2004年6月のサッカー

Index

  1. 06/01 △ U-23日本1-1U-23マリ
  2. 06/01 △ イングランド1-1日本
  3. 06/09 ○ 日本7-0インド (W杯・一次予選)
  4. 06/19 ○ 鹿島1-0磐田 (J1・1stステージ第14節)
  5. 06/26 ● 横浜M1-0鹿島 (J1・1stステージ第15節)

U-23日本1-1U-23マリ

2004年6月1日(火)/札幌ドーム/テレビ朝日

 さあ、オーバーエイジ枠を使うか、使わないか。山本監督が決断を下す前の最終選考とも言うべきマリ戦。マリというのはまったく馴染みがない名前の国だけれど、なんでもアフリカ予選で前回オリンピック優勝国のカメルーンを蹴落とし、本戦出場権を獲得した国なのだそうだ。つまりオリンピックでは予選から顔をあわせる可能性のある国ということになる。そんなチームとこういう時期にマッチアップできるなんて、ちょっと珍しいんじゃないかと思った。
 とにかくそんなわけで名前も知らない国だから試合が始まる前までは楽勝なのかと思っていたのだけれど、そんなわきゃない。なんたって相手はカメルーンを下したって国だ。アフリカ勢ならではという、身体能力の高い、手強い相手だった。しかも実際にオリンピックではライバルになるかもしれないという関係だ。加えて両国とも選手は本大会に出られるかどうかのアピールに懸命という時期。親善試合とはいっても自然と熱が入る。おかげで思いがけない見ごたえのある試合となった。
 スタメンは黒河、茂庭、 那須、北本(神戸)、駒野、鈴木啓太、阿部、根本、山瀬、高松、坂田。こりゃまた前の試合と随分と入れ替わっている。阿部はボランチだし、那須が3バックの真ん中。この二人なんかは今後を睨んでのバリエーションとして試されている感じだけれど、北本、駒野、根本、山瀬、高松、坂田といったあたりは、本当にこれがラスト・チャンスという起用だ。これで頑張れないようではオリンピックになんか出られるはずがない。実際にこの日のプレーを見る限りでは、山瀬、根本の二人はアウトだろう。FW二人や駒野、北本などは十分アピールできていたと思う。でもじゃあそれでオリンピックへ行けるかというと疑問符がつく。やっぱりこういう選考って難しいと思う。
 試合はスコアレスで前半を終了、後半マリにセットプレーから先行を許すものの、その後途中出場の今野、松井、大久保の三人の間に見事なパスが通り、これを大久保が力強く決めて同点に追いついた。本当にこの同点ゴールの場面の見事さったらばなかった。今野の正確なフィード、松井のトリッキーなラストパス、それをズトンと決めた大久保の決定力。どれにも惚れ惚れとしてしまった。いいものを見せてもらいました。
 その後も攻め続けつつ結局勝ち切れなかったのは課題だけれど、それでもビハインドを跳ね除けただけでも十分価値のある試合だったと思う。前のA代表と違ってファールが少なかったのも好印象だった。やっぱりこの世代は平均的な技術のレベルでは歴代第一位だと思う。オリンピックが楽しみだ。
(Jun 01, 2004)

