2003年6月のサッカー

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  1. 06/08 ● 日本1-4アルゼンチン (キリンカップ)
  2. 06/11 △ 日本0-0パラグアイ (キリンカップ)
  3. 06/18 ○ ニュージーランド0-3日本 (コンフェデ杯)
  4. 06/20 ● フランス2-1日本 (コンフェデ杯)
  5. 06/22 ● 日本0-1コロンビア (コンフェデ杯)

日本1-4アルゼンチン

キリンカップ/2003年6月8日(日)/長居スタジアム/日本テレビ

 またしても惨敗。ぐうの音も出ないほどのレベルの違いを見せつけられた。やっぱり駄目でしょう、4バック。これはジーコが4バックを諦めるのが先か、辞めるのが先かという感じになってきた。
 この試合にジーコは中田英寿をトップ下に配し、稲本、中田浩二に加え、小笠原をもボランチの位置で起用するという、トレス・ボランチの布陣で望んだ。これが大はずれ。小笠原はほとんど仕事らしい仕事ができないし、浩二はパスの精度が低過ぎた。おまけに稲本が全然よくないと来たからもうお手上げだ。作戦失敗。結果、アントラーズの二人はいいところひとつ見せられないまま、前半のみでピッチから退くことになってしまった。
 アルゼンチンは前半30分にペナルティエリアの外でアイマールのパスを受けたサビオラがシュートを決め、あっけなく先制。さらに前半終了間際にはサネッティがファール覚悟で止めにいった稲本を振り切って攻め上がり、サビオラとのダイナミックなワンツーから豪快極まりないシュートを決めてくれてしまう。アナウンサーがワールドレベルという言葉を連発していたけれど、これにはちょっと格が違い過ぎるという感じだった。圧巻。
 2点を奪われて迎えた後半、日本は中盤に福西とアレックス、さらにFWに中山に代えて大久保を投入。オーソドックスなダブル・ボランチとボックス型の布陣に戻したことで、なんとかリズムを取り戻した。でもってアレックスのCKから秋田のヘッドでゴールを決め、一点差に詰め寄ることに成功する。
 よしいいぞと思わせたのはそこまでだった。その後、1点差に詰められたアルゼンチンが再び前がかりになって来たため、日本代表の攻撃は再び停滞してしまう。でもって、ふっと気が抜けたようなタイミングにつけ込まれ、ふわりと浮かしたFKにフリーで合わせられて3点目(決めたのは高原のチームメイトだそうだ)。さらには左サイドからのミドルシュートがポストを叩いたにもかかわらず、楢崎の背に当ってゴールとなってしまう不運な4点目。以上の失点により日本はホームとは思えない惨敗を喫した。
 それにしてもアルゼンチンは強かった。ちょっとレベルが違い過ぎた。特に前半は手も足も出ない状態。中盤でボールを回すところか、キープさえさせてもらえない。オフェンス以前にディフェンス力の差が歴然としていた。地力が違い過ぎる。これでは相手になるはずがない。前半まだ無失点の時点で、もう3-0で負けるのは確実に思えた。結果1点返しはしたけれど、予想通りの点差で負けてくれちゃって。うーん。
 4失点すべてで感じたことだけれど、アルゼンチンはシュート・レンジが日本の倍以上広い気がする。得点はどのシュートもJリーグでは滅多に打って来ないか、打っても枠に飛ばない距離だ。けれどアルゼンチンの場合にはそうした距離から破壊力抜群のボールがきっちりと枠へ飛んでくる。まさに世界との距離を感じさせられた。うなるしかない。
 まあ、どう見てもアルゼンチンと日本では実力の差が歴然なのだから、負けたのは仕方ないと思う。でも、それならばそれで、2006年につながる負け方をして欲しかったというのが正直な思いだ。どうせならば負けが血となり肉となる若い選手に経験を積ませた上で負けたかった。僕は中山も秋田も名良橋も服部も好きだ。それでも先のことを考えると、既に限界が見えている彼らを起用して負けるよりも、伸びしろのある若手に敗北の味を味わわせたかったと思わずにいられない。少なくても今の4バックのままでW杯を迎えられるとは思えない以上、今日の負けは単なる無駄なだけだ。
 そういう意味で、後半に大久保が時折見せてくれたいきのいいプレーにはいくらか救われた。けれどコンフェデレーションズカップの登録選手には彼の名前はない。なぜコンフェデに連れてゆかない彼をこの試合で使う? 辻褄があわないじゃないか。
 ジーコは若手の才能を素直に認め、それを最大限伸ばすことに力を入れて欲しいと思う。アルゼンチンのサビオラは大久保と同じ年齢だ。最強国の若手がA代表マッチでどんどん経験を積んでいるのに、弱小国の日本が、将来を嘱望されている若手の育成にもっと積極的に取り組まないでどうする?
 ジーコ、お願い。3バックに戻してください。そして若手にもっとチャンスを。
(Jun 08, 2003)

