やられた。どう見ても格下の大分相手に、アントラーズとしてはリーグ戦初となる引き分けで首位奪取を逃す。せっかく名古屋が首位の市原(なんてこった)に勝ってくれたのというのに困ったもんだ。
小笠原を累積警告による出場停止で欠いたこの試合、アントラーズは中田、フェルナンド、青木のトリプル・ボランチに、本山のトップ下という布陣で臨んだ。ある意味では本山の真価が問われる一戦といえる。とうぜん彼には大いに期待していた。でもなあ。
まあ悪くはなかったと思う。いくつは素晴らしいラスト・パスも見せてくれた。それでも手放しでほめたたえられる内容ではなかったのは確かだ。少なくても同じポジションにおける小笠原ほどの存在感はなかった。どうにも彼からは、全体としての動きが少なすぎる印象を受ける。もっと積極的に動いてボールに絡んで欲しい。今のような消極的なプレーをしているようではせっかくの才能が小さくまとまって終わってしまいそうだ。
チーム全体としてはトリプル・ボランチがそれぞれに機を見ては積極的に攻め上がるため、結構ぶ厚い攻めができていたように思う。前節同様、前半は圧倒的に鹿島のペースだった。前半においては相手にはほとんどシュートさえ打たせなかった。ところが。
前半の途中、秋田がGKへのバック・パスをミス・キック。力なく転がったこのボールを大分FWのロドリゴが奪ってゴールを決めてくれてしまう。日本代表の選手のプレーとは思えないような秋田のミスだった。彼は前節での途中退場に加え、今回もこんな致命的なプレーをしているのだから、とても出来がいいとは思えない。ジーコは今の状態ならばもう彼を代表に呼ぶべきではないと思う。冷たいようだけれど、マジで。
ちなみにロドリゴという選手は、京都との開幕戦で、倒れた選手のためにプレーを切った相手からのリターン・ボールを奪ってゴールを決めてしまい、フェア・プレーの精神に反すると問題になった選手だ。その試合は、そのあと大分の監督が相手に対する謝罪の意味で、無抵抗で1ゴールを献上してしまった上、たまたまその試合がtotoゴールの対象カードだったために、マスコミを大いに賑わせた。
なんでもこのロドリゴ選手が日本で最初にプレーしたチームが鹿島らしい。96~97年に所属していたそうだから、僕がサッカーを本腰を入れて見始めたころの話だと思うのだけれど、まるで記憶にない。おそまつ。
とにかくたったひとつのミスから、かつてのチームメイトによって劣勢に立たされた鹿島。その後もあいかわらずボールは支配しているものの、あせりのためか徐々に相手の反撃をくらうようになる。後半にはDFサンドロにゴール前でどフリーのシュートを打たれる場面などもあり(打ったのがFWだったら確実に一点ものだった)、徐々に敗色が濃厚になってゆく。そんな中、かろうじてチームの窮地を救ったのはフェルナンドの精度の高いラスト・パスと、それにあわせた中田浩二の豪快なヘッドだった。フェルナンドという選手は本当にキックの精度が高い。ここへ来てチームにも馴染んできたようで、このところは随分と存在感を発揮している。浩二のヘディングも見事だった。王者と呼ばれるチームの意地を見せてくれた。ナイス。
同点ゴールが決まってからは両者、素手での殴り合いといった様相を呈する。交互にカウンターでゴールに攻め寄せる展開のまま、試合終了。両チームとも今期初となるドローに終わった。
納得がいかないのは残り時間15分で本山に代わり途中出場したクラウデシール。まだ1点のビハインドを追っていた状況だから、彼の高さに期待しての投入だったのかもしれないけれど、逆にビハインドだからこそ、本山の奮起と土壇場での決定力に期待したかった。クラウデシールはゴール前での決定的なヘディングのチャンスを空振ったりして、いまひとつぱっとしないプレーが目立つ。そもそも今のチーム状態でなぜボランチがもう一人必要なのか、わざわざ彼を獲得したセレーゾ監督の思惑がわからない。納得がいかない分、本山や伸び盛りの青木を下げての彼の起用はファンとしておもしろくないし、チーム内の空気も気になってしまう。なんだか先行き不透明で嫌な感じだ。
その他では途中出場の深井がこの試合では若者らしい気迫の感じられるプレーでチームを盛り立て、前節でのマイナス・イメージを払拭してくれたのは嬉しかった。一方の平瀬はあいかわらず全然ダメだけれど。
あと、前半に名良橋がヒール・キックでボールをコントロールし、柳沢へ絶妙なラスト・パスを送ったプレーはなんともファンタスティックだった。あれをやったのが中田や俊輔だったら、スポーツ・ニュースのトップで取り上げられていただろう。秋田はともかく、名良橋はジーコの贔屓目ではなくても日本代表にふさわしい。
相手チームで目立っていたのはGKの岡中。この試合では何度彼のファイン・セーブに阻まれたことか。それも片手で。さすが元日本代表だ。
そう言えば大分には元FC東京のサンドロ選手もいた。彼にしても長いことFC東京でプレーしていたのだろうに。二人ともいつ大分に移籍したのか知らないけれど、こういう選手たちが移籍せざるを得ないあたりにJリーグの限界を見る気がする。どのチームも、もっと選手を大切にして欲しいものだと思う。
なにはともかく、アントラーズにとっては前節の横浜戦での敗北に続いて、なんとも痛い下位チーム相手の引き分けだった。次節は首位を陥落したとはいえ、以前好調の市原との対戦。リーグ戦中断まであと2試合。どうにも正念場だ。
(May 11, 2003)