クラブと良好な関係を保ちたいから、選手の無理な招集は見合わせる。かつてはそう言っていたジーコだけれど、ワールドカップのアジア予選が来年2月から始まることが決まり、そんな呑気なことは言ってられなくなったらしい。ヨーロッパ各国のリーグ戦が始まろうというこの大切な時期に、中田英寿、俊輔、稲本、高原はもとより、イタリアに渡ったばかりの柳沢までを呼び戻した。これで勝てなかったらば、さぞ世間の風が冷たかったろう。いやいや、勝ってよかった。
スタメンは基本的にはコンフェデレーションズ・カップのメンツ。それに調子がいいから見てみたいと、大久保に代えて柳沢を起用。あと、この前は川口を試したし、楢崎の実力はわかっているので、彼も一度は実戦で試してみたいと曽ヶ端をGKに起用してきた。
対するナイジェリアはチームの半数が試合前日に来日するという強行軍。しかも若手中心の準A代表といったメンバー構成だったようだ。まあ、それでも身体能力は高いし、やたらとスピードもある。チームとしてはあまり機能していなかったみたいだけれど、一対一の場面ではそうした能力の高さを十分に見せてくれた。そういう意味では強過ぎず、弱すぎず、日本代表の現状を考えるとそこそこいいマッチメイクだったんじゃないかと思う。
僕はこれまで日本代表のゲームを見たあとで、中田英寿について書いたことがあまりない。それは彼のプレーがいつでも一定水準で安定していて、今さら誉めたり、ケチをつけたりする余地がないからだ。しかし今日の彼はパスミスが妙に多かったりして、珍しく出来が良くなかった。それでも日本はナイジェリア相手に3-0で勝ててしまう。ヒデ頼りと言われていた頃が嘘のように今の代表は頼もしい。なんたって4バックの両サイドがアレックスと山田だ。両方とも本職はMFで攻撃力には定評のある選手だし、彼らが攻撃に加われるようになると当然攻撃の幅も広がる。今日の試合は見ていてとても楽しかった。
1点目は開始わずか1分。アレックスのクロスを右足でワントラップした高原が、左足を振り向いて見事にゴールネットを揺らせて見せてくれた。GKが反応できないほどのビューティフルなゴールだった。2点目も高原で、今度は俊輔のクロスにヘッドであわせた。まさにストライカーという活躍ぶり。どうもツートップの片方は彼の指定席になりそうだ。
3点目は後半、オフサイド気味(ぎりぎり?)で飛び出した遠藤保仁が落ち着いて代表初ゴールを決めた。遠藤、いいよなあ。僕は彼が大好きだ。でもなあ。
ジーコは小野が戻ってきたら、いったいどういうメンバー構成をとるつもりなんだろう。今はアレックスをDFに起用したマイナスを、遠藤が攻守にわたる精力的な働きで埋めている状態だと思う。そんな彼を外すのは危ない気がするけれど、かといって小野ほどの選手を控えに置くのはもったいなさ過ぎる。その辺のジレンマをどのように解決するか。ジーコの監督としての真の力が試されるのは、小野が怪我から戻ってきてからになるんだろう。さてどうなることやら。
今日の試合では全体的にディフェンスに対してすごくポジティブな印象があった。結構危ない場面を紙一重でしのいでいる場面が多く、みんなでがんばって守っているぜという感じが非常に伝わってきた。だから完封できたのはとても大きいと思う。
そんな中でも俊輔のディフェンスへの献身ぶりは非常に印象的だった。攻撃でも高原の2点目のアシストを始めとして、いくつもいいパスを出していたし、個人的にはMVPは彼にあげたい。いやあ、とても成長してくれていて頼もしい限りだ。
今日の試合、唯一難を言えば、点差に余裕があったにもかかわらず、交替枠を大久保の一人分しか使わなかったことだろう。せっかく呼んだのだから、久保や松井、市川あたりのプレーを見てみたかった。どうもジーコのベンチでの腰の重さにはじれったい思いを否めない。
最後に。今日のレフェリーはなんだかとてもレベルが低かったように思う。おかげで日本がかなり救われていた印象もあったけれど、それにしても柳沢がペナルティエリア外で相手GKと1対1になった場面で、相手がハンドでプレーを止めたのにもかかわらず、レッドカードが出るどころか笛さえ吹かれなかったのは論外だろう。困ったもんだ。
(Aug 20, 2003)