2004年3月のサッカー

Index

  1. 03/01 △ U-23バーレーン0-0U-23日本 (五輪・最終予選)
  2. 03/03 ○ U-23レバノン0-4U-23日本 (五輪・最終予選)
  3. 03/05 ○ U-23UAE0-2U-23日本 (五輪・最終予選)
  4. 03/06   横浜M1-1磐田(PK2-4) (ゼロックス杯)
  5. 03/14 ● U-23日本0-1U-23バーレーン (五輪・最終予選)
  6. 03/16 ○ U-23日本2-1U-23レバノン (五輪・最終予選)
  7. 03/18 ○ U-23日本3-0U-23UAE (五輪・最終予選)
  8. 03/27 ○ F東京1-2鹿島 (ナビスコ杯・グループD)
  9. 03/31 ○ シンガポール1-2日本 (W杯・一次予選)

U-23バーレーン0-0U-23日本

オリンピック最終予選/2004年3月1日(月)/アブダビ(UAE)/BS1

 この前のA代表のオマーン戦を思い出させる一戦だった。引いて守ってくる中東のチームを崩せず、スコアレスに終わった五輪最終予選緒戦。ただアフリカ勢並の身体能力の高さを感じさせたオマーンのフル代表に比べると、あたり前かも知れないけれど、バーレーンの五輪代表には特別どこがすごいという感じがなかった。どう見ても技術的には確実に日本の方が上だ。そんな相手にカウンターで何度か決定的なチャンスを与えてしまったディフェンス・ラインには問題があるような気がする。
 スタメンは林、菊地、闘莉王、那須、徳永、鈴木啓太、今野、森崎浩司、松井、平山、田中達也という組合せだった。
 期待の松井はスタメン出場のチャンスをもらい、いくつか素晴らしいプレーを見せてくれてはいたものの、全体としてはまだまだという印象だ。いい時には素晴らしいプレーを連発するのだけれど、消えている時間が多過ぎる。もっと積極的にゲームに絡んでくれないと困る。
 平山もこの日はまったくいいところがなかった。僕が知って以来4試合目で初めてのシュートミスをおかしていたし、さすがの超高校生ルーキーも本番のプレッシャーには勝てなかったということだろうか。
 その他で気になったのが3バックの左に入った那須。去年マリノスでボランチとして活躍してJリーグ新人賞を獲得した彼だけれど、その前の年まではDFだったと聞いている。その割には一対一のプレーがやたらと危なっかしかった。実際ペナルティエリア付近でFKを二つも与え、そのうちの一つでイエローカードまでもらっていた。彼の守備能力には結構不安を感じた。
 反対にいい意味で印象的だったのが田中達也。ボールに触れない時間が多かったものの、いざボールを持った時には積極的にゴールを目指すその姿勢がいい。本当に彼はこの一年でものすごく伸びた。平山のイラン戦のゴールだって8割方はアシストを決めた彼の得点のようなものだったし、この二人のコンビはチームにとって不動の2トップという印象になりつつある。
 ところでゲーム終盤、山本さんはその田中を高松に代え、闘莉王まで前線に上げて、高さを生かしたパワープレーを仕掛けた。この前のオマーン戦でのフル代表も終盤は放り込むばかりのぶざまなサッカーを見せていたけれど(あの時間帯の攻めは本当にひどい内容だった)、あれと比べると五輪代表の攻撃には高さを生かそうという明確な意図が見られた分だけいくらかマシだった。でもいくつかのチャンスを作り出しつつも、シュートが味方や敵に当たってしまってゴールに届かない。結局そのままタイムアップとなってしまった。
 田中はまだまだ元気に見えたし、この最後の交替はどうかと思った。どうせチーム・バランスを崩してでも得点を奪いにゆくのならば、その前の松井を山瀬に代えたところを考え直して、この中盤のテクニシャン二人を同時に使い、高い位置でボールをキープするような展開を狙って欲しかった。
 うーん、それにしても直前の三つの親善試合でやたらと好印象を残し、いまやサッカーファンからはA代表を上回る関心を集めている感のあるU-23が、いざ予選本番となった途端にこの結果だ。やはりサッカーは難しいとあらためて思う。なんだかんだ文句を浴びつつも(最近は解任のデモ行進まであった)、一年半の間に二度もロスタイムで勝ちを拾ったジーコの勝ち運というのは評価するべきじゃないかという気がしてきた。
(Mar 02, 2004)

