2002年10月のサッカー

Index

  1. 10/01 ○ U-21日本5-2U-23バーレーン (アジア大会・グループリーグ)
  2. 10/05 ○ U-21日本1-0U-23ウズベキスタン (アジア大会・グループリーグ)
  3. 10/08 ○ U-21日本1-0U-23中国 (アジア大会・準々決勝)
  4. 10/10 ○ U-21日本3-0U-23タイ (アジア大会・準決勝)
  5. 10/13 ● U-21日本1-2U-23イラン (アジア大会・決勝)
  6. 10/16 △ 日本1-1ジャマイカ
  7. 10/19 ● 横浜M2-0鹿島 (J1・2ndステージ第9節)
  8. 10/25 ○ U-20日本3-0U-20UAE (U-20アジア選手権・準々決勝)
  9. 10/26   横浜M1-3磐田 (J1・2ndステージ第11節)
  10. 10/27 ○ 鹿島3-2札幌 (J1・2ndステージ第11節)

U-21日本5-2U-23バーレーン

アジア大会・グループリーグ/2002年10月1日(火)/ウルサン・スタジアム(蔚山)/TBS

 いよいよ踏み出された、アジア大会におけるジーコ・ジャパン予備軍の第一歩。23歳以上+年齢制限なし3人までという大会規定に対して、日本はオリンピック予選を見据え、U-21の代表候補組のみで挑んでいる。この年齢での2歳の経験差は結構でかいだろう。もとより経験不足や精神的な消極性が噂されるこの世代の選手たちが、年齢的には上のアジアの強豪たちを相手にどのような戦いを見せてくれるか。サッカー好きだったらば無関心ではいられないはずだ。それにしてはやや世間の関心が薄そうなのが気にかかる。
 残念なことに大会緒戦となるパレスチナ戦は同時刻に行われていたアントラーズ戦と重なっていた上に、ビデオ録画をどじってしまって後半しか見られなかった。結果は2-0での勝利だったけれど、格下のパレスチナ相手に前半をスコアレスで終わった内容に対して、メディア上は結構辛口な意見が目立った。
 さて、その試合を受けてのグループリーグ第2戦、対戦相手は初戦でウズベキスタンを3-0と破っているバーレーンだ。
 日本代表のスタメンはGK黒河(清水)、DF池田、青木、三田(新潟)、MF石川直宏、森崎和幸、鈴木啓太、松井大輔(京都)、大久保、根本(C大阪)、FW中山悟志というメンバー。8月に行われた中国との親善試合からは、黒河、三田、根本、松井、大久保の五人が入れ替わっている。あの試合では故障者が多くてベスト・メンバーが組めなかったというから、実際にはこちらがよりベストの布陣に近いのだろう。少なくても松井、大久保の加入はチームの攻撃力を大きく引き上げていた。
 またパレスチナ戦からは、右サイドが田中隼磨から石川に変更されている。後半途中から出場するや、持ち味のスピードを生かしてチームの勝利に貢献した石川直が田中隼からスタメンを奪い取ったという形だ。
 意外なのはこの大会に向けて、アントラーズの青木をCBにコンバートした山本監督の采配。この代表のボランチには森崎和、鈴木啓、阿部勇樹(市原)といった優秀な選手が揃っているので、彼らとの併用を考えた場合、正確なロング・フィードを武器とする青木を後ろに持ってくることで、より攻撃のオプションを増やしたかったということなのだろう。その辺の采配ぶりはジーコよりもやはり、中田浩二を左サイドバックにコンバートしたトルシエのスタイルを引き継いでいるようだ。
 青木が出ているのは嬉しいものの、それにより茂庭が出場機会を得られていないのはやや残念。それとも彼が故障でもしていて、その結果の青木のコンバートなのかもしれない。情報が少ないため、その辺の事情は不明。
 その他メンバーで個人的には意外だったのが、現在鹿島からC大阪へレンタル移籍中の根本がこの代表に選ばれていること。しかもレギュラー・ポジションをつかんでいるのみならず、なんとブレイス・キッカーの大役まで与えられている。知らないうちにJ2では目覚しい活躍をしていたものらしい。あっぱれだなあ。もしかしたらもう鹿島へは戻ってこないのかもしれないけれど、応援しているチームにかかわりのある選手のプレーを、こういう思わぬところで見られるのはそれだけでも嬉しい。
 ということで試合内容について。最近この世代の試合をいくつか見て常に感じることだけれど、今の日本の若い選手は本当に上手い。チーム全体としてのトラップやパスの正確さだけを取ったらば、これまでの日本代表で最強なんじゃないだろうか。足元へ飛んで来た鋭いパスがパシッと見事に止まる。逆サイドへのロング・ボールがどんぴしゃのポジションへと繰り出される。基本がしっかりとしたプレーを見られるのは非常に気持ちいい。少なくても技術的な面においては日本が世界の標準に近いところまで来ていることを、この子たちは実感させてくれる。それってわりと感動的だ。
 この試合の前半にはそんな新しい世代のよいところが十二分に出ていた。中盤の高い位置でプレスをかけて相手からボールを奪い取ると、正確なロング・ボールで大きくサイド・チャンジをしたりして、決定的なチャンスを幾度も作り出す。前線の選手たちも攻撃センス溢れるプレーを見せて、再三相手ゴールを脅かす。
 結果、日本は前半だけで4-0とバーレーンを圧倒してみせた。内訳は大久保が2点、中山、松井が1点ずつ。中山悟志という選手はいいんだか悪いんだかいまひとつよくわからないけれど、大久保と松井大輔には文句なく唸らされた。特に大久保の攻撃センスには非凡なものを感じる。現在J2の得点王だというその理由がよくわかった。
 ともかくグループ・リーグで一番の難敵とされたチーム相手に、前半のみで4点もの大量リードだ。なんだ、強いじゃないかと、ともて盛り上がらせてもらった。ところが。
 後半になった途端、前半と様相がうって変わる。開始5分でPKを取られて1点奪われ、さらにその4分後には流れの中から崩されて追加点。リードが2点となったことで楽勝ムードが一転した。勝っているにもかかわらず妙に追い詰められたような雰囲気になってしまった。前半の流れるようなプレーも見られなくなり、相手の猛攻にあたふたする場面が目立つようになった。
 多分この辺がこの世代の欠点とされる精神的な弱さなんだろう。大会前にはジュビロ相手の練習試合で7-0と大敗を喫したという。前半のプレーを見る限りでは、なぜそんなことになってしまったんだろうと不思議だったけれど、後半の展開ならばそれもありかと思わせた。なんだかいい時はいいんだけれど、崩れた時の踏ん張りが利かない印象だ。
 それでもそこはまだまだ成長過程にあるチームだというのもあるだろう。同点後に山本監督は田中達也、田中隼磨、安部らを送り込み、これによってチームはなんとか立ち直りを見せた。残り時間1分になってではあるけれど、田中達也の2試合連続ゴールで追加点もあげた。この追加点の持つ意味はすごく大きいと思う。あのまま押されたまんまの気分を引きずって試合を終わるのと、最後に突き放して終わるのでは、精神的にだいぶ違うだろう。今後への期待を持たせてくれる、貴重な一発だった。田中えらい。きっと浦和では大騒ぎだ。
 それにしてもパレスチナにしろバーレーンにしろ、中近東の国相手の試合というのはやたらとやりにくそうだ。パレスチナは引き分け狙いなのか、なんでもないファールにも大袈裟に痛がってみせてばかりいたし、この試合でのバーレーンも圧倒的な劣勢ゆえか、かなり険悪な態度を見せていた。サッカーにおける人間性を見る限り、どちらの国ともあまりお近づきにはなりたくない。
(Oct 04, 2002)

