小澤征爾さんと、音楽について話をする
小澤征爾・村上春樹/新潮社
世界でもっとも人気がある日本人作家・村上春樹氏による、世界でもっとも評価が高いだろうと思われる日本人音楽家・小澤征爾氏に対するインタビュー集。
この本が出た当時(2011年)の僕にとって、クラシックはまったく興味のない音楽ジャンルだったので、なんとなく気が進まずに読まないままスルーしてしまった。
でも、そろそろ未読の村上春樹の作品もずいぶん少なくなってきたし、数年前からうちの子が学生オーケストラで演奏するようになって、個人的にはクラシックと接する機会も増えたので、いまならけっこう楽しく読めそうな気がして、いまさらながら単行本で読んだ。エンボス加工された装丁が気に入ったので、すでに文庫化されているのに、あえて単行本で(プチ贅沢)。
この本は春樹氏が小澤氏と酒を飲みながらかわした会話があまりにおもしろかったので、こういう話を自分だけのものにとどめておくにはもったいないと思って、さらなる会話を重ねて一冊にまとめたものということ。
そういう性格の本だけに、いたってくだけた雑談の延長線上という感じの内容で、体系だって小澤氏のキャリアを
それでも両者の対談のなかから浮かび上がってくる小澤征爾という人の音楽家としての歩みにはなんともドラマチックなものがあって、小澤氏のことをまったくといっていいほど知らない僕のような読者でも、とても楽しく読むことができた。小澤氏という人は、ほんと音楽にも人にも愛されてきた人なんだなぁと感心してしまった。
あと、もうひとつこの本を読んで感心したのが、いっかいのリスナーでありながら世界的なマエストロを相手に対等に音楽を語れてしまう春樹氏のリスナーとしての経験値と能力の高さ。僕もそれなりにたくさん音楽を聴いているほうだとは思うけれど、決してこんな風にロバート・スミスやエルヴィス・コステロと音楽談義をかわすことはできない。
軽みが信条な感のある春樹氏だけれども、人間としての厚みが俺なんかとは根本的に違うなぁと思わされました。
(Aug 21, 2017)