U-23レバノン0-4U-23日本

オリンピック最終予選/2004年3月3日(水)/アブダビ(UAE)/BS1

 中一日という強行日程にもかかわらず、菊地に代えて石川を入れた以外はバーレーン戦と同じスタメンで臨んだUAEラウンド第二戦。
 形としては石川が右ウィングハーフで、徳永が3バックの右に入る、前の試合の後半途中からと同じフォーメーションだった。菊地の調子が悪いからというのではなく、A代表から戻った石川の調子がようやくスタメンで使えるまであがってきたということなんだろう。実際に石川はフル出場でチームの攻撃に大きく貢献していた。今まで彼を満足に使えないでいた山本さんが気の毒になる。本番では使いもしない石川や茂庭をA代表に招集するなんて、まったくジーコも罪作りだ。解任を求める人たちが出てきても当然だと思う。
 ゲームはこの日も不安混じりの立ちあがりだった。レバノンは激しいボディー・コンタクトでガシガシ削りにくる一方、自分たちがファールを受けた際には、わざとらしく倒れたり痛がったりばかりしていた。そんなレバノンの選手の大袈裟なリアクションを真に受けてか(それとも同じ中東人としての贔屓目からか)、イラン人の主審は日本に不利な笛を吹きまくる。平山なんてそれのどこがファールだってプレーで何度も笛を吹かれていた。
 もとより接触プレーに強くない日本だ。そんな相手と主審に悩まされてか、ボールを支配しつつもリズムに乗れない。やけにアウェーの風が身に染みる展開だった。僕は日本がふがいないからというよりは、レバノン選手の見苦しい過剰演技に、見ていて腹が立って仕方なかった。こんなチームに負けたら話にならない。二度と立ち直れないくらいけちょんけちょんにしてやらないと気がすまないとまで思った。
 そんな鬱憤を晴らしてくれるゴールがようやく決まったのは前半30分頃。平山がヘディングで落としたボールを、田中達也が頭でねじ込んだ。オフサイドじゃないかという気もしたけれど、旗は上がらなかったからいいんだろう。平山もよく競り勝ったし、田中もよく詰めていた。二人の持ち味が十分に出た先制点だった。
 田中はその後も2アシストを決め、途中交替するまでの全得点に絡む大活躍を見せた。平山ばかりが持ち上げられているけれど、このチームのFWの柱はいまや田中だろう。五輪代表という枠に限らず、今の日本で一番期待のできるFWは彼じゃないかという気がしてきた。どうせならば大久保との小さいもの同士の2トップも一度見てみたい。山本さん、日本ラウンドで試してみてくれないかな。
 なにはともあれ、その後のゴールは鈴木啓太、高松(後半始めから平山に代わって出場)、石川と、3本どれも素晴らしいものだった。4-0という結果は決して悪いものではないと思う。けれども。
 後半のレバノンは疲れからかプレスが効かなくなり、中盤にスペースを与えてまくっていた。あの状態で後半が2点で終わってしまったのは大いに不満だった。しかも始めのうちはちんたらとボールを回すばかりで得点の匂いもしなかった。同グループのライバルUAEは緒戦で勝っている。得失点差を考えれば一点でも多くとっておくに越したことはない。でもって相手のレバノンは前の試合で不祥事を起こし、主要選手を三人も欠く状態だ。本気で攻めれば確実に大量得点が望めるような相手だった。ここで攻めきれなくてどうすると、僕は終始イライラしながら後半を見ていた。
 これは五輪代表に限った話ではないけれど、とにかく日本人選手はゴールを狙わなさ過ぎる。綺麗な形を作ることばかりに気をとられていて、本来のゲームの目的が得点することにあることを忘れてしまっているような印象を受ける。この日の後半がまさにそんなシーンのオンパレードだった。
 ペナルティ・エリアでボールを持った選手が、ゴールを狙わずに味方を探していてどうするんだ。ひどい時になると、味方もいないところにパスを出している。ゴール前に限らず、出しどころが見つからないからと、もらったパスをそのまま出し手に戻すなんて場面もやたらと多い(幸いこの日はそうでもなかったけれど)。好きでやっているサッカーだろうに、せっかくのボールを腫れ物でも扱うみたいに、おっかなびっくり触っている選手が多いのはどうしてだろう。出しどころがないならば自分で持ち込んでチャンスを作ってやろうという姿勢を持って欲しい。
 そんな傾向が強い日本チームのなかにあって、常にゴールへの意識を感じさせてくれる田中達也や、DFの癖に本分を忘れてガンガン攻めあがってしまう闘莉王の積極性は僕をほっとさせてくれる。とにかくもっともっと自分で勝負を決めるんだという意欲を感じさせてくれる選手に出てきてもらいたいもんだと思わされた一戦だった。
(Mar 04, 2004)