U-21日本1-0U-23ウズベキスタン

アジア大会・グループリーグ/2002年10月5日(土)/マサン・スタジアム(馬山)/TBS

 再び田中隼磨を右サイドの先発に起用して迎えたグループリーグ最終戦。
 この試合の流れは前半早々、松井が削られて交替した時点で決まってしまった気がする。後半開始直後に今度は青木、後半なかばには鈴木啓太が相次いで負傷。結局、故障者を交替させただけで選手交替枠を使い切ってしまった。やってくれるぜ、ウズベキスタン。勘弁して欲しい。
 なんにしろそんな調子だったからなのか、この日の試合では前の試合のような華麗なパス交換はほとんど見られなかった。やはり松井を欠いたことによる攻撃力の低下が否めなかったんじゃないかと思う。前半の終わり頃になって中山がペナルティエリア内で綺麗に倒されてもらったPKを、彼が自分で決めた。この虎の子の1点を守りきって、苦しみながらも勝ち取った勝ち星3だった。ある意味この勝利はとても貴重だ。
 ただ、この試合での青木の怪我は思ったよりも重かったらしく、彼はこの先、決勝戦まで進出しても出場機会がないんじゃないかという噂だ。この大会ではなぜだかキャプテン・マークまで任されていただけに、非常に残念。
 あと、その青木の代わりとしてCBにそのまま阿部勇樹を起用した山本采配も意外だった。茂庭はどうもこの大会では使えないらしい。それにしても本職はボランチの選手にCBを任せるというのは山本監督のなんらかのポリシーによるものなんだろうか。まあ、二人ともきちんとした仕事はしているようなので問題ないんだろうけれど。
(Oct 08, 2002)

