動物農場
ジョージ・オーウェル/高畠文夫・訳/角川文庫/Kindle
人間を追い出して動物たちがみずから農場運営に乗り出してはみたものの、頭脳仕事を一手に引き受ける豚たちにすべてを仕切られて、その他の動物たちは結局人間がいたときと変わらぬ不遇を味わうことになるという不幸な寓話。
いわば史上最悪の豚の話。豚むかつく。
まぁでも中編小説としては文句なしの傑作。
この本にはそのほか三編の短編──象を殺す話と刑務所と病院の話──が収録されている。どれも作者自身の経験を下敷きにしたのが明らかな殺伐とした話ばかりであまり好きにはなれないけれど、とはいえその筆致は見事で、オーウェルという作家のノンフィクション作家としての優れた資質がよくわかる。というか、どちらかというとジョージ・オーウェルという人はそういうノンフィクション的な方向性にこそ強みを持った作家とさえ思える。そういう人が『動物農場』のような優れた寓話を書いたというところに、さらなる価値がある気がする。
あと、この本で驚いたのが、開高健のエッセイを含めた巻末の訳者解説が全体の三割もを占めていること。こんなに読みごたえのある解説はひさしぶりだった。解説がはしょられることが強い電子書籍でこんな風にたっぷりと解説が読めるのはとても貴重。ほんと角川さんはいい仕事をする。
素晴らしい表題作とまったく作風の異なる短編三編、そしてこの解説があることで、ジョージ・オーウェルという作家の入門書にうってつけの一冊ではと思います。
(Feb 04, 2018)