U-23アラブ首長国連邦0-2U-23日本

オリンピック最終予選/2004年3月5日(水)/アブダビ(UAE)/BS1

 前の試合でUAEが勝ってくれてしまったため、もしも負けようものならば、自力でのオリンピック出場が不可能になってしまうという、とても重要な一戦だった。最悪でも引き分けなければならないというミッションを前に、山本監督は前の試合でいい働きをした石川を控えに戻して、再び徳永を前にあげ、右センターバックには茂庭を起用してきた。トップ下は松井ではなく山瀬、あとは今までどおり。攻撃力よりも守備力重視という布陣だった。
 それにしてもタフな試合だった。なんたってUAEが思いのほか手強い。ホームという条件もあるけれど、どう見たって今までで一番手強い。UAEはゴールへ向かう意欲とダイレクトプレーの切れ味では確実に日本を上回っていた。このグループで一番の難敵はバーレーンだなんて分析をしていたらしい日本サッカー協会はどこかずれている。
 どうにもW杯でグループ・リーグを突破したことで、僕を含めた多くの日本人は、日本の実力を過大評価している傾向があるみたいだ。結果、アジアを甘く見ている気がしてならない。アジアは確かにレベルが低い。でも日本だってからそれほど抜け出せてはいないんだということを、ここのところのW杯予選とこの五輪最終予選でもって思い知らされた気がしている。
 なにはともあれ苦しい試合だった。前半はいいところゼロ。休養たっぷりのはずの山瀬は勝負に絡めず、平山も連戦の疲れからかボールをキープできない。とにかく日本は攻撃の形がまったく作れない。逆に3トップ気味のUAEの早い攻めに苦しめられ、何度となく決定的なチャンスを与えてしまっていた。前半の終盤はいつ先制点を奪われてもおかしくない感じだった。もうこの試合は引き分けにできれば恩の字という内容だった。
 変化があったのは後半から。運にも味方されて前半を無失点でしのいだ日本は、後半から平山に代えて高松を起用する。さらにその後しばらくして山瀬を引っ込めて松井を投入。この二人が試合の流れを変えてくれた。松井がためを作り(最近の彼は身体を張って倒れまいとする姿勢を見せてくれるようになって好印象だ)、高松が思いのほか巧みなボール・コントロールを見せて左サイドを駆け上がる。二人に触発されたように田中達也の動きも俄然よくなった。UAEの選手に疲れが見え始めたのとは対照的に、日本は時間とともにどんどん元気になっていった感じだった。
 こうなれば勝利はもう必然だと言える。残り時間十分を切った時間帯に、今野のスルーパスを田中がペナルティ・エリアの深くまで持ち込み、角度のないところからシュートを放つ。これをGKが弾くも、そこになんと高松が詰めていた。高松はこのチームに合流して以来、二試合に一度はゴールを決めている。この決定力はかなり驚異的だと思う。なんでもっと評価されないのか不思議だ。
 試合はそのすぐあとに相手DFのミスからボールをもらった田中がミドル・シュートを打って二点目を奪った時点で決まりだった。相手のミスを見逃さずに得点に結びつけるのは強いチームの証しだろう。日本がこの予選グループで一番のチームだということを印象づける、なんとも嬉しい追加点だった。
 いやー、それにしても無事にグループトップでUAEラウンドを終了してなによりだ。DFの連係にはまだまだあぶなっかしいところがたくさんあるし、これが本戦だったらば、ボロ負けしかねないと思う。そんな調子なのでまだまだ安心はできないけれど、とりあえず過酷な日程を無事に終えた選手やスタッフにはご苦労さまと言いたい。
(Mar 06, 2004)

横浜F・マリノス1-1ジュビロ磐田(PK2-4)

