2005年6月のサッカー

Index

  1. 06/03 ○ バーレーン0-1日本 (W杯・最終予選)
  2. 06/08 ○ 北朝鮮0-2日本 (W杯・最終予選)
  3. 06/16 ● メキシコ2-1日本 (コンフェデ杯)
  4. 06/19 ○ ギリシャ0-1日本 (コンフェデ杯)
  5. 06/21 △ ブラジル2-2日本 (コンフェデ杯)

バーレーン0-1日本

W杯アジア最終予選/2005年6月3日(金)/マナマ(バーレーン)/テレビ朝日

 最終予選きっての大一番。中田、中村、小野をいかに共存させるかが注目されたこの試合で、ジーコが出した結論は、フォーメーションを3-6-1に変えての、ボランチ小野にダブル司令塔という布陣だった。ところが試合の前々日だかの練習中に、小野が右足甲を疲労骨折。急遽欠場を余儀なくされることになってしまう。
 普通この状況ならば稲本か遠藤の出番になると思うのだけれど、ジーコの選択は違った。フォーメーションは3-6-1のまま、中田を再びボランチの位置へ下げて、彼を入れるつもりだったトップ下に小笠原を起用してきた。小野の故障というトラブルがあったとはいえ、この試合での小笠原のスタメン出場は絶対にないだろうという僕の予想は──喜ばしきことに──見事にはずれたわけだ。そして日本に大きな一勝をもたらしたのは、その小笠原による決勝ゴールだった。いやはや、素晴らしいゴールだった。
 1トップで戦ってはどうかという議論は前々から仲間うちではあった。決定的なFW不足の一方で、これだけ強力な中盤のタレントを擁しているのだから、なにも2トップにこだわらないでもいいのではないかと。それに対する反論は、1トップだと最前列でのボールの預けどころが減るために、パサータイプの選手が多い日本には向かないのではないかというものだった。ところがこの試合を見る限り、1トップはなんの問題もなく機能していた。まあ1トップを任された柳沢──ボールのないところの動きは素晴らしさと、ボールを持たせた時の積極性のなさはあいかわらずだ──の運動量が多かったのが効いていたかもしれない。ただそれよりも2列目以降の選手に、FWの不足分を補うために積極的に前へ行かなければという意識が芽生えたのが大きかったのではないかと思う。小笠原の決勝ゴールもそうした積極性が生んだものだろう。
 そのゴールに限らず、この試合における小笠原の攻守に渡る貢献度の高さは特筆に値する。中田英寿もすごく良かったけれど、その中田とタイプがかぶり、それゆえにバックアップの地位に甘んじていたとも言える小笠原が、この試合ではその中田と肩を並べるだけの働きを見せてくれていた。中田、中村が累積警告で出場停止となる次の試合で結果を出せるようならば、ジーコもおいそれと彼を控え扱いはできなくなるだろう。そういう意味でも次の北朝鮮戦は大事な一戦となる。本人もそのつもりだろうし、完膚なきまでに北朝鮮を叩きのめす立役者となってもらいたいもんだ。
 オガサやヒデとは対照的に、俊輔はこの大事な試合でもあまりよくなかった。イエローをもらったあとで、それに腹を立てたかのように果敢に切れ込んで、はっとするようなシュートを打ってみせた場面こそあったけれど、それ以外はなんとも積極性に欠けた印象。彼のプレーの煮え切らなさにはかなりじれったい思いをさせられている。もっともっとその力を見せつけて欲しい。あと、これは彼個人に限った問題じゃないけれど、このところセット・プレーにアジアカップの時ほどの精度がないのも気がかりだ。そう言えば両サイドの攻め上がりもほとんどなかった。それらは反省点だろう。
 守備では3試合ぶりに復帰した中澤の強さがやはり際立っていた。体調は万全じゃないらしいけれど、そんなことは露とも感じさせない強さを見せてくれていた。彼がいるといないのでは、ディフェンス・ラインに対する安心感が段違いだ。なまじ彼を欠いた試合で2連敗を喫したあとだけに、なおさらそう感じてしまった。なんにしろバーを叩くシュートこそ一本あったけれど、その場面以外にはまったくあぶないところのない試合だった。
 快勝の理由としてはバーレーンが調子を落としていたのに救われた部分も大きかった。とにかくこの日の彼らの出来はひどかった。どうしても勝たなくちゃいけないホームでの一戦で、後半にあれだけ足が止まってしまったら話にならない(日本もかなりまいっていたけれど)。中盤でもまったくといっていいほどプレスがかかっていなかったし、ここまで調子を落としている相手だったらば、最初からなんの心配もなかったと思う。
 ともかく大一番を見事に乗り切り、3大会連続のW杯出場決定まで、あと勝ち点1となった。次の試合でスカッと勝って決めてしまって欲しい。次戦ではあいにくヒデ、俊輔、アレックスが累積警告で出場停止という状況──アレックスのシミュレーションと俊輔の遅延行為は自業自得だけれど、中田はまったくカードに価しない、ひどい判定だった──ながら、それゆえに出場が確実な小笠原や、このところ調子が良さそうなのに出番をもらえないでいる可哀想な稲本には大きなチャンスだ。ぜひともいいところを見せて、今後のジーコを大いに悩ませてあげて欲しいと思う。
(Jun 05, 2005)