U-21日本1-0U-23中国

アジア大会・準々決勝/2002年10月8日(火)/マサン・スタジアム(馬山)/TBS

 前の試合で故障した青木に代わり、この試合では阿部が先発でCBとして出場した。あと足を痛めた松井に代わって田中達也がスタメン。日本代表はこの田中と中山、そしてその二人の真ん中に大久保が入ってほぼ一列に並ぶ、3トップのフォーメーションで戦っていた。山本さんってもしかしたら、かなりの勝負師かもしれない。
 ただ、トップ下でボールをさばける選手がいないからだろう、その三人に効果的にボールが入らない。日本は立ち上がりこそ惜しいチャンスを作っていたものの、その後は終始中国にボールを支配される展開となり、苦しい時間を凌ぎ続ける羽目になった。
 本当に今日のこの試合は苦しかった。日本のパスはことごとくカットされる。でもってガンガン攻められる。中国がフィニッシュの精度を欠きまくっていたから助かったけれど、これがもしも欧州のチーム相手の試合だったらば、かなり悲惨なスコアで負けていただろう。
 それでも日本はそんな苦しい試合できちんと結果を出した。スコアレスで突入した後半15分、右サイドで相手ボールを追った根本が粘りに粘ってそのボールを奪い取り、それを(森崎が?)左サイドに展開。攻め上がっていた三田を狙ったこのボールは中国のDFにカットされかけるが、ここでその選手が痛恨のトラップ・ミス。絶好の位置でボールを得た三田はゴール前へと綺麗なクロスを放り込む。このボールに中山がダイレクト・ボレーであわせてゴール。終始劣勢だった日本が、流れの中からの実に小気味よい展開で先制点を上げた。
 この試合に痺れたのはこれからあとだ。ビハインドとなってからの中国の猛攻を凌ぐ残りの三十分の長かったこと。いつ同点に追いつかれるのかと気が気じゃなく、ずっとはらはらしどうしだった。無事ロス・タイム3分が経過してレフェリーが試合終了の笛を吹いてくれた時にはマジで嬉しかった。
 なんにしろこれで日本代表は無事、準決勝進出を果たした。驚いたことに日本がアジア大会で準決勝へ進出したのは32年ぶりなんだそうだ。谷間の世代と揶揄され続けた彼らだけに、二ヶ月前に苦杯を喫した中国を破ってこうした記録を残せたことはとても大きな自信になるだろう。ぜひ準決勝のタイを破り、決勝でホスト国である韓国と対戦してもらいたい。がんばれ。
 そうそう、それはそうとこの試合で山本監督は後半途中で田中達也を下げて松井を、大久保を下げて石川を投入した。それはつまり、今大会では野沢の出番はないってことなんだろうか? このチームならばトップ下での仕事の余地は十分にあるように見えるだけに、それはとても残念だ。一度くらい試してみてあげてくれないだろうか。それとも彼もどこか痛めているんだろうか。どうにもこのアジア大会は注目度がいまひとつなのか、情報が少ないのがネックだ。
(Oct 08, 2002)