ゼロックススーパーカップ/2004年3月6日(土)/日本テレビ

 Jリーグ開幕を一週間後に控えた前哨戦という位置付けの、前年度Jリーグ・チャンピオンと天皇杯優勝チームの対戦。藤田の復帰を除けば去年とほぼ同じメンバーで望む磐田に対して、アン・ジョンファンと中西という強力な新戦力を擁する横浜。どちらも優勝候補の一角を担うチームだけに、シーズンを占う意味でも興味深い一戦だった。
 ただ、このところA代表と五輪代表のしびれるような試合を続けて見てきたあとだけに、思い入れのないチーム同士のエキシビジョン・マッチにはどうにも集中し切れない。結局ぼうっとしながら二時間をやり過ごしてしまった。一番印象に残っているのは岡田主審のジャッジの冴えなさだった気がする。どうにもこうにも締まらない。
(Mar 07, 2004)

U-23日本0-1U-23バーレーン

オリンピック最終予選/2004年3月14日(日)/埼玉スタジアム/BS1

 五輪代表、痛恨の一敗。失点するまで負けるなんて考えてもいなかったのに……。
 チームのコンディションは確かに悪かった。UAEラウンドでウィルスにやられて成岡、菊地が戦線離脱。同じく松井、平山も病み上がり。でもって左サイドの森崎浩司は累積警告で出場停止。仕方なく山本監督は根本をチームに呼び戻し、この試合に先発出場させた。けれどなにより痛かったのは、前半早々の闘莉王の負傷退場だろう。これで彼がチームに持ち込んだつきが落ちた気がする。闘莉王は肉ばなれで全治一ヶ月だそうだ。残りニ試合には出場できない。
 ということで林、茂庭、闘莉王、那須、徳永、鈴木啓太、今野、根本、前田、高松、田中達也というスタメンで望んだオリンピック最終予選、日本ラウンドの初戦だったのだけれども。日本サッカーによくあるパターンで、不用意に与えたFKからのこぼれ球をずどんと叩き込まれて負けちまった。ああっ。
 僕はこの試合における前田のトップ下での起用は疑問だった。ときおり素晴らしい動きを見せはするものの、全体的にはあまり機能していないように見えた。それでも山本さんは最後まで前田を使い続けた。なぜ山瀬ではなく前田なんだ? 山瀬も体調不良グループの一員なのだとしたらわかるけれど、そうじゃないのならばこの大事な一戦にこれまで一度もスタメンで使ってこなかった前田をトップ下で起用するのは危険な賭けだろう。
 この日の山本采配にはどうにも納得のいかないことが多過ぎた。後半途中から石川を右サイドで起用したのもそのひとつだ。いくら石川が優れたサイドアタッカーだといっても、そこは右利きの選手。それなりのプレーはしていたけれど、右サイドにいる時のような切れ味はなかった。なんてもったいない使い方をするんだと惜しくて仕方なかった。どうせならばいつもどおり徳永を最終ラインに下げて右で使って欲しかった。
 最後の一枚で鈴木啓太に代えて松井を投入したのもなんだかなという感じだった。前田と二人を並べてみた割には、あまりボールが納まらない。結局せっかくの交替枠二つを無駄に費やしてしまった印象があった。とりあえず納得がいったのは闘莉王に代わってセンターバックに入った阿部だけだ。自分たちのサッカーをやるだけだと口癖のように言い続けている山本さんにしては、いつもと違った采配で墓穴を掘っていたように見えた。
 なんにしろこれで残りニ試合は絶対落とせなくなった。UAEがレバノン相手に引き分けてくれたから、勝っておけばとても楽な展開になったのに。どうにもこのチームはファンをハラハラさせないと気がすまないらしい。
(Mar 16, 2004)

