浦和レッズ0-1鹿島アントラーズ
J1第1節/2005年3月5日(土)/埼玉スタジアム/TBS
1シーズン制、18チームによるホーム&アウェイの総当り戦となった2005年のJ1の開幕戦。対戦相手は優勝候補の一角、レッズ。わくわくするというよりは、ハラハラしてしまう心境の方が強かった。結果から言ってしまえばアウェイでの白星発進ということで上出来なんだけれど、内容的には誉められたものではなかったと思う。この調子では今年もあまりいい成績は期待できそうにない。まあ三冠を達成した年もそんな感じだったから、始まったばかりであまり悲観的になっても仕方ないのかもしれないけれど……。いずれにせよ優勝候補を実力で蹴散らして勝利を勝ち取ったと言ったような満足感には程遠い内容の一戦だった。
悲観的になってしまう要因は随所にある。まずはフランスへ移籍した中田浩二の穴を埋める青木の出来。彼の場合、プレー自体が非難されるほど悪かったとは思わない。ただし前半でイエローを貰い、後半にもイエローが出てもおかしくないようなラフなプレーをしていた点が問題だ。最初のカードはレフェリー(吉田さん)の過剰反応だと思うけれど、二枚目は逆に温情で見逃してもらったと言っていいプレーだった。ボランチはカードをもらいやすいポジションだけに、彼のプレーがそうした面での安定感を欠いているのは気にかかった。
次が髪を金髪に染めた岩政──あ、ちなみにこの日のスタメンは曽ヶ端、内田、岩政、大岩、新井場、本山、フェルナンド、青木、小笠原、アレックス・ミネイロ、鈴木という布陣。話は逸れるけれど、昔からアントラーズにはどうしてああいう風に似合わないカラーリングをする選手が多いんだろう。チームの関係者に、流行におもねるだけの、ファッション・センスのない美容師がいるんじゃないだろうかと勘繰りたくなる。
なにはともあれそんな金髪の岩政くんも、青木と同じくプレーに安定感を欠いていた。なまじ強力なFWを揃えるレッズが相手だから、なおさら危なっかしさが目についた。去年はもっと良かった気がするんだけれど、いったいどうしたんだろうか。開幕戦で気負っていた部分があるにしても、なんとも危なっかしくて見ていられなかった。ペアを組む大岩が随分と頼もしく思えたくらいだ。今後の鹿島のディフェンス・ラインを背負ってゆくはずの男に、今さら秋田が恋しくなるようなプレーを見せてもらっては困る。
攻撃陣に目を向けると本山。彼はあまりに存在感がなさ過ぎた。なまじ小笠原が攻守に渡っていいプレーを見せてくれているだけに、本山の存在感のなさにはがっかりさせられた。やたらとあたりに弱いのも気にかかる。ころころと倒れてばかりいるから、後半はその辺の弱さをレフェリーに見切られて、倒れても笛を吹いてもらえなくなっていた。1対1で負けない強さをつけない限り、本山は世界とは戦えないと思う。あとみっともないから倒されるたびにカードをアピールするのはやめてもらいたい。
もう一人がっかりさせられたのが新外国人アレックス・ミネイロ。この人には「稲妻の子」というニックネームの片鱗さえ見せてもらえなかった。来日したばかりでコンディションがまだまだなのかもしれないけれど、それにしてもいいところがひとつもなかった印象だ。この試合を見た限りでは、とても得点力不足を解消する決め手となる選手とは思えない。ファビオ・ジュニオールの方がまだファースト・インプレッションは良かった。今後の思いがけない活躍を願ってやまない。
以上に加えて両サイドバックの攻撃参加がほとんどなかったこともマイナス要因だし、攻守に渡ってここまで問題が山積だと、どうして勝てたのか不思議になる。実際に後半の途中からは、退場で一人少ない相手に一方的に攻めまくられていた。一人分の人数差が丁度いいハンディだというみたいだった。正直なところ、あの退場がなかったらば逆転負けを喫していたかもしれないと思う。勝ったにもかかわらず、試合後の小笠原やトニーニョ・セレーゾの顔に笑顔がなかったのももっともという内容だった。
そんなマイナス・イメージばかりの試合ではあったけれど、とりあえず小笠原、曽ヶ端、そして鈴木隆行のプレーには満足できた。特に鈴木はゴールを決めたのみならず、相手のアルパイの退場を誘ったりもして──倒れたのは鈴木のシミュレーションっぽくも見えなくないけれど(なんたって倒れるの上手いから)、相手の顎に手をかけている時点でアルパイのカードは当然──チームの勝利に大いに貢献していた。彼の場合「ファールを貰うのが信条」みたいなイメージがあって良く思わない人もいるだろうけれど、そうしたダーティな部分を含めて、非常にチームへの貢献度の高いFWなのは認められてしかるべきだと思う。年とともにきちんと成長の跡を見せている点も評価できる。あれでも僕が最初に見た頃から比べると随分と上手くなっている。今年はより一層の成長を見せて、チームのためにがんばってもらいたいもんだ。
なにはともあれ去年二敗を喫したレッズを相手に、アウェイでの白星発進は上出来だ。そのレッズはほぼ去年と同じ戦力ながら、山瀬放出のつけが祟って、今年の優勝はないだろうというのが僕の予想。そうは言ってもやはり十分以上に手強い相手だった。特にエメルソンと永井(なんだかとても良かった)の2トップは強力。何度冷や冷やさせられたことかわからない。田中達也が故障明けで途中出場だったのと、エメルソンのコンディションが不十分だったのには、随分と助けられた感があった。しかしエメルソンの場合、それでもあれだけの出来なんだから嫌になる。彼のコンディションが整わないうちにあたったのはラッキーだったかもしれない。レッズが今日の雪辱を誓って望んでくるだろう次の対戦が今から不安だ。
(Mar 05, 2005)