日本0-0パラグアイ

キリンカップ/2003年6月11日(水)/埼玉スタジアム/テレビ朝日

 アルゼンチン戦の惨敗でさすがのジーコもこのままじゃまずいと思ったらしく、この試合では思い切ったスターティング・メンバーの交替を行った。なんたって前の試合と同じなのは中田英寿と楢崎のみ、あとは総とっかえと来た。
 なんといっても目玉は4バック。山田、坪井、宮本に加えて、なんとアレックスを左サイドバックに起用。舵取り役は福西と遠藤、ヒデと俊輔がダブル司令塔、そして2トップが大久保と高原。左サイドがアレックスということでディフェンスにはやたらと不安があるけれど、攻撃力という意味では非常に期待ができるメンバーだ。前日から楽しみで仕方なかった。
 対するパラグアイは守護神チラベルトがついに代表落ち。それでもあいかわらずディフェンス力は高いようで、この前もポルトガル相手にスコアレス・ドローという結果を残している。強豪ポルトガルさえ無得点に終わるディフェンスラインをいかにして破って見せるか。それがこの試合の一番の焦点だった。
 始まって十分くらいは日本が攻勢。高原、大久保の2トップに中田、俊輔が絡み、アレックスが攻め上がるのを見ているだけでも気持ちよく、これはいけるかもしれないと思ったものだ。ところがそうした勢いも、そう長くは続かない。その後はパラグアイのディフェンスがどっしりと腰を落とした感じで、自由にボールを持たせてくれなくなってしまう。アルゼンチン戦のように圧倒される訳ではないものの、どうにも攻め手を欠いた印象の時間が長く続いた。結果から言ってしまえば、この悪くないのだけれど攻めきれないという状態が最後まで続いてしまったようなものだ。パラグアイのディフェンスはなるほど堅固だった。そしてやはりジーコ・ジャパンは勝てなかった。
 まあ勝てはしなかったものの、じゃあ全然駄目かというとそうでもない。少なくても前の二試合よりは全然よかった。前の四人はコンビネーションさえ高まればもっともっと見せてくれそうな期待を抱かせてくれた。海外の三人は当然として、そんな彼らに負けないプレーを見せてくれた大久保には脱帽もの。残り十五分にオフサイドで取り消されはしたものの、きっちりゴールネットを揺らして見せてくれたし。ちょっと気は早いけれど、新しい日本のエース誕生と言いたくなる活躍だった。これで高原が本調子になり、柳沢が復活してくれれば、前はこの三人で決まりだろう。とりあえずFW不足解消の目処は立ったと思う。いやいや、めでたい。
 注目の左サイドのアレックスは、言っちゃなんだけれどディフェンダーという印象ではなかった。ディフェンスよりも攻撃参加でばかり目立っていたし、あれじゃあ4バックじゃなくて変形3バックだろう。右サイドの山田がほとんど上がれなかったのは、彼とのバランスを気にしたせいかもしれない。でもそれにしても山田は上がらなさ過ぎた。そこで上がらなくてどうすると思うシーンがいくつかあった。いいクロスはあったものの、全体としてあれでは名良橋からポジションはとれない。
 なんにしろパラグアイが終始引いていたせいで、この新4バックの実力のほどは、ほとんど判断できなかった。ただ宮本の気迫あふれるプレーは魅力的だ。少なくても彼の場合は面構えがいい。キャプテンシーもある選手だし、個人的には今後もスタメンで使って欲しい。山田は守備の面ではともかく、攻撃参加が少なすぎたのがややマイナス。坪井は可もなく、不可もなくという感じだろうか。
 ボランチの福西、遠藤もいい感じだった。僕はユースの頃から遠藤くんには好感を持っているので、彼の活躍は結構嬉しい。福西も攻守に渡っていいプレーを見せていたのだけれど、前半途中で足を痛めたらしく、後半は中田浩二と交替してしまった。浩二くんも悪くはなかったけれど、出来としては福西の方が上だったと思う。
 ということでスコアレス・ドローに終わってしまったものの、それでもこの試合では僕が望んだとおり4バックをやめて(ない?)、若手を起用して戦ってくれたこともあり、ある程度納得のいく内容だった。今は次の試合となるコンフェデ杯の初戦、ニュージーランド戦にジーコが一体どのような布陣で望むのか、期待と不安が半々だ。願わくはジーコがこれ以上、僕らの期待を裏切りませんように。
(Jun 11, 2003)