U-21日本3-0U-23タイ

アジア大会・準決勝/2002年10月10日(木)/ウルサンスタジアム(蔚山)/BS

 故障のため、前の試合は途中出場だった松井がスタメンに復帰。対戦相手はネームバリュー的には強豪とも思えないタイ。中二日という強行日程の影響は心配されるものの、普通に戦えば決勝進出は期待できるだろうというアジア大会の準決勝。
 ところがこれが序盤から押されまくりの厳しい試合になった。中国戦と同様、日本は全然中盤でのパスが回らず、相手にボールをキープされ続ける苦しい展開。5バックでどっしりと守るタイの前に、決定機のひとつも作れない。ただディフェンスも前の試合と同じように危なっかしい印象の割には、なぜだか得点を許しそうな雰囲気がない。
 そうこうするうちに24分、ようやくセットプレーのチャンスを得た日本が、突風のような攻撃力を発揮して、最後はDF池田のゴールで先制してしまう。前半はその後も苦しみつつもこの1点を守りきって終了。
 後半はそれまでと比べると楽な展開になった。開始早々に鈴木啓太がビューティフルなミドル・シュートを決めて相手を突き放す。ボールもかなりいい感じで回せるようになった。解説の岡田さんによると、前半の3トップから松井をトップ下に下げたフォーメーションの変更のが効いたのだろうということだった。僕も松井はトップ下の方がよいと思う。
 後半の中頃には再び劣勢の時間が続くも、これを凌いで残り5分には田中隼磨が放り込んだグラウンダーの高速クロスに中山があわせて3点目をゲット。これで勝負あった。谷間の世代と言われた若者たちは、初のアジア大会決勝進出という快挙を成し遂げた。ブラボー。彼らならばこれくらいのことはできて当然。もっと自信を持って戦って欲しい。
 個々の選手を見ると、この試合の大久保は疲れのせいか、動きがいまいちだった。松井は後半はなかなか見事なボール捌きを見せてくれた。彼と大久保の二人はボールの扱いがとても上手いので、見ていて楽しい。
 よくわからないのは中山で、これでPKを入れれば4試合連続ゴール。特別すごい選手だとは思えないのに、きちんと結果は出している。ゴール前にクロスが入る場面ではかなりの確率でチャンスに絡んでくるから、少なくてもポジショニングは抜群にいいのだろう。
 そのほかだと鈴木啓太の攻守に渡る貢献ぶりが印象的だった。あと、残り5分程度ではあったけれど、ようやく野沢が出番をもらっていた。出来はいまいちって感じだったけれど。
 なんにしろこれで次の試合に勝てば優勝だ。相手は当然ホスト国の韓国、となると思っていたのだけれど、さにあらん。もう一試合の準決勝、韓国-イラン戦はスコアレスのままPK戦となり、結局イランが決勝へ駒を進めてしまった。ああ、真っ赤に染まったスタジアムで韓国と対戦したかったのに。松井とパク・チソンという京都パープルサンガのチームメイト同士の対決も見たかったのに。残念無念。まあ、イランも強敵だからよしとしよう。決戦は日曜日。
(Oct 11, 2002)

U-21日本1-2U-23イラン

アジア大会・決勝/2002年10月13日(日)/プサン・スタジアム(釜山)/BS

 U-21代表が惜しい試合を落とした。
 前半はパスもよく回り、年上の強豪イラン相手に五分の戦いぶりを見せてくれていた。ところが後半。なぜか山本監督は鈴木啓太を引っ込めて、故障明けの青木を投入する。青木はCBに入り、それまでそのポジションで安定したプレーを見せていた阿部を本来のポジションであるボランチへ。この交替がある意味では勝負の明暗を分けてしまった。
 後半が始まってわずか2分。ゴール前でのクリアミスのボールを青木と三田が譲り合って、そのボールがフリーのイラン選手に渡ってしまい、先制ゴールを許すことになった。
 あまりにイージーなミスから許したこの1点のビハインドと、フォーメーションの変更によるリズムの変化は致命的だった。日本は思うように攻撃の形を作れない。中盤に上がった阿部もまわりとの連係が合わず、力を発揮できない。結局残り10分という時間帯に石川と交替することになってしまった。
 さらにさらに。残り時間わずか2、3分の時点で。右コーナー付近からのFKで青木が信じられないようなミスをする。クリアボールを相手FWに当ててしまうのだった。相手はいきなり巡ってきたビッグ・チャンスを落ち着いて決めて追加点。痛恨の失点だった。
 これで勝負あった。その直後に日本は途中交替で出場していた田中達也からのクロスに中山があわせて一矢報いるものの、時すでに遅し。もう1点を奪い取るだけの時間はなかった。アジア大会の優勝カップは2大会連続でイランのものとなった。
 なぜ山本監督が鈴木啓太を交代させたのか、僕にはよくわからない。ワールドカップを見ていても思ったことだけれど、バランサーとしてのボランチの選手の出来がチームに与える影響はことのほか大きい。前半のチーム・バランスを見る限り、あの時点で鈴木を替える必要性はまったくなかった。前半のプレーで負傷していたというのならば仕方ないけれど、そうでないとするならば、この選手交替は非常に不可解だった。
 それにしても2失点ともに絡んだ青木の心痛は想像するに余りある。この悔しさをバネに一皮剥けてくれることを祈るばかりだ。
 そのほかで印象に残ったのは、松井のパサーとしてのセンスと、中山のポスト・プレーの拙なさ。中山の得点感覚は十分認めるにやぶさかでないけれど、ポストはもっと練習して欲しいと思う。そういう意味では柳沢は巧いもんだなと、変に納得してしまった。
 あとは大久保。ボールを持った時の動きには感銘を受けるのだけれど、今のところ消えている時間が長すぎる。そう言えば石川直宏も決勝トーナメントに進出してからは、これと言った活躍を見せられずに終わってしまった。ともに才能のある選手だとは思うけれど、まだまだ課題は多いみたいだ。
 まあ、残念ながら優勝こそ逃してしまったけれど、僕はこのチームがとても好きだった。今後はそれぞれにがんばってフル代表の一角を争って欲しいと思う。
(Oct 14, 2002)

