俺たちの明日
エレファントカシマシ/ロッキングオン(上下巻)
エレカシのデビュー三十周年を記念してロッキングオンから刊行されたエレカシのインタビュー集・第二弾。
第一弾の『風に吹かれて』がどんな内容だったかはすっかり忘れているけれど(なんたってもう二十年近く前の本だし)、今回の二冊は上巻が『愛と夢』から始まって『町を見下す丘』まで(つまりポニーキャニオン末期から東芝EMI期)、そして下巻が『Starting Over』から最新の三十周年ベスト盤まで(つまりユニヴァーサル期)という構成になっている。あと、おまけで上巻にはスピッツの草野マサムネ、下巻には銀杏BOYZの峯田和伸との対談が収録されている。
基本的にはインタビュー集なのだけれど、対談やメンバー四人が登場する回を除くと、あとはすべて宮本のひとり語りの文章に書きなおされている。要するにロッキングオンから出ている北野武のインタビュー集と同じ形式。
ロッキングオンのインタビューって、渋谷さんや山崎さんら、インタビュアーの意見をもとに誘導するような傾向が強いので、誰がインタビューしたのかわからないこの形式ってどうかと思うのだけれど、宮本自身はあとがきで(やはり当初はこの形を疑問に思ったものの)最終的に完成した本を読んで納得したというようなことを書いているので、まぁ本人がいいっていうのならばいいんだろう。
でも読んでいていちばん感動的だったのは、上巻の最後に収録されているトミが病気で入院して復活したあとのメンバー四人の──つまり普通のインタビュー形式の──もの。かなり深刻な病気だったらしく、そこから復帰して活動を再開できたメンバーたちの安堵と喜びがダイレクトに伝わってきて、思わず目頭が熱くなった。
あと、印象的だったのが、下巻になると宮本がやたらと「嬉しかったですねぇ」を連発するようになることまぁ(いや、もしかして上巻から?)。年を取ったせいもあるんだろうけれど、難聴を患ったり、外部のプロデューサーとのコラボが増えたり、世間的な知名度があがったりといった環境の変化にいろいろ感じ入ることが多いらしく、とにかくあらゆる局面で「嬉しかったですねぇ」という言葉を発している。実り多き日々を過ごせているようでなによりです。
(Nov 19, 2017)