U-23日本2-1U-23レバノン

オリンピック最終予選/2004年3月16日(火)/国立競技場/BS1

 闘莉王に加えて那須を累積警告で欠き、近藤(柏)、阿部、茂庭の3バックで望んだ一戦。さらに2トップは初めてペアを組む国見高出身の先輩後輩、大久保と平山。もうひとつ驚きなのが今野のワンボランチにして、松井と前田を一緒に起用したこと。もしかしたらば前田はボランチ気味での起用だったのかもしれないけれど、注意力不足の僕にはどうなのかよくわからなかった。あとは右サイドが石川、左が森崎、GK林という布陣。
 とにかく大幅にスタメンを入れ替えて望んだ、とりこぼしの許されない一戦だった。なんたって相手はリーグで一番弱いレバノンだし、直前に行われたもう一試合では、バーレーンがUAEに勝ってしまっている。バーレーンは最終戦の対戦相手がレバノンだから、これで勝ち点トップはほぼ確定。日本がオリンピックにゆくには残りニ試合に勝って、得失点の勝負に持ち込むしかないという状況に追い込まれてしまった。こうなればこのレバノン戦で大勝しておきたいところだ。だにしかし。
 さすがに二回目の対戦ともなると相手もこちらを研究してくるのか、そう簡単には勝たせてくれない。日本もそれなりにいい形で攻めてはいるのだけれど、思いっきり引いて守られてしまい、ゴールを奪えない。結局前半は阿部のFKによる一点のみに終わった。
 でもって後半。これまた攻めまくりつつも、いつまでたっても追加点がないと焦れていたらばだ。逆にミスから同点にされちゃうんだ、これが。一瞬、ああオリンピックも終わったかと思った。
 いやいや、でもここでそのわずか1分後に決勝点を決めてくれたのが大久保だった。最高のクロスをあげた前田もあっぱれだった。相手の隙をついて素早く攻め上がったチームの積極性も素晴らしい。でもやっぱり今日の主役は大久保。このゴール以外にも再三惜しいシュートを打って見せてくれた。ひさしぶりに大久保らしいふっきれたプレーが見られてとても嬉しかった。
 さあこれであと残すは一試合のみだ。UAEに勝てばアテネ、負けたり引き分けたりすればジ・エンドだろう。わかり易くてよろしい。きれいに決めて、無念にもベンチを温めている闘莉王を日本人としてアテネに連れていってあげて欲しいと思う。五輪にいけない悲劇の人は高橋尚子と長嶋さんだけで十分だ。
(Mar 16, 2004)

U-23日本3-0U-23アラブ首長国連邦

オリンピック最終予選/3月18日(木)/国立競技場/テレビ朝日

 祝オリンピック出場決定! 最終予選の最後の一戦は、これまでで一番楽な一戦になった。なんだよなあ、こういう試合を最初からやってくれていれば、なにもここまで苦労しなくても済んだのに。本当にこの試合はまったくと言っていいほど危なげなかった。
 前の試合で素晴らしい働きをした大久保。UAEラウンドで日本を救う活躍を見せた田中達也。そしてここまでゴールこそないものの、高さでの貢献度は高い平山。戦略的に平山を外すことはないと思ったので、彼とペアを組ませるのは大久保と田中どちらなのかというのがこの試合の関心のひとつだった。加えてトップ下の起用は松井か山瀬か(まさかこの局面で前田はないだろう)。一体どういう組み合わせで最後の大一番に臨むか。この興味深い課題に対して山本監督が出した答えは、なんとトップ下を省略した大久保、田中、平山の3トップだった。やってくれるぜぇ。
 FWを三人起用したから攻撃的な布陣かというとそうでもなく、この試合ではちゃんとボランチは鈴木啓太と今野の二枚だったし、右サイドは石川ではなく徳永だった。とにかく大久保、田中という積極性では日本屈指のFW二人に、これまた日本一の高さを持った平山、この三人でガンガン突っかけていってもらって、あとのメンバーはしっかり守るというコンセプトだったのだろう。実際に徳永なんかはまったくといっていいほど攻め上がりがなかった。左サイドの森崎も深くまで攻め上がらずアーリークロスを上げるいつものプレースタイルだし(彼の場合はあれでいいのか)、この試合では普通の意味でのサイド攻撃は皆無だった。その代わりに田中がやたらと左サイドから突っかけていっていたけれど。
 結局勝負を決めた3点はどれもセットプレーからだった。UAEではまったくといっていいほどセットプレーが点に結びつかなかったというのに、ここへ来て非常にセットプレーの精度が上がったのは、やはり阿部のお陰だろう。前の試合でも得点にこそならなかったものの、いくつかどんぴしゃのヘディングがあったし。阿部のキックの貢献度は計り知れない。そういう意味では闘莉王の負傷がプラスに働いたことになる。
 オリンピック本戦でのこの二人の使い方は結構頭が痛いんじゃないだろうか。これだけの仕事をされてしまうと闘莉王が戻ってきたからといって阿部を下げるのはもったいなさ過ぎる。けれどチームに対するキャラクター的な貢献を考えると闘莉王を使わないことはないだろう。そうすると阿部を左右どちらかへ回すか、それともボランチで起用するか。ボランチではこの最終予選の活躍からして今野は外せない(本当に今日の試合での彼の働きぶりには笑った。とても唯一全試合フル出場した選手とは思えない。すご過ぎる、今野)。そうなるとキャプテンの鈴木啓太を外すことになる。それもなんだか残念だ。一体どういう形で本番を戦うことになるのか、とても興味深い。
 とにかく前半にそんな阿部のFKとCKから那須と大久保のゴールが決まり、後半早々にはFKのこぼれ球から大久保が二度のシュートで豪快に三点目をゲットして試合を決めた。ライバルのバーレーンは前半をリードして折り返したにもかかわらず、どういうわけか後半同点ゴールを決められて、意外や意外、そのままドローで試合終了。結局勝ち点13で日本がグループ単独トップを獲得、オリンピック出場を決めた。
 それにしても今日のUAEは弱かった。後半早々に10番のマタルが大久保との接触プレーからちょっと可哀想なレッド・カードで退場になってしまっては打つ手もないって感じだった。ホームでのあの強さは一体なんだったんだろうか。そういう意味ではやはりバーレーンが一番の強敵という日本サッカー協会の分析は正しかったらしい。おみそれしました。もうひとつのレバノンは気がつけば日本ラウンドでは一敗ニ引き分け。日本戦でも健闘めざましかったし、グループ一弱いとか書いて悪いことをしたかもしれない。
 ということでハッピーエンドを迎えたアテネ・オリンピック・サッカー、アジア最終予選Bグループだった。さあ次は8月のアテネだっ。
(Mar 18, 2004)