ニュージーランド0-3日本

コンフェデレーションズ・カップ/2003年6月18日(水)/パリ・サンドニ/TBS

 なんでもこの日はワールドカップでのトルコ戦の敗戦から丁度一年目だったのだそうだ。各大陸の優勝国同士がカップをかけて争うコンフェデレーションズカップの開幕戦。フランスはジダン抜き、ブラジルは3R抜きで若手主体と、なんだか強豪国にとっては単なる迷惑なイベントといった調子であまり盛り上がっていないみたいだけれど、新しいチームがいまだ形にならないわれらが日本がそんなことを言っていていいはずがない。是が非でもグループ・リーグ2位以内を死守して、一試合でも多く経験を積んで帰って来てもらわなきゃならない。ドイツ・ワールドカップまであと三年だあ。
 ということで緒戦の相手はラッキーなことに参加国中、もっとも弱そうなニュージーランド。一月{ひとつき}前のU-22の試合でもわかるように、でかいことはでかいけれど技術はまだまだ。今の日本が負けていいような相手じゃない。ところがこの相手に日本は結構手を焼くことになる。
 この日のスタメンはパラグアイ戦のメンバーとほとんど同じ。変更は故障のためチームを離れた福西に代わって稲本が入ったのみ。どうにもジーコが今度の大会をどのようなチームで戦おうとしているのかが今ひとつ見えてこない。このままこのメンバーをレギュラーにしちゃうつもりなんだろうか。それとも次のフランス戦では秋田たちの4バックを復活させるのか。そもそもアレックスの左サイドというのは今後も続けるつもりなのか。今のジーコのやり方はあまりにいきあたりばったりに思える。
 なんにしろそんなこんなで始まったコンフェデ杯の初戦だった。ゲームは日本が圧倒的にボールを支配するという展開になるのだと思っていたら、意外やそうならない。ニュージーランドの中盤でのプレスが思いのほか厳しく、加えてこちらもパスミスが多くてリズムがつかめない。試合を通じてボールの出し所を見つけられず、横パスやバックパスばかりが目立つ展開だった。なんだかこのところの日本はA代表もU-22もそうした傾向がいやに多い気がする。消極的なイメージで気に入らない。
 それでもやはり相手のレベルは低いらしく。日本は前半12分に稲本のボールカットから怒濤のカウンターを仕掛け、最後は俊輔が左サイドの角度がないところからボールをゴールに流し込んで先制。あれっ、入っちゃうのって感じで、あまり綺麗な形ではなかったけれど、とりあえず流れの中からの得点はなによりだった。
 2点目は後半20分。中盤でフリーでボールを持った中田がドリブルで攻め上がり、そのままミドルを決める。見事なシュートだった。でもあの局面でチームのキーマンである中田にマークがつかないあたりがニュージーランドの限界だろう。
 3点目もそう。山田の右サイドからのクロスを、珍しく俊輔が頭で決めたものだったけれど、ここでの俊輔もびっくりするくらいフリーだった。確かに高原がおとりになってDFを引きつけていたし、時間的にも疲れてはいたのだろうけれど、あのポジションの選手をああまでフリーにしてしまう守備力では話にならない。
 というあたりで前日に午前3時までこの試合を見ていた影響で眠気が襲ってきたので、あとは雑感で終わりにする。
 期待の大久保はあまり見せ場を作れずに終わった。それでも最後の十分くらいはそれまでの鬱憤を晴らすかのごとく、元気にボールを追いまくって若さをアピールしていた。一方の高原は惜しいところで決めきれないというプレーが多く、不調を感じさせた。できれば二人のどちらかには得点させてあげたかったのだけれど。残念。
 俊輔は2ゴールを上げはしたものの、ボールを持ち過ぎて攻撃のリズムを悪くしているような印象もあった。中田もゴールこそ決めたものの、出来は今ひとつのように見えた。
 そのほかだと、個人的には遠藤が攻守に渡ってとてもよいプレーをしていたように思った。山田も今回は何度か攻め上がる姿を見せてくれたし、3点目のアシストも決めたしで合格。
 ま、なんにしろ今回もアレックスを左サイドに据えた新生4バックの真価を問うにはもの足りない相手だった。中一日置いての次のフランスをいかに戦うか。そしてその結果を踏まえてコロンビアとどう戦ってみせてくれるのか。本番はこれからだ。土曜早朝の試合を楽しみに待とう。絶対生じゃ見られないけれど。
(Jun 19, 2003)

