クリスマスの殺人
アガサ・クリスティー/深町眞理子・他訳/早川書房
クリスティー完読プロジェクト締めの一冊。
もともとは2020年にアメリカで刊行された企画ものの短編集で、日本では翌年に箱入りの特製単行本として刊行された。
Kindle版も出ているけれど、買うならここはやっぱ箱入りの特装版でしょう?――ということで、クリスティーの全作品を電子書籍のKindle版で読んできたので、最後にこれを紙で読んで企画を締めることにした。
刊行から一年後の2022年には『アガサ・クリスティー完全攻略』の霜月蒼氏による解説が追加された改訂版が出ているのだけれど、そちらは箱のデザインが赤に変更されている。僕は青いほうが好みだったので、あえて古いほうを買った。解説がないのは残念だけれど、でもわざわざ紙の本を買うのだから、悩みつつも装丁を重視した。
日本では『クリスマスの殺人』というタイトルだけれど、原題は『Midwinter Murder』(真冬の殺人)で、その名の通り、冬やバカンスシーズンを舞台にした短編を集めたもの。ポアロ、ミス・マープル、トミーとタペンス、パーカー・パインにミスター・クインと、クリスティーの生み出した主要キャラが勢揃いした楽しい一冊だ。調べてみたら、アメリカではその後、春・夏・秋をテーマにした続編も刊行されている。残念ながら日本ではそれらの刊行予定はないらしい。
各短編はそれぞれが収録された短編集からの転載で、新訳ではないから、つまりすべて再読になる。それなのに大半の話をすでに忘れていたので、けっこう新鮮な気分で読めてしまった。記憶力がない人生も意外と楽しいかも。
本当は去年のうちに感想を書いて終えるつもりだったのに、年末に体調を崩したせいで、不覚にも年をまたいでしまったけれども、これにてクリスティー完読プロジェクトも本当に終了。
(Jan. 20, 2025)