日本1-1ジャマイカ

2002年10月16日(水)/国立競技場/TBS

 ジーコ監督率いる新生日本代表の初陣。
 フォーメーションを4-4-2に変更し、中盤に海外移籍組の四人を一度に起用した日本版“黄金のカルテット”が果たして機能するかどうか。そしてそれにともない採用された4バックが安定した守備力を発揮できるのか。その二つがこの代表のこれからしばらくの焦点だと思う。今日のところその結果は……。うーん、なかなか判断に迷うところだ。
 スタメンは楢崎、名良橋、秋田、松田、服部、稲本、小野、中田英、中村、高原、鈴木隆というメンバーで、代表発表の日にジーコが「明日が試合ならばこのメンバー」と公表していたとおりの布陣だった。トルシエの日替わりスタメンに慣らされていたせいで、この意外性のなさは若干淋しく感じられてしまう。ある部分でトルシエという人は意外とエンターテイナーだったのかもしれないと、いまさらながら思う。
 ゲームの方は日本代表が開始わずか7分で先制するという幸先のいいスタートを切る。中田から出たボールを高原がドリブルで持ち込んで右サイドへ駆け上がった小野へ斜めのラスト・パス。小野は落ち着いた左のインサイド・キックで、まさにゴールへのパスと呼ぶにふさわしいシュートを打ち、綺麗に左のサイドネットを揺らして見せてくれた。ゴール・ラッシュを予感させる、流れの中からの見事な先制点だった。
 ところがこの日の日本代表のゴールはこれをもって打ち止めとなってしまう。その後も中盤の四人に高原、鈴木が絡んで惜しいチャンスを何度も作るのだけれど、どうにも最後のあと一歩が遠い。そうこうするうちに時折ジャマイカに攻め込まれ、楢崎がパンチングで防ぐなんて危ない場面を作られたりする。
 後半になると小野、稲本の運動量ががたっと落ちた印象で、前半に見せてくれた素晴らしい連携プレーが息を潜める。じれったい時間が続く。残り15分という時間帯になって高原に替わり柳沢がピッチに。
 やがてジーコがボランチ二人に見切りをつけて交替を準備し始めた途端に。右サイドから上がったクロスから、ジャマイカのフラーという選手がヘディング・シュート。これを服部が胸で止めるも、そのボールが同じ選手の足元へとこぼれてしまう。二度目のチャンスを与えられたフラーは、今度は服部を交わして足でシュート。これを決められて同点に追いつかれてしまった。
 試合はその直後にダブル・ボランチを中田浩と福西に入れ替えて中盤をリフレッシュした日本が再び攻撃のリズムを取り戻すものの、結局追加点を奪えずにタイム・アップ。残念ながらジーコ日本代表監督の緒戦はドローに終わった。
 ホームの圧倒的な声援を受けながら勝てなかったというのは、どうにも印象が悪いものの、それでも中盤の四人を中心にしつつ、チーム全体で見せてくれた攻撃的なサッカーはかなり楽しいものだった。なにしろどこからでも決定的なラスト・パスが出てくる。そこへ代わりばんこに誰かしらが走りこんでいる。きちんと攻撃が形になる時には非常にスリリングだ。これでコンビネーションが高まってきたら、さぞやおもしろかろうと思わせてくれた。
 ただし、撃力アップのつけは当然ある。ディフェンスに関してはこれで大丈夫なのかと心配になるような場面が何度もあった。なんだか4バックのそれぞれが一度ずつ致命的なミスをしていたような印象もあるし。
 そもそも今回のチームには、前の代表での戸田や、U-21の鈴木啓太のように、最終ラインの前で敵を潰すことに身体を張るタイプの選手がいないわけだ。それは間違いなく今回のチームの欠点だと思う。“黄金の中盤”を実現するために払わざるを得なかった代償。3バックから4バックになってDFが一枚手薄になっている上に、そうした選手が不在なんだから危なっかしく見えてしまうのは仕方ない。その点は今後の課題だろう。とりあえず僕は今日のDF四人のプレーぶりはそれなりに気に入っている。服部のあのプレーがなければなあ。ついてないよなあ。彼にはちょっと可哀想だった。
 なんにしろ、やはり今日の問題は得点力。あえて守備的なマイナスを覚悟の上での布陣である以上、内容的には悪くなかったとは言っても、結果をともなってくれないことには消化不良な気分が残るのは致し方ない。
 中でも俊輔は最後までボールが足についていない感じで非常に不満だ。いくつかいいパスを出してはいたものの、あれくらいのプレーでは納得がいかない。小野、稲本も前半はともかく後半は存在感がなくなった。その点、やはり中田はすごい。最後まできちんと攻撃の核としての役割を果たしていた。キャプテン・マークを任されて当然だ。
 FWではエースとしての期待のかかる高原がいまいちだったと思う。先制点にこそ絡んだものの、その時以外はどこにいたんだって感じだった。肝心のシュートも一本も打てずじまいだったし。
 隆行はあいかわらずのプレーぶりで、何度もいい位置で倒されてはファールをもらい、チームに貢献していた。中田たちとの連係も良かったと思う。少なくても高原よりも存在感があった。
 それと嬉しいことに途中出場した柳沢の動きが素晴らしかった。全体に疲れが見える時間帯だったためか、持ち前のスピードが映える、映える。彼が入ったことで確実に日本の攻撃が活性化した。最後の15分だけの出場ではあったけれど、ひさしぶりに納得のいくプレーを見せてもらった。これだけ優れたパサーが揃っているのだから、スペースでの動きに定評のあるヤナギにはもってこいのチームだろう。今後の活躍に期待したい。
 なにはともあれ、ジーコ・ジャパンの船出は引き分けという不本意な形に終わった。次の試合はひと月後のアルゼンチン戦。今日のジャマイカも悪いチームではなかったと思うけれど、今度はまごうことなき強豪だ。しかも中田は不参加という話だし、多分今日のような戦い方をしていたら悲惨な結果になることは間違いないと思われる。さてどうなることやら。ああ、やっぱり今日は勝っておきたかった。
(Oct 16, 2002)

