デューン 砂丘の子供たち〔新訳版〕
フランク・ハーバート/酒井昭信・訳/ハヤカワ文庫SF/全二巻
ポール・アトレイデスが砂漠に姿を消してからおよそ十年。残された彼の子供たち、双子のレトとガニーマを中心に、ポールの妹アリアの統治下にある惑星デューンのその後を描くシリーズ第三弾。
レトとガニーマは肉体こそ十歳に満たない子供だけれども、先人たちの記憶を受け継いで生まれてきているため、精神面では大人をもしのぐスーパーチルドレン。
同じように先達の記憶を受け継ぎながら、悪しき某祖先に精神をのっとられて「忌み子」と化してしまったアリアから帝国を救うべく、彼らがいかなる行動をとってみせるかを本作は描いてゆく。
主な登場人物のうち、前二作で生き残った人たち――ポールの母ジェシカ、スティルガー、ダンカン・アイダホ、ガーニー・シュレックら――もひきつづき登場。前作ではとくに目立った印象のなかったジェシカは、旧皇帝家の跡継ぎとしてサーダカーを率いるファラッディーンと接触する重要な役どころを果たしている。
あと、ムアッディブその人ではないかということで密かに民衆の崇拝を受けている盲目の〈伝道者〉が要所要所に顔を出し、「ポール生存説の真偽はいかに?」という興味をかきたてるのも読みどころのひとつ。
物語的には第一作ほどのスケールはないけれど、前作に比べれば派手だ。とくに後半、双子が別れ別れになってからは、第一作に近いタッチで作者の非情な筆致が再現され、重要キャラがあっけなくこの世を去ってゆく。
このシリーズはSFとはいっても、道具仕立ては巨大なサンドワームや控えめな超能力などで、比較的リアリスティックでオーソドックスな印象だったけれど、今作では終盤にレトが見せる予想外の変身(仮面ライダー+ウルトラマン的)が、ビジュアル的な面も含めて異彩を放っている。
巻末の解説には後続作品の簡単な説明があるので、今回の新訳シリーズもどうやらこれにて打ち止めらしい。
超人化したレトのその後はいささか気になるけれど、まぁ一応ここまで読めれば満足かなとも思う。
(Dec. 03, 2024)