イングランド1-1日本

2004年6月1日(火)/マンチェスター/日本テレビ

 ベッカム、オーウェンら、豪華メンバーを揃えたイングランド代表とのアウェイでの一戦。相手は欧州選手権の直前だけあって、親善試合とはいえフル・メンバー。世界のトップ・クラスの強豪国相手にどれだけできるか、日本代表のここまでの成長の度合を計るにはもってこいの対戦だった。
 スタメンは前のアイスランド戦と一緒。不用意なファールを重ねてピンチを招くことの多かったディフェンス面の修正が注目されたものだけれど、その辺はやはり選手たちも気合いの入り方が違ったのだろう。まさしくアウェイという不利な判定でファールを取られた場面はいくつかあったけれど、全体的に見事な集中力でイングランドの猛攻を凌いで見せてくれた。
 それにしても序盤は圧倒的な劣勢。この前のU-23のトルコ選抜との試合でもそうだったけれど、イングランドと日本ではパスのスピードと精度があきらかに違う。イングランドのボールはズバッとこちらの痛いところへ小気味よく入ってくる。それと比べて日本代表のパスはやたらとモタモタした印象で、なんともスピード感がない。この辺のプレーにおける体感速度の向上が今後の課題だと思った。
 とにかくイングランドの猛攻の前に日本は防戦一方で試合は始まった。そしてようやくその一方的な勢いが衰えて試合が落ち着いてきたかなという時間帯に先制点を許してしまう。イングランドの中盤の選手の放った強烈なミドル・シュートを楢崎が前に弾いたところに、かのオーウェンがしっかりと詰めていて、万事休す。楢崎を責めるのは酷かもしれないけれど、さあこれから反撃だという時間帯だっただけに、真正面のボールをきちんとキャッチできなかった楢崎のプレーは残念だった。
 ただ前半をこの失点だけで乗り切れたのは大きな収穫だったと思う。圧倒的に攻め込まれてはいたけれど、絶体絶命のピンチというのはそんなになかったし、劣勢は劣勢として守備面ではなんとか抑えきれていた。問題は守るばかりで全然攻め手を欠いたこと。2トップにまったくといっていいほど、ボールが入らなかった。これには前のイングランド戦同様、中村の低調が響いていたと思う。ボランチやDFからのロング・ボールはことごとく相手にカットされてしまっていたし、トップ下の選手がほとんどゲームに絡まないようでは、攻撃が形にならないのも当然。前半における久保と玉田の見せ場はそれぞれ一度ずつという印象だった。ただそれらがそれぞれに、おっと思わせてくれるような切れのあるプレーだったのが救いだ。得点には絡めずに終わったけれど、やはりこの2トップはいい。ここ数年の代表の2トップとしては期待度はナンバー1だと思う。
 後半に入るとゲーム内容は一変する。(イングランド監督曰く)疲れの出始めたイングランド代表に対して、不思議と持久力のある日本代表は見応えのある反撃を開始する。これには俊輔の復調が大きかった。中盤でのプレッシャーが弱くなったことも影響しているのだろうけれど、後半の彼はアイルランド戦やこの試合の前半とは見違えるような存在感のあるプレーを見せてくれた。同点ゴールの場面も彼の視野の広さとパスセンスが十分に生かされていと思う。中村→アレックス→小野と渡ったボールは、ものの見事にイングランドのディフェンス・ラインを切り裂き、ゴールネットを揺らした。イングランドのような強豪相手に流れの中からこれほど見事に相手の守備陣を崩してゴールを奪うシーンを見たのは初めてのような気がする。前日のU-23の大久保のゴールと同じように、実に惚れ惚れとするようなゴールだった。
 その後は、2トップを柳沢と隆行に入れ替えただけで最後まで戦った日本代表だったけれど、この選手交替後にはこれといった場面は演出できなかった。どうも久保と玉田が下がってからはワクワク度が下がってしまったような印象だった。隆行はあいかわらず相手DFを背負っては強さを発揮するものの、ゴール前でのプレーは皆無に近かったし、柳沢ときたらば、なにをしに出てきたのかわからなかった。隆行にはディフェンシヴな試合での前線からの守備要員的な役割で生き残れる可能性はあるけれど、柳沢はこれから先、次第に生き残りが厳しくなってゆきそうな雰囲気がある。今のままではまずいだろう。今一度の奮起に期待したい。
 試合終了間際に稲本が全治三ヶ月の骨折という重症を負うという悲しいプレーがあった。イングランド・リーグでプレーしている稲本が、そのイングランドとの親善試合で来季の契約にも大きく影響するだろう負傷を追ってしまうなんて、なんとも皮肉だ。一日も早く復帰してくれることを願ってやまない。
 なにはともあれ中田英寿不在でもイングランドのような強豪相手にこれほどのプレーができるということを示した上で、とても大きな意味を持つドローだった。来週のW杯予選のインド戦でも、この力がフロッグではないことを証明するような試合を見せて欲しい。
(Jun 06, 2004)