横浜F・マリノス2-0鹿島アントラーズ

J1・セカンドステージ第9節/2002年10月19日(土)/横浜国際総合競技場/TBS

 あいかわらずエウレル、ファビアーノの二人が戻らないというのに、さらに小笠原、本山という中盤の中心選手二人が相次いで戦線離脱。さらにはこの試合開始前に名良橋までが足に違和感を訴えてベンチを外れるという異常事態となった。あまりの駒不足に、なんでも屋アウグストはこの試合でついにFW登録だ。ということでスタメンはGK曽ヶ端、DF内田、秋田、池内、石川、MFが熊谷、本田、中田浩二の3ボランチ、トップ下に野沢、そして柳沢、アウグストの2トップという布陣だった。
 ゲーム自体は前半にウィルに2点を奪われ、それを守りきられて完敗という内容だった。これだけ戦力を欠いていれば、負けは仕方ないかとも思う。けれど、どうにもこうにも失点の形が悪すぎた。
 1点目はウィルにファール気味のプレーからボールを奪われ、それをドリブルで持ち込まれて打たれたシュート。秋田が一対一で当っていながら、なぜ止められない? 曽ヶ端にしても反応できないほど鋭いシュートじゃないだろうに。見ていて「あ、こりゃ打たれる」とわかるような見え見えのシュートだっただけに、止めてくれなかった二人にはとてもがっかりした。
 2点目もそう。今度はウィルが左側からドリブルで攻め上がる。対応は秋田一枚。ここでウィルは左サイドを駆け上がった清水にパスを出し、自らは中央へ流れ込む。そこに清水がラスト・パスを放り込むと、ウィルは体勢を崩しながらも左足をボレーで合わせて、見事なシュートを決めて見せた。最後は彼の個人技だったけれど、それまでの流れが止められないディフェンスが情けなかった。
 この試合で秋田はJリーグ史上二人目の300試合出場を達成したらしいけれど、この2失点を見る限りでは、悪いけれど日本代表にはふさわしくないと思う。どちらにしてもファールでいいからプレーを止めることくらいはして欲しかった。
 あと左サイドで先発出場した石川竜也。多分これが初のスタメンだと思うんだけれど、全体的にプレーが消極的に見えた。パスの精度もあまり高くなかったし、この試合を見る限りでは期待はずれだ。チームが苦しい時だからこそ、目を見張るようなプレーを見せて、こちらの度肝を抜いて欲しかった。
 ディフェンダーということで言うならば、対する横浜の松田の強さ、そしてドゥトラの上手さには目を奪われた。FWではウィルと柳沢の決定力の差も歴然だし、やはりこの試合に関しては負けるべきして負けた試合だと思う。
 この試合でイエローをもらった柳沢は次節は累積3枚で出場停止だという。今日の布陣からもう一枚駒を欠いて、さらには対戦相手が現在無敗で首位を走る浦和レッズという最低最悪な状況。ジュビロが思わぬところで黒星を喫していることでかろうじてつながっていた三連覇への夢も、これでついについえたといっていいだろう。残念無念。
 しかしここまで故障者が多いのは誤算に違いないけれど、それにしても今年はあまりにサブの選手を安易に外に出し過ぎている。海外移籍した鈴木、マリノスの平瀬ともにレギュラーを取れていない状況を見るに、それならば鹿島に残して欲しかったと思わずにいられない。ある意味、今のこの成績は自業自得の部分が否めない。愚痴りたくもなる。
(Oct 20, 2002)