北朝鮮0-2日本

W杯アジア最終予選/2005年6月8日(水)/バンコク(タイ)/テレビ朝日

 拍子抜けするほどあっさりと、ワールドカップへの出場は決まった。これから本大会の始まるまでの一年は、これまでのように結果がすべてとは言っていられなくなる。内容をストレートに問える分、かえってこれからの方がサッカーを楽しめるんじゃないかと思う。そういう意味は来週から始まるコンフェデレーションズ・カップがとても楽しみになった。
 さて、北朝鮮への制裁として無観客で開催されたこの試合。フォーメーションはいつもの3-5-2に戻し、スタメンは川口、田中誠、宮本、中澤、加地、稲本、福西、中田浩二、小笠原、柳沢、大黒という組み合わせだった。
 意外だった左サイドでの中田浩二への起用といい、2002年ワールドカップの時と同じ2トップの組み合わせといい、どうにも鹿島贔屓の印象が否めない。結果的に柳沢が決勝ゴールを決めたわけだし、中田浩二のプレーも(特にディフェンス面で)大きくチームに貢献していたとは思うのだけれど、そのかげでこれまでずっとチームに帯同してきた三浦淳や玉田にベンチを温めさせるのはどうなんだと。特に三浦淳はアレックスの出場停止で、誰もがスタメンは彼だろうと思っていただけに(出場停止が決まった後、アレックス自身が「アツを応援したい」と口にしていた)可哀想でならなかった。本当にジーコにも困ったもんだと思う。そんな状況にもかかわらず、腐った態度をまったく見せていなかった三浦淳の謙譲の精神に大きなエールを送りたい。
 話は逸れるけれど、そんなアツと対照的なのが松田だ。彼はイラン戦だかバーレーンとの初戦だかで自分が起用されなかったことに腹を立ててチームを離脱したとかで、それがジーコの怒りを買ったらしく、それ以来招集されなくなってしまった。彼は確か五輪代表の時にも同じようなことをしていたんじゃないだろうか。成長がないというか……。気持ちはわかるけれど、ちょっとはアツを見習って欲しい。間違いなく日本を代表するDFの一人が、その才能を活かせないのはなんとも残念でたまらない。
 試合内容に関しては、注目していた小笠原と稲本がそれほどの存在感を示せていなかったのが残念だった。二人とも悪かったとは思わないけれど、それではヒデや小野と比較して遜色がなかったかというと、どうしてもクエスチョン・マークがつくという出来。この二人はあいかわらずスタメンとサブのボーダーラインを脱し切れていない印象のままだ。やはり小笠原は攻撃的MFとしてヒデ、俊輔に続く第三の選択肢という感じだろうし、稲本も、福西がジーコから意外なほどの信頼を受けている現状だと──確かにいいプレーをしているとは思う──今日くらいの出来ではやはりスタメンは厳しいだろう。
 鈴木隆行もこのところ持ち前の強さを見せられていない。あまり運動量がない印象を受ける。後半開始から交替で出場した大黒が元気一杯だったので、なおさらイメージが悪くなった。もしもコンフェデでも今の感じだと、今後の代表入りはジーコも考えざるを得なくなるんじゃないだろうか。
 その点、意外だったのが柳沢のプレー。隆行と組んだ前半はあいかわらずな感じでため息ものだったのだけれど、後半になっていきなり変わった。今まで見せたことがないくらい、積極的にシュートを打ちまくっていた。あんなに果敢にシュートを打つ柳沢を見たのは初めてな気がする。
 やはり大黒という競争相手の登場が彼のお尻に火をつけたんだろう。ゴールを決めるちょっと前のプレーでも、いつもならばパスを選択しているだろうプレーで、強引にシュートを打っていた。その時もしもパスを選択していたとすると、その出し先は大黒になっていたはずだ。けれど彼はそこでシュートを選択した。そのプレーを見て、僕はもしかしたら柳沢は随分と大黒を意識しているのかなと思った。試合後のコメントでも、不本意ながらゴールを決めるFWの重要性がわかってきた、みたいなことを言っているし(気がつくのが遅い……)。「ゴールを決めるのがFWの仕事、出場する試合では必ずゴールを決めたい」と豪語する大黒が、その姿勢ゆえにファンやマスコミの心を捕らえているのを見て、彼も気が気じゃなくなってきたということなのだろう。ヤナギの場合、もとよりスペースの使い方の上手さは折り紙つきなんだから、そこに常にゴールを狙う積極性が加われば、日本でもトップクラスのストライカーになれるんじゃないだろうか。今後の彼が本当に変われるかどうか、サッカーを見る楽しみがひとつ増えた。
 それにしても最終予選のここ2試合は、バーレーンにも北朝鮮にも最初に対戦した時ほどの手ごたえを感じなかった。両国にとってもW杯出場を賭けた大事な試合だったはずなのに、どちらにもそういう大一番を戦っているとは思えない淡白さがあった。それぞれコンディションに問題を抱えていたのかもしれないけれど、ハードなスケジュールは日本も同じだ(故障をおして出場していた中澤には心からご苦労さまと言いたい)。そういう意味では、この予選をここまでわずか1敗(それもアンラッキーな部分もあったアウェイのイラン戦)、あとは全勝で乗り切ってきた日本代表は、やはりアジアでは頭ひとつ抜けた力を持っているんだろうなと、あらためて感じさせられた。
 さあ、地区大会は乗り切った。次の相手は世界だ。この日はほとんど危なげない試合ではあったものの、それでも前半にゴール真正面からどフリーでヘディングを決められる場面があった。北朝鮮が相手だったから難なきを得たけれど、あれが世界の強豪相手だったらば失点は確実という場面だ。まだまだ世界と戦うには足りない部分がたくさんあるだろう。幸い今回は準備期間が丸1年ある。個々の選手がさらなるレベルアップを遂げて、ジーコが言う通りに世界を驚かせるようなサッカーを見せることのできるチームになって欲しい。彼らにそれを望む以上、僕も負けぬよう、がんばらないといけないと思っている。
(Jun 11, 2005)

