ラヴクラフト全集5
H・P・ラヴクラフト/大瀧啓裕・訳/東京創元社/Kindle版
ひさびさのラヴクラフト全集その五。
とはいえ今回も読むタイミングを失敗した。この六月は仕事が慌ただしくて、ぜんぜん読書に集中できなかった。
ラヴクラフトはこういうときに読む作家じゃない。格調高い文体で語られる異形の物語にまったく入り込めず。一ヶ月もかけて読んだので、前半に収録されていた短編はどれもほとんど記憶に残っていない。その後の中編四本はまだなんとか……という感じ。
中でもっともおもしろかったのは、やはり末尾を飾る『ダニッチの怪』。決着のつけ方はかなり強引だし、ラヴクラフトの代表作と呼ぶのはどうかと思うけれど、ドラマの展開が派手だから、エンタメとして純粋に楽しめる。「目に見えないクトゥルーの巨大モンスターが人々を襲う!」みたいなキャッチコピーをつけて映画化できそうな話。
あと、訳者は出来がいまちといっているけれど、『死体蘇生者ハーバート・ウェスト』も昔の連続テレビドラマを観ているようなB級感があって、なかなかおもしろかった。ラヴクラフトには珍しい雑誌連載ものだとのことで、各章ごとに過去を振り返る語りがあるところにも、それゆえの味があっていいと思う。
(Jul 02, 2017)