日本7-0インド

W杯アジア地区一次予選/2004年6月9日(水)/埼玉スタジアム/BS1

 仕事上での多忙を口実に怠けているうちに試合から既に十日も過ぎてしまった。今さらの感があるW杯一次予選のインド戦は、骨折した稲本のポジションに福西、そして足を傷めたという楢崎の代わりに川口が起用されたのを除くとあとはイングランド戦と同じメンバー、同じフォーメーションだった。完勝というスコアではあるけれど、見ている分にはそれほどやってくれた!という感じがしない。やはりアジア地区での一次予選ならばこれくらいのスコアで勝ってくれて当然。逆にちょっとばかりもたつき過ぎていたような印象さえあった。
 この試合でインパクトが強かったのはやはり久保の先制ゴール。後方からのアレックスのロング・ボールに、体勢を崩しながらもダイレクトであわせた。あの姿勢から瞬時に判断して左足のインサイド・ボレーを決めて見せてくれたのには痺れた。今の久保は手がつけられない。これだけの決定力を誇るストライカーを手に入れたという事実がもう嬉しくて仕方ない。ビバ、久保。これからも応援してるぞっ。
 もう一人のストライカー、玉田もゴールこそないものの、あいかわらず溌剌としたプレーを見せてくれている。この試合ではひさしぶりにゴールをあげたと思ったら、後半から久保と変わって出場していた鈴木にあたってコースが変わっていたので、鈴木のゴールと記録されてしまった。あれはちょっと気の毒だった。本人もがっかりだったようだ。彼は試合後のインタビューでもゴールが欲しいと素直に口にしている。チームが勝てば自分が決めなくても、なんて発言ばかりの柳沢よりもよっぽど共感できる。なんにしろこの2トップには今までにはなかった期待感が抱ける。これからもしばらくはこの二人でいって欲しいと思っている。
 それはそうと、この試合でもジーコは後半の途中からフォーメーションを4-4-2に変更してきた。この相手にディフェンシヴな3バックのままはもったいないという気分になったんだろう。公式戦ではあったけれど、点差が開いていて、テストをし易い状況でもあった。攻撃の枚数を増やして積極的に点を取りに行こうという姿勢には共感できた。
 驚いたのは、この変更にともないキャプテン・マークを託していた宮本をベンチに下げたことだ(ちなみに代わりに入ったのは小笠原)。このところ中澤の出来がいいので、彼と坪井のコンビを試してみたくなったんだろうか。ディフェンス・ラインの要、宮本を試合の途中で下げるという采配には、なんだかもやもやした気分にさせられた。特別落ち度があったわけではないので、宮本本人も気分は複雑だろう。あいかわらずジーコのやることには、ちょっとしたずれを感じる。
 とにかくひさしぶりに楽な試合だった。ゴールの内訳は最初が久保のボレー、二点目も彼が高さで競り勝ったボールに福西が飛び込んできて泥臭く決めたもの。次が俊輔のFK。後半に入って鈴木のごっつぁんゴールがあり、中澤がセットプレーからヘッドで2点、その間にゴール前の混戦から小笠原が一発。考えてみるとミドル・シュートが一本もない。こういう相手だったら、ミドルで2、3点とれそうなものだ。その辺にゴールへの意識の低さが出てしまっているのかもしれない。
 試合の直後は7点も取ったのだし、これでこの第一次予選も随分楽になっただろうと思った。ところがその後、グループ・リーグでのライバル、オマーンもまったく同じスコアでシンガポールに勝っていることが判明。しかもオマーンはその前の試合ではこのインドをアウェイで5-1で下している。得失点差の首位はオマーンじゃないか。つまりもしこのままの状況でいって、万が一オマーンとの二戦目で負けるようなことがあると、予選敗退ということになってしまう可能性が大。しかもその試合はオマーンのホーム・ゲーム。うーん、まだまだ予断を許さないワールドカップ一次予選だった。嫌な感じだ。
(Jun 18, 2004)

鹿島アントラーズ1-0ジュビロ磐田

J1・ファーストステージ第14節/2004年6月19日(土)/カシマスタジアム/BS1

 この試合にジュビロが勝って、夜の試合でF・マリノスが負ければファースト・ステージの優勝が決まるという重要な一戦。アントラーズの方は既にタイトルの可能性はなくなっているし(勝ち点10も離されて可能性をうんぬんすること自体恥かしい)、モチベーションではジュビロの方が高いはずだ。それでもちょっと前までは二強と呼ばれていたライバル同士。鹿島には磐田にだけは簡単に負けるわけにはいかないという意地がある。そんなチームとこの時期に対戦する羽目になったジュビロこそいい迷惑だった。
 鹿島のスタメンは曽ヶ端、内田(名良橋は前節でイエロー2枚をもらって出場停止)、金古、大岩、新井場、フェルナンド、中田浩二、本山、小笠原、野沢、平瀬。ファビオ・ジュニオールが故障で戦線離脱したせいで(手術まで受けたそうだ)、FWに野沢を使わざるを得ないという状況で、あいかわらずその部分だけは駒不足の感があるけれど、それ以外はほぼベスト・メンバーが組めるようになった。野沢もこのところ腰を痛めて欠場していた本山に代わっての活躍が評価されてのスタメン起用だろう。彼にしても基本的にスタメンに起用されて当然のポテンシャルを持った選手だ。十八歳の増田にスタメンを奪われていたんではプライドが許さないだろう。そういう意味ではいい意味でチーム内に競争原理が働いている気がする。この試合では後半途中から深井もピッチに立った。鈴木隆行のチームへの復帰も決まったみたいだ。ここまで戦力が戻れば、セカンド・ステージでの巻き返しは十分期待できそうだ。とても楽しみになってきた。
 ゲームの方は五分{ごぶ}以上の感じで鹿島優勢ながら、ロス・タイムまでスコアレス。とりあえず引き分けで優勝阻止かと思ったらば、ロス・タイムにCKから途中出場の岩政が見事なダイビング・ヘッドを決めて、これが決勝点となり、磐田の地力優勝の望みを絶つことに……。夜の試合で横浜が勝ったので、これで磐田は首位陥落。ちょっとばかり気の毒なことをした。まあ、このお詫びは来週F・マリノスを破ることで果たしてくれるだろう。そう願う。
(Jun 20, 2004)

