妖怪文化入門
小松和彦/角川ソフィア文庫(Kindle版)
これもKindleのディスカウントで買った本。
かつて京極夏彦からの流れで、この本の著者・小松和彦先生の作品を一冊だけ読んだことがあって、それがけっこうおもしろかったので、じゃぁもう一冊と思って手にしたのだけれど、さて、むかし読んだその本ってなんだっけ?──と思って調べてみたら、その本『憑霊信仰論』を読んだのは、じつに九七年のことだった。おいおい、もう二十年近くも昔の話だよ。
そもそも、その本を読むきっかけとなった京極氏の作品を読み始めたのは九五年刊行の『狂骨の骨』が出たころだから、僕の京極読者歴も今年で二十年になるわけだ。すごいな、俺。もうそんな長いこと京極夏彦を読んでいるんだ。ちょっと自分で自分に感心しました。
さて、そんなわけで二十年来の妖怪小説読者歴ゆえに読んだこの本なのだけれど。
内容は日本における妖怪研究の流れをざっと解説したもの。なんか知っているような話だなと思ったら、京極夏彦の『妖怪の理、妖怪の檻』、あれを当事者である学者の目線で説明したような内容だった。
憑物、河童、鬼、天狗と山姥、幽霊など、個々の妖怪に関して語った章は、河出書房新社から刊行された『怪異の民俗学』(現在は絶版)というシリーズの解説を一箇所にまとめたものだとのことで、そう言われてみると、なるほどという内容。
ということで、これから妖怪を学術的に研究しようって人が学問としての概略をてっとり早く知りたいというときには役に立ちそうな本だけれど、正直なところ、そっちに深入りするつもりのない僕のような部外者にとっては、いまいち楽しい読みものとは言いにくかった。
まぁ、入門書なんてものは、得てしてそういうものなんだろうって気もします。
それはともかく、この本の場合、堅い内容なのに表紙がかわいくていい。
Kindleの場合、アイコンと中身の表紙が異なっていて、開いてみると文庫のカバーを取ったような状態の味もそっけもない表紙の本が多い中、これはちゃんと見た目の通りの表紙がついている。iPad で開くと文庫より大きいので、なんだかちょっと幸せな気分になれる(村上春樹いうところの小確幸)。
電子書籍だと解説が省略されていたりすることも多い中、角川書店の電子書籍は──少なくても僕がこれまでに読んだものに限れば──表紙も解説もふつうの本と変わらない。それどころか、ダン・ブラウンの『インフェルノ』のように、通常書籍では手に入らない合本版を売っていたりもする。
さすがメディア・ミックスに積極的なKADOKAWAさん。いい仕事しているなぁと思います。
(Mar 08, 2015)