フランス2-1日本

コンフェデレーションズ・カップ/2003年6月20日(金)/サンテチエンヌ/TBS

 さあ今大会の大一番。中一日での三連戦というグループリーグの過密日程に配慮して、フランスはスタメンの大半を入れ替えて来た。僕が名前を知っている選手はバルデスとピレスしかいない。対する日本は前の試合と同じスタメン。これは引き分けて当然、できれば勝たないといけない試合だった。ところが。
 日本は善戦こそしたものの敗北を喫した。ボール支配率ではおそらく相手を上回ったにもかかわらず敗戦。とりあえず確実に世界との差は縮まっている。それでもやはり差は差として歴然と存在する。そんなことをあらためて実感させられる試合だった。
 稲本がペナルティ・エリア内でファールの判定を受けてPKをとられた1点目は仕方ない。あんなプレーでPKをとられるのみならず、イエローカードを出されてしまったら話にならない。ジーコが試合後のインタビューで何よりも先にレフェリーに対しての不満をぶちまけていたらしいけれど、それももっともだ。
 でも2点目の取られ方があまりに残念。アレックスのマークがずれたところからラインの裏に入り込まれて、そこにロングボール一発という形。パスを出した方もシュートを打った選手も上手かったのだろうけれど、そうした隙を突かれるのは日本のディフェンスにまだまだ問題があるからだろう。この辺はもっと成長しないといけない。
 でもその失点自体はアレックスをDFとして起用している以上、リスクとして計算できたものだと思う。そのマイナスをあえて選択しているのは、それを上回るプラス・アルファをアレックスに、そしてその他の攻撃陣に期待しているからだ。そしてこの試合での日本の攻撃は、あと一歩と思わせるところまで来ていた。
 もちろん相手のフランスは次のニュージーランド戦で確実に勝ち点3が見込めるため、負けなければいいという余裕を持った戦いぶりだった。そんな相手に対してこちらは持てる力すべてを注いで攻め込んで、結局俊輔のFKの一点しか奪えなかった。それでも何度もちゃんとフィニッシュまでいけていたというだけでも、今までの何戦かよりも内容は良かった。高原が本調子には遠く、大久保は経験値不足、俊輔は左足を痛めているという状況で、よく戦ったと思う。敗戦自体は悔しくはあるけれど、内容的には結構満足している。
 唯一の得点となった俊輔のFKはワールドクラスの曲がり方だったし、勝ち越されてから遠藤が打ったFKもバーをたたく惜しいものだった。中田が高原からのラストパスを受けてダイレクトボレーを打つ場面もあったし(惜しくもバーの上)、俊輔が見事なボールコントロールでマークを振り切り、ミドル・シュートを打つ場面もあった。これだけ得点の予感を感じさせる多彩な攻撃を見せてもらえれば、負けても悪く言う気にはなれない。加えてディフェンスでも危なかったのは、得点された場面の他は二つ三つだったし、今日のチームには素直にご苦労さまと言いたい。
 あ、あえて言えばジーコには、最後に元気な永井を入れて、前からかき回すくらいのことはしてもらいたかった。選手交替は疲れの見えた稲元から中田浩二へ、そして足を痛めた俊輔から小笠原への二枚だけ。過密日程による疲労の蓄積は避けられない以上、いかに選手を交替させるかがこの大会の勝負を分けるんじゃないかと思っていただけに、あまりにありきたりなジーコの采配には不満を感じた。選手間の連係をなにより重要視するジーコにとっては、連係に不安のある元気な選手よりも、疲れていてもそこまで一緒にプレーを続けて来た選手の方が期待ができるということなのかもしれないけれど。でも今大会の高原にはいまひとつ期待ができない感じがするので、それだったらば永井を使ってみて欲しかった。松井でも、奥でもいいのだけれど。とにかくジーコには、効果的な選手交替でゲームの流れを変えてしまうような采配を一度くらいは見せて欲しいと思う。
 さて、という訳でグループリーグの最終戦の相手は勝ち点で並んでいるコロンビアだ。得失点差では日本が一点上回っているから、引き分けでも決勝トーナメント進出が決まる。とはいえこちらは主力のほとんど全員が二試合をフルに戦ったあとで、ベストのゲームができるかどうか、かなりの不安がある。相手はどうか知らないけれど、少なくても守備力は高いらしい。攻撃の面でも初戦ではフランス相手に互角以上の戦いを見せていたという噂だ。ここできちんと勝ち点を奪って駒を進めることができるかどうか。ジーコの命運はこの一戦にかかっている。ゆけ~。
(Jun 21, 2003)