FC東京1-2鹿島アントラーズ

ナビスコ杯・グループD/2004年3月27日(土)/味の素スタジアム/MXテレビ

 Jリーグ開幕から二週間たったにもかかわらず、今年は他のチームに比べてこれといった話題性がないため、ここまでテレビ放送がないアントラーズ。ヤマザキナビスコカップの初戦のこの試合も、当然のことながら期待はしていなかった。ところが対戦相手がFC東京だったため、録画ではあったけれどMXテレビで放送がある。ということで04年バージョンのアントラーズをようやく見ることができたのだった。MXテレビ様々。
 でもまあ公式戦とはいっても、そこはリーグ戦の合い間を縫って開催されるナビスコ杯。今週のW杯予選マレーシア戦を控えて代表合宿に本山と曽ヶ端の二人を取られている。本来ならば小笠原もいないはずなのだけれど、彼は前回合宿でのキャバクラ事件で懲罰を食らった形で、今回は代表に呼ばれていない。おかげでこの試合に出場できたのはいいのやら、悪いのやら(って、いいはずがないか)。
 話は逸れるけれど、あの事件で問題となった八人は地元選手の案内でキャバクラへ行ったという。合宿地が鹿島であるのだから、つまりその地元選手というのは小笠原なんだろう。彼がそういう店にゆくというのはとても意外だ。結婚が早かったから、家庭を大事にしてそんな店には寄りつかないタイプの選手かと思っていたので、ちょっと残念。
 その点、誘われたのに断わったという本山はえらい。先週のエスパルスとのリーグ戦では2得点に絡み、チームを勝利に導いている。今年の彼は代表のボーダーライン上にいることもあって、モチベーションも高そうだし、よりよいプレーを見せてもらえるんじゃないかという期待がある。だからこの日はプレーを見るのを楽しみにしていたので、出場していないのはかなり残念だった。仕方ないから代表のマレーシア戦での出場に期待しよう。
 一方の小笠原はいまひとつ精彩を欠いていた。ボール支配率でFC東京がアントラーズを上回ったのは、彼の不出来が大きいのではないかと思う。あまりに存在感がなさ過ぎる。代表落ちでめげている場合じゃないだろう。もっと素晴らしいプレーを見せて、ジーコに選ばなかったことを後悔させてやるくらいの気迫を感じさせて欲しかった。
 そういう意味では本山の代わりにピッチに立った野沢もそう。先制点のアシストこそ決めたものの、全体としてはいまひとつピリッとしなかった。小笠原、本山とポジションを争う厳しい立場はわかるけれど、こういう機会にきちんと存在感を示せないようでは五輪代表に呼ばれないのも当然だと思う。
 なんにしろ勝ちはしたけれど、アウェーということもあってか、内容的にはいまひとつという試合だった。前半の早いうちに2得点できていなければ、どうなっていたか怪しい。そういう意味では平瀬、深井のツートップによる得点は貴重だった。いつもはチャンスは作れど決定力不足で決められないという日本ではお馴染みの展開が多いアントラーズだけれど、この試合では前半の数少ないチャンスを実に見事にものにしてくれた。相手GKはこの試合がデビューとなるルーキーだったようなので、経験値不足に助けられた部分もあったかもしれない。なにはともあれ二人が得点を上げたのは今後のリーグ戦に向けても気分的に大きいと思う。
