宇宙ヴァンパイアー
コリン・ウィルソン/中村保男・訳/新潮文庫(村上柴田翻訳堂)
前のハーディもそうだったけれど、僕にとってはこのコリン・ウィルソンも学生時代に読んで衝撃を受けたにもかかわらず、その後一冊も読まずに現在に至るという作家だった(といいつつ、そのときに読んだ『アウトサイダー』の内容は、いまとなるとすっかり忘れてしまっているけれど)。
一冊しか読んだことはないけれど、機会があればほかの作品も読もうと思っていた作家ということでは、ふたつ前のフィリップ・ロスもそうだったし、このあとに出てくるリング・ラードナーもそう。今回の企画で村上さんと柴田さんはおもしろいくらいに、そういう作家を取り上げてくれている。
このコリン・ウィルソンの作品に関してはまず、これが映画『スペースバンパイア』の原作だってのにびっくりした。僕らが十代のころに公開されて、ヌードのヴァンパイアのエロさと特撮のグロさで話題になったSF映画で(調べたら監督はなんと『ポルターガイスト』の人だった)、内容はほとんど覚えていないけれど、漠然とした印象ではコリン・ウィルソンっぽいところなんて微塵もない作品だった。
で、いざこの作品を読んでみれば、なるほどこれは原作と映画じゃまったく違うんだろうなぁと思わせる出来。おそらく映画は裸のヴァンパイアが見つかって、男の精気を吸いとって……って煽情的な部分だけを拡大解釈してエンタメ化したものなんだろう。
小説ではその部分が過ぎると、ほとんどヴァンパイア──ではなく宇宙人か──はほとんど出てこない。そもそも映画の主役だと思われる美女はあっという間にお役御免になってしまう。そのあとは、他者の精気を吸いとって生きる生命のあり方に関する考察のようなものが話の中心になる。いわばSFに舞台を借りた知的探求といった
(Oct 11, 2016)