チュニジア0-1日本
2003年10月8日(水)/チュニス・エルマンザ競技場
ようやく実現したジーコ・ジャパンの欧州遠征第一戦。ジーコがずっと海外遠征の必要性を主張してきたのを考えると、今頃になってようやく実現するというのはいい加減遅すぎる感がある。しかもヨーロッパに行ったはずが、初戦の対戦相手はアフリカ勢で、あまり強いとは言えないチュニジア。なんだかなあ。
ま、とりあえず今回は遠征が実現しただけでも良しとしておくべきなんだろう。対戦相手にしたって、アウェーでいきなり強豪と当たってこてんぱんにやられるよりは、まずはこのくらいの相手とやっておくのが丁度いいかもしれない。それにチュニジアは去年のW杯グループリーグでの対戦国だ。現在の日本代表の実力を測る上ではそれほど悪くない相手だと言えなくもない。
日本ではこの日がナビスコカップ準決勝の開催日にあたっていたため、その2試合に出場する磐田、鹿島、清水、浦和の選手は(基本的には)今回の遠征には招集されていない。加えて宮本も怪我で不参加。したがってここ数試合スタメンを務めてきた4バック、山田、坪井、宮本、アレックスの四人が、この試合には揃って出場できないことになった。おまけにそれ以前の4バックのメンバー、名良橋、秋田、森岡、服部の四人もナビスコ杯出場チームに所属している。つまりこの試合の4バックはジーコ・ジャパンでは全員初スタメンとなる選手だけで構成せざるを得ないという、非常に珍しい事態になった。
この状況でジーコが選んだ新しい4バックは、加地(FC東京)、中澤、茂庭、三浦敦宏という構成だ。加地については名前も知らなかったし、アツが左サイドでプレーできるというのも知らなかった。不覚。
茂庭のところは当初は松田が出場することになっていたのだけれど、その松田が直前になってまたもや腰痛で代表を辞退。どんな星の巡り合わせで彼はこんなにも代表と縁遠くなってしまっているんだろうと不思議に思う。間違いなく日本を代表するDFの一人なのだから、一日も早く代表に戻ってきて欲しい。
A代表初選出となった茂庭は、手島の故障により急遽招集されてスタメンのチャンスを得た。鼻骨を骨折してW杯の時の宮本と同じマスクをしていたけれど、うっとうしかったらしくて途中で外していた。マスクのせいというわけでもないのだろうけれど、最初のうちはかなりミスも多くて、やっぱりまだA代表は早いんじゃないかという気もした。それでも、その後は落ち着いてプレーできるようになったみたいだ。なによりもさかんに声を出していたのには感心した。
中澤は持ち前の強さを十分に発揮していたし、加地も結構攻撃参加して存在感を示していた。アツの攻め上がりが少なかったのが若干もの足りなかったけれど、全体的に新生4バックのメンバーは満足のできるプレーを見せてくれていた。
この試合のチュニジアはW杯の時の印象とはまるで違って、思いのほかパス回しの上手いチームだった。チュニジアの監督はロジェ・ルメール。どこかで聞いた名前だと思ったら、なんだ、このあいだまでフランス代表監督だった人じゃないか。W杯で予選敗退してしまったので、たいした監督じゃないのかと思っていたけれど、チュニジアをここまで鍛え上げるんだから、実はいい監督なのかもしれない。
なんにしろチュニジアの意外な強さ(もしくは日本代表の不安定さ)ゆえに、この試合の見せ場は守備にしかなかったような印象だった。ひさしぶりに顔をそろえた欧州組の、いわゆる「黄金の中盤」はなんだかいまひとつ連係が悪かったように思う。ツートップは柳沢と鈴木隆行で、この二人が揃った時はいつもこんな感じだよなあと思わせるプレーぶり。柳沢はあいかわらずオフサイドが多過ぎるし、攻撃にはまるで新鮮味がなかった。
まあ、実をいうと早朝4時半から放送されたこの試合、録画に失敗して後半の途中までしか見られなかったのだった。だからその後、もしかしたら日本にもいい場面があったのかもしれない(少なくても途中出場した藤田のひさしぶりの代表でのプレーは見られなかった)。ただ一時間強を見た限りでは最近で一番出来の悪い試合だと思った。
でもわからないもので、そういう試合に限って勝ててしまったりする。アウェーだというのにね。得点は茂庭からのロングフィードに反応してフリーのチャンスを得た柳沢が珍しく落ち着いて決めた一点のみ。それでも守備陣がきちんとした仕事をしてくれたので、なんとか白星を挙げることができた。うーん、白星を喜ぶべきか、不甲斐ない戦いぶりを嘆くべきか、なかなか判断に迷う試合だ。まあ、ラスト20分を見ていないことだし、つべこべ言うのはやめておく。
ちなみに今回の4バックはおそらくこの試合限りだと思われる。実は土曜日のルーマニア戦のために山田、坪井、アレックスの三人がこれから合流することになっているのだった。わざわざナビスコカップ出場選手を呼び寄せるのは、それだけジーコがディフェンスラインの連係を高める必要性を強く感じていることの証しだろう。そして彼ら3人が日本代表のスタメンとして認知されていることの証しでもある。おそらくルーマニア戦はこの三人に中澤を加えた構成になるものと思われる。その他のディフェンダーたちが、今後このメンバーにいかに食い込んでゆくのかに注目したい。
もう一つ注目なのがこの試合に起用されなかった選手の今後。小野にスタメンを奪われた遠藤はどうなるのか。完璧に一時の勢いを失ってしまった感のある大久保には再びチャンスがあるのか。楢崎と曽ガ端のどちらが正ゴールキーパーを務めるのか。ああ、こうして見ると日本代表にはまだまだたくさんの課題がある。
(Oct 09, 2003)