路地裏の子供たち
スチュアート・ダイベック/柴田元幸・訳/白水社
シカゴ生まれの短編作家、スチュアート・ダイベックの処女短編集。
これにつづく既読の二冊――『シカゴ育ち』と『僕はマゼランと旅した』――がとてもよかったので、当然これも気に入るものと決めつけていたら、残念ながらそうでもなかった。
内容は『路地裏の子供たち』というタイトルをなるほどと思うようなもの。少年・少女を主人公にした短編が中心の、路地裏の暗がりで未知のなにかを覗き見てしまったような、非リアリスティックな感触を持った作品が多い。
後続の短編集で感じさせたユーモアのセンスもまだ未発達な感じで、全体のトーンが暗め。若いころの過ちを笑い飛ばすのではなく、そこに潜んだ苦い思い出をすくいあげるような感触がある。要するにネガティヴな印象が強い。
未熟な子供時代に誰もが味わうような、未知の世界と触れあうことへの不安感と、そこから生まれるリアリズムから離れた不気味な感触がこの作品集の読みどころなのかもしれないけれど、残念ながら僕はそこのところにいまいち惹かれなかった。おかげであまり書くことがない。
まぁ、そもそもダイベックの過去の二冊についても、いまとなるとすっかり内容を忘れてしまっているので、いずれ三冊とおして読みなおしたら印象も変わるのかもしれない。長生きできたら老後の楽しみとしよう。
(May. 08, 2022)