故障前に3試合連続でゴールを決めていた野沢。ジュビロ戦で2得点に絡む積極的な動きを見せた深井、そしてこの日、本山の2ゴールのお膳立てをした興梠。アントラーズの快進撃を支えているのは、こうした若手の選手たちのがんばりだ。
いや、もちろん若手ということでなら、中田浩二の穴を埋める青木や、最終ラインに定着した岩政の活躍も抜きには語れない。センターラインがしっかり守れているからこそ、両サイドが日替わりのままでも、ここまでリーグ最小失点という素晴らしいディフェンス力を保てているんだろう。
そう言えば三冠を達成した年も、やはり最後の最後でものを言ったのはディフェンス力だった。安定した守備力で試合を保ちながら、中盤から前の個人技で勝負を決める、というのが鹿島の伝統的な戦い方だとするならば──あんまりいいサッカーだとは思わないけれど──今のチームは見事にその伝統にのっとった戦い方ができている。
それに、とにかくJリーグ発足当初から常に優勝に絡んできたというプライドがチームに根づいているのを感じる。それがこの2、3年の低迷を経て、1リーグ制となった今年こそはという強い闘争心に変わったかなと。チーム・リーダーの小笠原の負けん気の強さがチームに今までにない雰囲気をあたえているような気もする。
なんにしろ今年はここまでディフェンスに関しては文句なし。でもその点ならば去年もおんなじだった。失点の少なさでは多分リーグ・ベスト3に入っていたはずで、それでも低迷を続けていたわけだから、今年の快進撃を支えているのは、やはり攻撃力、得点力がアップしたことにある。
要因のひとつは間違いなくアレックス・ミネイロの加入だった。この人がファースト・インプレッションの悪さに反して、その後しっかりとした仕事をしてくれている。得点ランキングにアントラーズの選手が顔を出してる状況というのは実にひさしぶりなので、それだけでも賞賛に値する気がしてしまう。とにかくきちんと点が取れるFWは、この2、3年のチームに欠けていたピースのひとつだった。今年は彼の加入によりその欠点が解消されたのだから、ある程度の成績が残せるのは当然だと言える。
加えて冒頭であげた三人の若手FWの台頭がある。故障者続出のチームにあって、数少ないチャンスをもらった彼らは、この機会を逃しちゃいけないとばかりに、スタメンのお株を奪うような活躍を見せてくれている。プロ野球でよく聞く「日替わりヒーロー」というやつ。そういう選手が次々と出てくるチームは強い。このいいリズムをキープしていければ、今年はいい成績が期待できるかもしれない。ってまだ全体の三分の一も終わっていないのだから、浮かれるには早過ぎるとは思うけれど。
しっかし、日替わりヒーローが出てくる理由を考えると、喜んでばかりいられない。深井がチャンスをもらったのは、それまで活躍していた野沢が怪我をしたからだ。興梠の初スタメンは、その深井も怪我で使えなくなってしまったから。そしてこの日の試合で興梠も怪我をした。三人が三人、戦線離脱という状況はひたすら苦しい。今日の新聞によると野沢は疲労骨折で全治2ヶ月だそうだし、深井や興梠も怪我をした時の感じだと、1ヶ月くらいは出られなさそうだ。アレックス・ミネイロも故障でこの試合は欠場だったし、その他にも名良橋、新井場の両サイドバックも不在。首位を独走しているのが嘘のような、踏んだり蹴ったりの台所事情だったりする。本当に困ったもんだと思う。とりあえずあと2試合を終えると一ヵ月半の中休みに入るというのがとてもありがたい。
なにはともあれこの試合。フェルナンドが累積警告で出場停止、アレックス・ミネイロも不在。しかも前節で初黒星を喫しているということもあって、不安材料の多い一戦だった。スタメンは曽ヶ端、アリ、岩政、大岩、石川、小笠原(ボランチでの起用)、青木、増田、本山、興梠、隆行(復帰後初スタメン)。そう言えば増田のスタメン出場もひさしぶりな気がする。去年の開幕当時は彼も期待のルーキーとして注目されたものだけれど、その後徐々に失速してしまった感がある。この日も興梠の影に隠れてしまっていた。苦しい状況だけに、次こそ彼の奮起に期待したい。
興梠はバーに嫌われた2本のシュートがそのまま本山へのアシストになるという形だったけれど、それらのシュートを打った積極的な姿勢に感銘を受けた。ゴール前でパスを選択してしまう選手が多い中、彼は迷わずシュートを打って、それをきちんと枠に飛ばしていた。やはりそこだというタイミングでシュートを打ってくれる選手は気持ちがいい。この子はいけるかもと大いに期待を抱かせてくれた。それだけにいきなり怪我で出場できなくなってしまったのは痛い。ジュビロ戦の深井も同じように、おおっ、今年はやってくれるかと思わせてくれた試合での怪我だった。どうもそういう不幸が重なるのは気持ちが悪い。縁起をかついでお祓いでもしてもらって欲しくなる。
ま、なんにしろ首位だ。2位名古屋との勝ち点差は7だから、万が一、中断前の残り2試合を両方とも落としても首位のままだ。うーん、素晴らしい。こんな好成績は本当に想像だにしていなかった。自分の不明を恥じ、チームの健闘をたたえたい。
(May 08, 2005)