U-20日本代表3-0U-20アラブ首長国連邦

U-20アジア選手権・準々決勝/2002年10月25日(金)/アルアラビ・スタジアム(カタール)/テレビ朝日

 限りある時間の中であまりサッカーばかりに時間を費やしているわけにはいかないので、今回のこのU-20アジア大会はあえて見ないようにしていた。まあ試合の放送が午前2時など、深夜だったせいもある。ただこの試合は放送時間が金曜日の午後11時半と、比較的見易い時間帯だったことと、ワールドユースの出場権のかかった試合だったために見ることにした。万が一この試合に負けてしまうと、このチームを見ることのできる機会はこれが最後になるのだから。
 というわけでワールドユースへの出場権をかけたU-20アジア選手権の準々決勝だったわけだけれど。結果的には3-0と日本の楽勝だったものの、ゴールはミドル、PK、相手のミスと、ある意味どれもきちんとした流れから奪ったものではないものばかりだったし、全体的に見ていてそれほど楽しくなかった。
 選手をまったく知らないというハンディがあったのは確かだ。でもそれ以前にそのサッカーがあまりおもしろくない。3-5-2のフォーメーションで、最終ラインから最前線へのロング・パスばかりが多用されるカウンター・サッカー。中盤がまったく省略された印象のそれは、中盤に豊富な人材を誇るフル代表とはまったくベクトルが違っていた。その点で言えばかなりU-21と通じる。同じ国のサッカーが年代によってこんなに違っていていいのかと思う。しかもジーコが中盤の攻撃的MFを生かしたチーム作りを始めた今だ。若い世代のこうした傾向はナショナル・チームの将来に漠然とした不安を感じさせる。
 まあとりあえずU-21でも感じた通り、この世代も基礎技術はとてもしっかりしている。とくにインサイド・キックによるダイレクト・ボレーでの正確なパス回しが目を引いた。へえ、こんなことできちゃうんだと感心させてもらった。基礎レベルでは十分世界に近づいているし、身体もでかい選手が多いみたいだから、あとはプレーに対するイマジネーションをどう高めていくかだろう。まだまだ伸びしろのある年代だから、今後の成長に期待しよう。
(Oct 26, 2002)

横浜F・マリノス1-3ジュビロ磐田

J1・セカンドステージ第11節/2002年10月26日(土)/国立競技場/NHK

 前節に浦和が負けたことにより首位に返り咲いたジュビロと、ラザロニ監督解任後、3連勝と調子を取り戻したらしいマリノスの対決。それなりにいい勝負が見られるかと思っていたら、かなり一方的な試合になってしまった。
 試合は開始わずか1分に高原が右のフェイントで切り返し、左で強烈なシュートを放ってジュビロが先制。さらには30分にも高原。DFのあいだをするりとすり抜け、今度はドカンとヘッド一発。マリノスを突き放す。
 マリノスは後半に山西のオウン・ゴールで1点差とさせてもらうも、残り時間あと5分というところでジュビロのカウンターを食らい、わずかパス2本で中山がフリーの決定機を得る。ゴン隊長がこれをダイナミックに決めて勝負あり。ジュビロが実に綺麗な3ゴールでマリノスを圧倒した。
 翌日の試合でレッズが負け、代わりに2位となったガンバとの勝ち点は3差。実力や今後の対戦相手からして、ジュビロが圧倒的に有利だろう。どうやら史上初の完全優勝が目前のようだ。
 対するマリノスは残り時間も少なくなってからイエロー2枚で退場となったウィルが、その直後にチームメイトの奥を蹴っ飛ばすという珍しい暴力沙汰があったそうで、やはりどうもうまくいっていないみたいだ。
(Oct 27, 2002)