日本0-1コロンビア

コンフェデレーションズ・カップ/2003年6月22日(日)/サンテチエンヌ/TBS

 終わった。やっぱり負けた。引き分けにさえ持ち込めなかった。せっかく月曜日の朝に早起きをしたのに。見終わってどっと疲れが出た。いや、見ている最中から、特に失点してからの残り時間がつらかった。途中で見るのをやめたくなった。この手の試合でそんなことを思ったのは初めてじゃなかろうか。ああ、疲れた。
 この試合では、俊輔が前から痛めていた左足をフランス戦でさらに悪くしてしまって欠場。さらに稲本を累積警告で欠くという状況だった。そんな中、二人の代わりにジーコが起用したのは、小笠原と中田浩二のアントラーズ・コンビだ。それ以外は前の二試合と同じスタメン。そもそもこれでよかったのかが疑問だった。
 若手主体とはいえ、疲労の蓄積は半端じゃないだろう。結局、疲労がもたらす判断力の低下が唯一の失点を招いたんじゃないかと思っている。後半中頃に宮本から遠藤への中途半端なパスを相手に奪われて痛恨の失点を喫した場面は、そうとでも考えないとあまりにやり切れない凡プレーだった。
 ただそれ以前に、この大会及びそれ以前の親善試合からして、日本代表のプレーにはあまりにミスが多過ぎた。この試合だって得点にはつながらなかったけれど、ミスからゴールを脅かされるシーンが二度三度とあった。そういう意味では失点は奪われるべくして奪われたものだと思う。
 特にこの試合でのパスミスが気になったのが中田浩二。彼はこの前スタメンで出た試合でもかなりひどい出来だったし、このところのプレーは精彩を欠いているように思う(湯浅健二さんは誉めているけれど、僕には全然いいと思えない)。なんたって彼のポジションでのパスミスはピンチに直結する。この試合でも何度となく危ない場面を作っていた。ボランチは小野、稲本を始め、ここへ来て非常に評価を上げた遠藤、さらにはなぜかジーコになってから招集されない戸田などもいる、もっともレギュラー争いの熾烈{しれつ}なポジションだ。今みたいなプレーぶりで出場の機会をもらっていたのでは、選出がジーコの七光りだと言われても仕方なくはないか。
 小笠原も同じだ。今日は決して悪かったとは思わないものの、これまでの俊輔と比べてしまうと、どうしても見劣りする感は否めなかった。この試合で後半の最後の方で登場した奥にだって勝っていたかどうか怪しい。ジーコの立場を考えれば、アントラーズの選手にはそういう中途半端なレベルのプレーをしてもらっては困る。たとえ監督がジーコじゃなくても選ばれて当然と納得させるようでないといけない。オガサと浩二にはたっぷりと反省してもらいたい。
 なんにしろディフェンスではミスからピンチを招き、前では高原が決定的チャンスで枠を外すこと二回。これでは勝てるわけがない。そもそもコロンビアは勝てて当たり前というレベルの相手ではなかった。コロンビアのキックオフで始まったこの試合、相手はいきなりショートパスを回して一度も日本にボールを触らせずにミドルシュートまでいってみせた。それを見た時点で、これは{あなど}れないなとすぐに思った。多分最終的なキープ率もコロンビアの方が高かっただろう。ボゼッション・フットボールを取り柄とするチームがボール・キープ率で負けていて、しかもミスを連発していて勝てるはずがない。やはりこの試合は負けるべくして負けた試合だと思う。とはいえ。
 この大会全般に関しては悲観してばかりじゃなくてもいいのかなという気もしている。なんたってアウェイの地で、ベスト・メンバーではないにしろ、フランスに必至で食い下がり、南米選手権の優勝国コロンビアと五分に渡りあえたのだから。一流国との間にはまだまだ経験や集中力の点で大きな溝があるのを感じるけれど、その下くらいに位置する国とならば、ある程度戦えるようになって来た。アレックスの左サイドバックや遠藤、山田、坪井と言った新顔の活躍も新鮮だった。そして中田や俊輔レベルの攻撃力があれば、十二分に世界と渡り合えることがわかった。日本のサッカーはこれからだ。
 でもそう思えば思うほど、準決勝へ進んで残りニ試合を戦えなかったのが悔しい。ちっくしょう、だから僕らにもっと経験を。次の実戦はいつだあ。
(Jun 23, 2003)