人みな眠りて
カート・ヴォネガット/大森望・訳/河出書房新社
今年で没後十年(もうそんな!)のカート・ヴォネガットが長編デビュー前に各種の雑誌に発表したまま、単行本化されていなかった短編を集めた短編集の第二弾。
ひとつ前の『はい、チーズ』もそうだったけれど、これも無名時代の作品ばかりということで、どれも小難しいことは抜きにして、さらっと読めて楽しめる短編──解説を寄せているデイヴ・エガーズという人の言葉を借りれば、結末でばたんと檻が閉じて、読者を捕まえる「鼠捕り(マウストラップ)小説」──ばかり。こういう作品を書き捨てにして生計を立てていた若き日のヴォネガット先生の才能ときたら……。
どれも落ちの効いた話でありながら、ちゃんとユーモアとペーソスにあふれている。そして後年の作者の特徴である、人類の愚かさに対するシニカルな視点をそこはかとなく感じさせる。そこがいい。
ヴォネガットの作品をこれだけまとめて読めるのもどうやらこれが最後みたいだし、ファンとしてはなんとも感慨深い一冊だった。
(Jun 04, 2017)