鹿島アントラーズ3-2コンサドーレ札幌(延長Vゴール)

J1・セカンドステージ第11節/2002年10月27日(日)/カシマスタジアム/BS1

 今年は成績もいまいちだし、もうアントラーズ戦の放送はないだろうと思っていた。ところがこの試合は、鹿島がまだかろうじて優勝戦線に残っているのに加え、対するコンサドーレに、負ければJ2降格が決定という話題性があった。おかげで放送があり、始まるまでは見られるというだけで得をした気分だった。ところがだ。
 柳沢の1トップ、トップ下に野沢とアウグスト、さらに右サイドにはなぜか青木をコンバートして、4-3-2-1という布陣でのぞんだこの試合。故障者続出で苦しい台所事情にさらに追い打ちをかけるハプニングが開始早々に起こる。わずか1分で熊谷が負傷退場してしまったのだった。これが大変な重症で、右足首靭帯断絶に腓骨骨折で全治4ヶ月だそうだ。ちょっとお、勘弁してよ。
 ともかくこの怪我により、急造右サイドの青木はほとんどなにもしないうちに本来のポジションであるボランチへ移動。右サイドには池内が回り、熊谷と交替で入った西澤──グランパスからひと月ばかり前にレンタル移籍してきた──がCBを務めることに。
 さらに悪いことは重なる。なんだか全然存在感がないなと思っていたアウグストが、足の違和感を訴えて40分で交替してしまうのだった(交替で入ったのは長谷川)。前半だけで二枚の交替枠を使う羽目になった。その直後にコンサドーレに先制点を許し、前半は0-1で終了。まったく踏んだり蹴ったりの前半だった。
 厳しい状況は後半も続く。アジア大会中に足を痛めていた青木は、やはりまだ無理がきかないらしく、後半途中で交替してしまう。代わりに入ったのはファビアーノ。おおっ、復活していたのか。それはささやかながらも朗報だ。さらにこのファビアーノがボランチの位置に入るからびっくりだ。もうフォーメーションがめちゃくちゃ。
 でも、そんな状況ではあるというのに、それなりに押しまくっているから不思議だ。前半だって先制こそされてしまったものの、終始アントラーズのペースだった。そこはさすがに前年度王者と降格がほぼ決定的なチームとの力の差だろう。後半始まってすぐに柳沢のゴールで同点。その後、池内がPKを取られてまたビハインドとなるも、その十分後には再び柳沢の今季初となる1試合2ゴール目で同点とした。
 試合は結局延長前半に石川の、クロスがそのままなんとなくゴールマウスを割ってしまいましたという感じの、いまひとつ締まりのないJ初ゴールで幕となった。コンサドーレはJ2降格決定。鹿島も勝ち点2は拾ったものの、首位ジュビロとの勝ち点差は5と広がり、三連覇の可能性はかろうじて残っている程度という状況になってしまった。
 それにしてもラジオ中継で聞いたこの前の浦和戦にしろ今日の試合にしろ、よく勝ったと思う。今年はずっといまひとつ活気が感じされなかったアントラーズだけれど、こういう厳しい状況になって、ようやくチームの底力を見せてもらえた気がする。今日は柳沢にもひさびさにフォワードらしい活躍を見せてもらったし、池内にも意外な攻撃のセンスのよさを見せてもらった。まあ、PK取られたプレーは困ったもんだけれど。
 そうそう困ったもんだといえば石川くん。ロング・パスのセンスは買うものの、ディフェンスに対する積極性が足りない。先制ゴールを許した場面だって、あれは彼が全力で小倉をケアしていれば防げたゴールじゃないか? 彼はディフェンスの戻りが遅すぎる印象がある。攻撃力があるのはいいけれど、やはりディフェンダーはまず守備ありき。その辺をわきまえてしっかりとやってもらいたいもんだ。
 ああ、それにしても熊谷の故障は痛すぎる。本人もさぞや悔しいだろう。来週のナビスコ杯決勝はいったいどんな布陣で戦うことになるんだろうか。
(Oct 27, 2002)