メキシコ2-1日本

コンフェデレーションズ・カップ/2005年6月16日(木)/ドイツ・ハノーバー/フジテレビ

 ひさしぶりに強い国とあたってみて──驚いたことにメキシコは現在FIFAランキングで6位だそうだ──日本代表の力のたりなさを痛感させられた。決して圧倒されていたとは思わないのだけれど、では互角に戦えていたかと問われると答えはノー。局面局面で少しずつ相手の力が上回っているのを感じた。その結果が当然の帰結としてスコアに表されてしまったという感じの敗戦だった。
 この日のフォーメーションはバーレーン戦で好感触を残した3-6-1。柳沢を1トップに、トップ下に俊輔と小笠原、両サイドがアレックスと加地、ボランチは中田と福西、3バックの一角には、故障のためこの大会不参加(残念)の中澤に代わり、茶野が入った。あとの二人はもちろん宮本と田中誠、そしてGKが川口という布陣。
 試合はメキシコの猛攻とともに始まった。キックオフから1分そこらでいきなりゴール前まで持ち込まれ、シュートを打たれた時には、この試合、大丈夫なんだろうかと心配になったものだ。
 ただその後をあぶなっかしくもなんとか凌ぎ続けた日本は、なんと前半12分に巡ってきたワンチャンスをものにして先制してしまう。右サイドの低い位置でボールを拾った小笠原が、駆けあがっていた加地へ素早いフィード。加地はそのまま右サイドをまっすぐ切り込み、低くて早いクロスを放り込んだ。ここにきちんとあわせていたのが柳沢。相手DFと重なるようにしてなんとか足にあてたボールは、ゴールマウスの絶妙の位置へと転がり込んだ。幸運に救われた感もあったけれど、それでもしてやったりという爽快感のある嬉しいゴールだった。
 けれどこの試合でそういう喜びを感じさせてくれたのはこのシーンだけだった。その後も苦しい戦いが続き、結局前半も残り少なくなった時間帯にメキシコの7番ジーニャに見事なミドルシュートを決められて同点。後半なかばには17番フォンセカにヘディングを決められて逆転を許し、結局そのスコアでゲームセット。コンフェデレーションズ・カップ初戦はせっかくの先制点を守れず逆転負けを食らうという痛い結末となった。
 失点の場面は昔からの敗戦のリプレイを見るような感じだった。アジアではあまりお目にかかれない強烈なミドル・シュート。マークをものともしないヘディングと、そこにどんぴしゃであわせてくる精度の高いクロス。こうした世界ではあたりまえのプレーにどれだけ対応してゆけるかが、これから一年の課題となるんだろう。体格の上ではさほど日本と変わらないメキシコにできていることが日本にできない道理はない。この敗戦から多くを得て、来年のワールドカップにつなげてもらいたいところだ。
 ま、負けはしたけれど、それでも少しは見るべきところもあったと思う。1トップのフォーメーションで中盤が自由に入れ替わりながらボールを回すスタイルは今回もある程度までうまく機能していた。小笠原も後半息切れはしたものの、それまではその輪の中にあって俊輔よりもいいプレーをしていたと僕は思う。