 攻撃陣の話ばかり書いたけれど、今年のアントラーズのポイントはディフェンスラインにある。なんたって大黒柱の秋田、相馬を放出して若返りを狙っているのだから。そういう意味でも一番の注目はガンバ大阪から移籍してきて左サイドバックにコンバートされた新井場だ(なぜガンバが手放したのかとても不思議)。攻撃のセンスには疑問の余地がない彼が、DFとしてどれだけ安定した仕事をしてくれるかによって、チームの成績も随分と左右されることになるだろう。アントラーズの左サイドでいい仕事ができれば、それは代表への招集へもつながってゆくだろうし、彼にとっても大きなチャンスだ。がんばってアレックスのポジションを脅かす存在になって欲しいと思う。
 もう一人の注目、秋田の後釜として期待されるセンターバックの金古はまだスタミナに問題があるのか、この試合ではベンチにも入っていなかった。センターバックは大岩と池内のコンビだった。おもしろかったのは後半途中から池内に代わってピッチに入った大卒のルーキー、岩政。186センチという長身はだてではないらしく、やたらとヘディングが強かった。これはちょっと金子や羽田(どこにいるんだかって感じだけれど)も、うかうかしていられなさそうだ。
 うかうかしていられないと言うならば、本来ならば相馬が抜けたあとを埋める存在だったはずの石川竜也もそうだろう。ガンバでは左ウィングだった新井場にレギュラーを奪われてしまうなんてかなりの屈辱じゃないかと思う。でもわざわざ新井場をとってきたということは、彼はまだ鹿島の左サイドを任せられる人材ではないとフロントか首脳陣が判断したということなのだろう。実際に去年のプレーを見ている限りでは、DFとしてはまだまだかなという印象があった。小野や稲本とともにワールドユースで準優勝した時のメンバーなのだから、このままで終わっては情けないだろう。より一層の奮起を期待したい。
 それにしても鹿島の若手DFには伸び悩んでいる選手が多い気がする。この石川にしろ、金古や羽田にしろ、入団前の評判に比べてあまりにその後の活躍がさびしい。どこかチームとして問題があるのかもしれない。その辺は秋田や相馬の抜けた今年以降、徐々にはっきりしてゆくだろう。長い目で見守りたいと思う。
 ボランチは今年も人材が豊富だ。この試合では本田、フェルナンドのコンビだったけれど、リーグ戦では青木や熊谷もスタメンを務めている。どうもトニーニョ・セレーゾの采配はフェルナンドともう一人という組み合わせが中心らしい。中田浩二が復帰してきたら彼とフェルナンドを中心に回ってゆくことになるんだろう。なんにしろ誰が出ても安心して見ていられる贅沢極まりない状況。トニーニョ・セレーゾの場合はこのポジションの出身のせいか、ボランチの使い方にはかなりの気配りを見せているので、こんな風に少しばかり過剰供給気味なくらいが丁度いいのかもしれない。
 あとこの試合で初めて見ることになったのが、後半途中から深井に代わってピッチにたった新加入の長身FW、ファビオ・ジュニオール。代表で平山がよく形容されるのと同じように、高さがある割にはボールさばきが柔らかなタイプで今後に期待できそうだ。
 というようなあたりがユニフォームも新しくなった04年版アントラーズの雑感だった。試合の方は正直なところ、近くで愛娘がわいわいと騒いでいたおかげであまり集中しきれなかった。相手のFC東京は五輪代表の石川、茂庭、今野に加えて、特別指定選手として徳永まで出場しているという、時期的な話題性という点ではJリーグでピカ一のチーム。無事に勝ててなにより、という一戦だった。
(Mar 28, 2004)

