弾。
すでに前作『ロスト・シンボル』がどんな話だったかも、うろ覚えだったりして、いい加減、この人の作品にも食傷気味の感があるんだけれど、Kindleストアのバーゲンでこの最新作(しかも一巻本)が安くなっていたので、とりあえず読んでおくことにした。
で、読んでみた感想は、これもそこそこおもしろい。
今回の物語はラングドン教授がフィレンツェの病院で目を覚ますところから始まる。
でもラングドンさん、なぜか記憶を失っていて、自分がどうしてフィレンツェにいるか、わからない始末。しかも、アメリカ政府筋(?)とおぼしき殺し屋に命を狙われていたりする。
病院での寝ざめを襲われた彼は、なにやら訳ありの美人女医シエナに助けられて、命からがら病院を脱出。その後は彼女とともに逃亡劇を繰り広げながら、失われた記憶を取り戻そうとすることになる。
――ということで、記憶をなくした彼の前に立ちはだかるのが、ダンテの『神曲・地獄編』にまつわるいくつもの謎――なのだけれど。
これが要するにすべて、犯人の愉快犯的な動機による謎かけクイズみたいなもので、正直なところ、とってつけたよう。一応はすべて史実に材を取ってみせた『ダ・ヴィンチ・コード』とくらべると、かなり強引な設定になっている。
ラングドンが命を狙われていた理由も、種明かしされてみれば、なにやら釈然としないものがあるし、全体的にちょっとなぁって作品ではあるのだけれど。
それでいて、この小説も『ロスト・シンボル』同様、駄目だって思わせて終わらない分部がちゃんとあるのが、ダン・ブラウンの優れたところ。
たとえば、途中からラングドンのあとを尾行し始める謎の皮膚病男の正体とか、けっこう意外性があって、僕はおぉっと思ったし、最終的な――『天使と悪魔』での「反物質」を思い出させる、かなりSF的な――落ちのつけかたにも、その思い切りのよさゆえに納得させられてしまうものがあったりする。
――ということで、これっきりラングドン教授とのつきあいをやめても後悔はしないだろうけれど、でも暇と金が少しでもあったら、また次回作も読んでしまうんだろうなと。そう思わせる最新作だった。
まぁ、それ以前に、この本と一緒に安くなっていたノン・シリーズの旧作二作もすでに買ってあったりするので、結局最低でもあと二作はこの人の小説を読む予定。
(Apr 01, 2014)