横浜F・マリノス1-0鹿島アントラーズ

J1・ファーストステージ第15節/2004年6月26日(土)/横浜国際競技場/BS1

 ファースト・ステージ最終節。前節アントラーズの援護射撃を得て首位に踊り出たF・マリノスがそのまま優勝を決めるのか、アントラーズが意地を見せるのか、注目の一戦だった。ところがこれが鹿島ファンにとっては期待にそぐわないゲームになってしまう。
 この日の試合でトニーニョ・セレーゾ監督は3バックを試した。相手の強力なサイドアタッカー、ドゥトラと田中隼磨(この頃は佐藤由紀彦をサブに押しやって強力に売り出し中)を抑えようという作戦だ。新井場の守備力に対する不安もあるだろう。けれど慣れ親しんだ4バックでないマイナスも大きかったんじゃないだろうか。両サイドは名良橋と新井場で、3バックの右に内田が入り、トップ下にオガサ、2トップが本山と平瀬という布陣。結局攻撃の枚数を一枚減らしたことになり、その影響が少なからずあったように思う。両サイドの二人の攻撃参加から決定的なチャンスはいくつか作りはしたものの、2トップが上手く機能しているようには見えなかった。まあ、それでも全体的に勝ったマリノスよりもアントラーズの方が内容は良かった気はする。
 負け惜しみに聴こえるかもしれないけれど、正直なところ、試合の行方を左右したのは吉田主審の判定だと僕は思った。後半早々、キーパーとの接触プレーで本山が二枚目のイエローカードをもらい退場してしまったことで、アントラーズの勝ち目はほぼなくなった印象だった。後半出場の奥が作ったチャンスをアン・ジョンファンに決められて先制された時点で勝負あり。しかもその後、新井場の決定的なフリーのチャンスをオフサイドの誤審で取り消されてしまったのだから(あれのどこがオフサイドだ)万事休す。せっかくの大一番がなんとも後味の悪い結果に終わった。
 しっかし本山の退場にはやたらと腹が立った。本山に対してではなく、レフェリーに対して。最初のイエローをもらった時に今日はまずいかなという気はしたんだ。あのファールだって、マイ・ボールをドゥトラに奪われて、懸命にディフェンスに戻ろうとしたところ、後から相手の足を蹴ってしまったという形だった。決して悪質な故意のファールではなかったし、カウンターにしてもそれほど好機という場面ではなかった。二枚目なんて本山のプレーはちゃんとボールへ向かっている。逆にぶつかってきたのは榎本の方だ。それなのに本山にイエロー。もうめちゃくちゃレベルの低い判定でうんざりした。
 実は試合が始まる時にレフェリーが吉田という人だと知って、嫌な予感はしていたんだ。どうにもこの人は印象が良くない。日本のレフェリーは全般的に印象が良くないけれど、この人と柏原という人は特別悪い。そんな人がこの大一番で笛を吹くなんて……。日本はもっともっといい審判の育成も必要だと思う。
 とにかくジュビロには申し訳なかったけれど、ファースト・ステージは横浜F・マリノスの優勝に終わった。これで横浜は去年の完全制覇に続き、2ステージ連続優勝の快挙。圧倒的な強さは感じないのに、これほどの成績を上げているというのは正直なところ不思議だ。いずれにせよファースト・ステージの成績を見る限り、セカンド・ステージも横浜と磐田の二強が優勝の最有力候補だろう。鹿島は結局5位に甘んじてしまった(涙)。2ステージ制も今年で最後だ。得意と言われるセカンド・ステージでの巻き返しに期待したい。セカンド・ステージの開幕は8月14日の柏戦。
(Jun 27, 2004)