シンガポール1-2日本

W杯アジア一次予選/2004年3月31日(水)/シンガポール/テレビ朝日

 この前の合宿中に無断外出してキャバクラへ行ったという八人(含む小笠原。くぅ、情けない)をメンバーから外して望んだシンガポール戦。とは言っても中盤から前は全員海外クラブに所属している選手だ。合宿ってなんのためなのっていう気がしなくもない。
 僕は中盤の四人を一緒に使うのが悪いとは思っていない。彼らは日本でもっとも優れたプレーヤーだからこそ海外から呼ばれていっているわけだし、その才能には誰も異存はないだろう。移動に時間がかかって合流は直前、コンディションも不十分の海外組を使うよりは、元気な国内組の選手を使った方がいいんじゃないかという意見もある。でも名プレーヤーが試合の前日にならないと合流できないというのは強豪国ならばどこでも抱えている問題だ。そうした問題に悩まされるってことは、日本も少しだけ強い国に追いつき始めた証拠だと思う。それに合宿に参加してちゃんとコンビネーションを磨く時間が取れないからこそ、実戦で一緒にプレーする時間を少しでも長くとらせたいというのがジーコの思惑なんじゃないだろうか。この四人を一緒にプレーさせていって、それでやはりマッチしないとか、彼らだけでは足りないと思うところが出てきたならば、ジーコも考えを変えて他の選手を試すことになるだろう。だから今はこれでいいと僕は思っている。
 そもそもコンディションやコンビネーションに難があったところで、シンガポールのように弱い国が相手ならば問題なく勝つことができるはずだ。そう思えば四人全員が招集できたこういう機会に国内組を使う方がナンセンスだと思う。結果、それで苦戦はしたけれど、これも血となり肉となるはずだ。もっと強い国を相手にするのならば、もうちょっとジーコだって考えるだろう。というか、考えてもらわないと困ってしまう。
 ということで中盤の四人に関してはオーライだと思っているのだけれど、ことFWに関してはまったく納得がいっていない。この試合で柳沢と高原がスタメン出場したのが海外でプレーしているからってだけの理由だとしたら、ジーコには監督を辞めてもらわないと仕方ないと思う。はっきりいって今の日本にはことFWに関しては彼らよりもいい選手がもっといるだろう。少なくてもこの試合の二人よりは大久保の方が上じゃないのか。キャバクラ事件で久保を呼べなかったのは痛かった。でも久保がいたとしてもジーコは柳沢を選びそうな感じがする。それがやりきれない。五輪代表で大久保や田中達也の生きのいいプレーをたっぷりと見たあとでは柳沢のプレーはとにかくストレスを感じさせることこの上なかった。とにかくあの終始ワンタッチでポストばかりやっている姿勢にはうんざりしてしまう。ちゃんと自分でボールをキープして敵に向かっていこうという姿勢がないのには、ほとほと愛想が尽きている。高原にしてもラッキーな先制点こそ上げはしたけれど、全体的に動きに精彩を欠いた。やはり試合に出ていない影響だろうか。二人とも試合に出れないのならば、海外にこだわらないで帰ってきた方がいい。そういう意味ではベルギー・リーグとは言え、そこそこ出番をもらっているらしい鈴木隆行が、途中出場ながら三人の中では一番いい動きを見せていたのが印象的だった。
 駄目だったといえば俊輔もこの試合は全然駄目。どこにいたんだか、わからない。全然ボールに触れていなかった。FKも二本とも枠を大きく外していたし、やはり故障明けの上にクラブでも出番がないんじゃ、あれも当然なのかもしれない。
 ということでワールドカップ予選の二試合目、アウェーでのシンガポール戦。試合開始前のアップだけで中田が汗みどろになっているのを見て、こりゃあ相当暑そうだ、今日はもしかしたら厳しい試合になるかもしれないと思ったらば案の定。攻めに攻めるのに前半は一点しか点が取れず、そのうちに疲労がたまって動けなくなってしまい、後半途中で同点に追いつかれるという悲惨な展開になる。その後、途中出場の藤田の決勝ゴールでなんとか勝ち点3はキープしたけれど、とても納得のゆく出来じゃなかった。試合後のインタビューで中田が開口一番「最低の試合でした」と言っていたのも当然という内容だった。試合が始まった途端、あまりにシンガポールが弱そうなことにびっくりしたものだったけれど、その弱い相手に試合終了の間際には立て続けに攻め込まれてしまっていた。本当に困ったものだと思う。
 印象的だったのはキャバクラ事件で代表を外された山田暢久に代わって右サイドに入った加地だろうか。なかなか積極的に攻撃参加していて頼もしかった。山田が代表では持ち前の攻撃力を発揮しきれていない感があるので、加地の積極性はなおさら好印象だった。まあ失点は彼のサイドからのミドルだったので、プラスマイナス0って気もするけれど。
 攻撃参加ということで言えば、伸二もやたらと元気だった。彼が今回の試合に招集されていると思っていなかったので、ひさしぶりにプレーが見られただけで嬉しかった。
(Apr 02, 2004)