 やはり今のチームの一番の問題は俊輔だ。試合後のコメントで「ヒデさんが上がり過ぎるので前へいけないかった」みたいなコメントを発していたようだけれど、彼はどうしてそうなのだろう。どうしてヒデがあがれなくなるくらいに、自分が先にあがってしまおうとしないんだろうか。ジーコに相手の7番を見るように指示されたと不満を漏らしていたようだけれど、それだって彼が下がりすぎるから、結果としてそういうプレーを要求される結果になってしまうんじゃないのか? ディフェンスを意識して下がってきては、低い位置でボールを取られまくってピンチを招いている印象が強い。どうせ取られるならば、前の方でゴールを狙うプレーの中で取られてくれと言いたい。もとよりあまりコンディションが良くないんだから、無理にディフェンスに気を使うのはやめて、前めにどーんと控えていて、いざと言う時の攻撃の核として機能してもらいたかった。僕はこのところ、代表から俊輔をはずしたトルシエの気持ちがわかる気がしてきた。
 その点はアレックスも似ている。この日はほとんど攻撃参加できず、危ない形でボールを奪われる悪癖を露呈していた。このくらいの出来のアレックスを使うんならば、中田浩二の方がよほどいい。少なくても俊輔とアレックスが一緒にピッチに立っていると、左サイドのディフェンス面であぶなっかしくていけない。
 まあ、ただ一概に彼だけが悪かったとは言えないのは確かだ。ヒデのプレーにもいまひとつ集中力を欠いていたような印象があるし、チームとして全体的にミスも多かった。なんとなくひさしぶりに格上の相手ということで、気分的に萎縮した部分があったような気がする。もっともっと強いハートを持って戦えるよう経験を積まなければいけないと思わされた。
 そういう意味ではこの日、最後の交替枠を使って投入された玉田が、ひさしぶりに代表デビューの頃のような物怖じしない溌剌としたプレーを見せてくれていたのが印象的だった。柳沢の復活や大黒の台頭で出番の減ったことによる危機感の表れだろう。ハングリー精神が感じられて好印象だった。
 ちなみにこの最後の選手交替でジーコは茶野をさげて4バックとした。その前は柳沢を残したまま大黒を入れていたので、単に選手の組み合わせだけ見ると4-3-3という形。しかも中盤の3は中田と福西に加え、後半早々に俊輔と交替して入った稲本。こうなるともうフォーメーションもなにもあったもんじゃないと思うのだけれど、それでもそれなりに戦えはする。少なくてもDFの枚数を減らしたあとは失点していないのだから、結果オーライなんだろう。これぞジーコ戦法の真骨頂、始めに人ありき。あまりフォーメーションに縛られずに調子の良さそうな選手を適当に放り込み、あとはその人たちのプレーに期待する。戦術論の好きな人のバッシングの声が聞こえてきそうだ。
 でももしかしたら、そんなジーコの自由気儘なサッカーに一番悩まされているのは、非情に生真面目で器用な反面、自己主張がたらず融通が効かないという欠点を持つ日本人の典型ともいうべき俊輔なのかもしれない。
(Jun 18, 2005)

