キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
デイヴィッド・グラン/倉田真木/ハヤカワ文庫
マーティン・スコセッシ監督最新作の原作となったノンフィクション。
サブタイトルは『オセージ族連続怪死事件とFBIの誕生』。その名の通り、居留地で石油が掘り当てられたことで大富豪となったネイティヴ・アメリカンの一部族を襲う謎の連続殺人事件と、そのころ創立されて事件の捜査にあたったFBIの初期の活動を描いてゆく。
映画ではレオナルド・ディカプリオが主演ということで、財産めあてにネイティヴ・アメリカンに寄生する白人たちを中心に物語が展開されていたけれど、こちらはノンフィクションなので、よりはっきりとネイティヴ・アメリカンにフォーカスしている。
第一部でオセージ族の歴史と殺人事件についてが説明され、第二部ではその事件解決のために尽力したFBIの捜査内容についてが描かれる。
映画とリンクしているのはそこまで。そのあとに「この事件には、さらにもうひとつの裏があったのだ」といって、映画では描かれなかった「もっとおぞましい陰謀が」あったことを語る第三部が存在する。
まぁ、その部分に関しては、前振りが大仰な分、やや風呂敷を広げすぎな印象を受けてしまったけれど、でもそれがおぞましいものであることはたしか。
欧州から移民してきた白人たちの差別主義が生んだ、未開の原住民たちへの野蛮で卑劣で暴力的なふるまいには、なんともやりきれないものがある。
フィクションとしてのバイアスがかかっていない分、この本のほうが映画の何倍も痛烈に事件の卑劣さを伝えてくる。
肌の色や文化の違いでなぜ人がそこまで残酷になれるのか、不思議でしょうがない。
(May. 04, 2024)