デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界
村上春樹/文藝春秋
最近やたらとご自身のレコード・ライブラリーの紹介に熱心な村上春樹氏によるジャズ・レコードのお披露目本。
内容的にはアルバム五枚程度をセットにして語るという『古くて素敵なクラシック・レコード』と同じフォーマットだけれど、今回はあれみたいな四角形・プラケース入りという特殊な装丁ではなく、普通の大きめのハードカバー(菊版?)になっている。出版社は一緒なんだし、どうせならばどっちかに統一して欲しかった。
タイトルになっているデヴィッド・ストーン・マーティンは主にクレフというジャズ・レーベルのレコード・ジャケットのデザインを手掛けていたイラストレーターだそうで、ジャズに詳しくない僕が知ってたのはチャーリー・パーカーの『ウィズ・ストリングス』というアルバム(赤と黄色のやつ)くらいだった。
この本を見て「お、このジャケットはカッコいいから聴いてみよう」と思ったものがあったかというと――。
正直ない。まったくない。
僕が好きなレコードのアートワークは、モノクロ写真にカラフルなレタリングをあしらったブルーノート系のものが主で、イラストのジャケットに惹かれたことがあまりない、というのもある。クラシックの本のときにも思ったことだけれど、春樹氏が取り上げるそれらのアートワークのよさが、僕にはまったくといっていいほど伝わらない。
残念ながらこういう趣味の違いはいかんともしがたなものがあるなぁと思った。
(Apr. 11, 2024)