巨大なラジオ/泳ぐ人
ジョン・チーヴァー/村上春樹・訳/新潮社
今年はできるかぎり紙の本も読むぞとの誓いもむなしく。
正月の三箇日に読み始めてみたにもかかわらず、最初の二話があまり好きになれなかったので、つづきを読む意欲がうせて、気がつけばその後は一ヶ月以上放置プレイ。結局読み終えたのは二月に入ってからだった。
そんな村上春樹の翻訳家としての最新作は、ヘミングウェイやフィッツジェラルドと同じ時代の作家、ジョン・チーヴァーという人の短編集。
読み終えるまでじつに一ヶ月半近くかかってしまったけれど、実際に読んでいた日数はわずか四日。でもって最初はいまいちとか思っていたくせに、そこは春樹氏が自らチョイスした作品ばかりなだけあって、ちゃんと身を入れて読んでみれば、それ相応に楽しんで読むことができた。なんで最初からもっとちゃんと読めないかな、俺。いけません。衰えるにもほどがある。
まぁ、最初に乗り切れなかったのは、このジョン・チーヴァーという人の作風がいささか古びて感じられたから。
古いというか、マイルドというか。人生の暗い部分に光をあててみたけれど、いたたまれないからつい目を逸らしてしまいました、みたいな短編ばかり。よくいえばその視線はナチュラルに優しい。ただ、その優しさが作家としての甘さに感じられてしまう嫌いがなきにしもあらず。そんな印象だった。
ただまぁ、そうした作風は同時代のフィッツジェラルドやヘミングウェイ、フォークナーなどとは確実に違う個性だとも思う。とりあえず二十世紀初頭のアメリカにはこういう作家もいたんだということを知ることができてよかった。
最初はいまいちとか思っていたくせに、そのうちにまた読み返したくなるかも……といまは思っている。
(Mar. 14, 2019)