薬屋のひとりごと
日向夏/ヒーロー文庫/主婦の友社/Kindle
初めてラノベと呼ばれるジャンルの小説を読んだ。
中国(っぽい国?)の後宮を舞台に、若くして豊富な薬学の知識を持ち、毒に異常な執着をみせる、一癖も二癖もある女の子が、訳ありの見目麗しき宦官にその才能を見い出され、数々の事件を解決してゆくという連作短篇ミステリの第一弾。
これを原作にしたアニメがつい先日始まったばかりだけれど、それに先行するマンガ版はなぜだか二種類が別の出版社から同時進行で刊行されている。話はほぼ同じで、絵柄やコマ割りが違う。僕はそのうちスクエア・エニックスから刊行されている方(漫画家はねこクラゲという人)を読んでいる。つまりこの小説を読む前から話を知っていたわけだ。
ミステリをネタバレありで読んで楽しいのかって話だけれど、この作品の場合、ミステリといっても基本短篇だから、事件は毎回主人公の猫猫(マオマオ)によって、いともたやすく解決されてしまうし、どちらかというと彼女と壬氏(ジンシ)との少女マンガ的な関係こそが作品の肝って気もするので、その点はあまり気にならなかった。
マンガと小説を読み比べておもしろいなと思ったのは、両者のイメージがほとんど一緒なこと。マンガ化されるにあたってカットされたエピソードも若干あるけれど、あとはマンガで読んだときの記憶にまったく齟齬がないというか、それどころかまったくといっていいほど一緒じゃん! 若干ニュアンスの違いこそあれ、まるでマンガを再読しているも同然だった。要するにとても楽しく読めた。
しかも驚くべきことに、この小説の第一巻には、マンガ四冊分の話が載っている。それなのに価格はマンガ一冊分でお釣りがくるという。――いや、それどころか僕はこれをバーゲンで100円で買っているわけで。コスパよすぎだろ、ラノベ。
これだけ楽しく読めて安いとなると、もう半年に一冊のペースでしか出ないマンガ版は読むのはやめて、こちらだけ読むことにしても後悔しない気がする。
というか、小説はすでに十四巻まで出ているので、それを全部マンガ化するとなると五十巻を越えるのは確実なうえに、いまのような年二冊の刊行ペースだと、追いつくまでにこのあと二十年以上かかる計算になってしまう。とても最後までマンガ化される気がしないんだけれど……。
まぁ、とりあえずバーゲンで安くなっていた五巻までを一気買いしたので、そこまでは確実に読む予定です。
ライトノベルって「軽い小説」という語義のせいで敬遠していたけれど、文章の読みやすさは池井戸潤も大差ないし、単に主人公が十代で、表紙や挿絵にマンガ系のイラストがあしらわれているから、大人が読むものではないようなイメージがあるだけで、これはこれで、もしかしたら日本文学の確固たる一ジャンルなのかもって思った。
(Nov. 06, 2023)