ギリシャ0-1日本

コンフェデレーションズ・カップ/2005年6月19日(日)/ドイツ・ハノーバー/フジテレビ

 忙しくてこの試合の感想が書けないまま、ブラジル戦のキックオフまであと4時間を切ってしまった。コンフェデ第2戦は快勝だった。決勝トーナメント進出への望みをつなぐ、貴重な勝ち点3。そしてなにより──ものすごく不出来で、とてもそれらしくはなかったけれど──ヨーロッパ・チャンピオンを破るという快挙だ。文句のつけようがない。実に気持ちのいい勝利だった。
 この試合でジーコが選んだフォーメーションは4-4-2。これまで結果を出せずに批判にさらされてきたこの形で──ほぼ完璧な内容で──勝利を納められたのはとてもでかい。基本的にはメキシコ戦の3-6-1から、DFの茶野を引っ込めて両サイドを下げ、FWに玉田を入れただけという布陣だし、攻撃面にほとんど脅威を感じさせない相手だったから、この一戦だけを見て4バックにゴーサインを出していいかというのは疑問が残るものの、それでも4バックでも世界と戦えないわけではないということがわかっただけでも大きな収穫だといえる。
 今回の4-4-2の成功の要因は小笠原を俊輔と並べたことだと思う。中盤でペアを組むのがヒデではなくオガサだったことで、俊輔にヒデとの時のような遠慮がなくなり、前を向いてプレーできるようになった印象がある。それが一番の勝因だろう。
 ま、僕は俊輔個人はそれほど良かったとは思わないんだけれど、それでもこの試合のMVPをもらったのは彼なのだから、その点は僕の見る目がないのかもしれない。見る人が見れば彼のプレーは素晴らしかったんだろう。ヒデは言うまでもなく存在感抜群だし、オガサはオガサであいかわらずいいプレーを見せてくれている。福西もこのところ好調をキープしているし、ヤナギと玉田も元気だ。おかげで中盤から前でおもしろいほどボールがキープできた。これで高さ以外にはこれといった武器のない今のギリシャに負けるはずがない(実に見るべきところのないチームだった)。欧州王者とアジア王者の戦いという肩書きからすればアジア王者の勝利は意外な結果かもしれないけれど、内容的には実に順当な勝利だった。
 なにはともあれ途中出場ながら決勝ゴールを決めてくれた大黒に最大級の祝福を。
(Jun 23, 2005)

ブラジル2-2日本

コンフェデレーションズ・カップ/2005年6月21日(水)/ドイツ・ハノーバー/フジテレビ

 もしもこの試合に勝って決勝トーナメントに進むことができていたら……。そこでの結果のいかんを問わず、日本サッカーの歴史はさらに大きく変わってゆくことになったのではないだろうか。そんなあらぬ期待を抱かせるに十分な日本代表の予選リーグでの3試合の戦いぶりだった。
 決してブラジルと互角の戦いができたとは思わない。余力を残して戦っているのがありありのブラジルに対して、こちらは持てる力を出し切ってようやくその圧力を受け止めるのが精一杯という印象だった。これがもしブラジルにとって引き分けの許されない一戦だったらば、日本が善戦するなんて試合にはならなかっただろうと思わせるだけの力の差を感じさせられた。
 かといってじゃあ日本が駄目かというとそんなことはない。少なくても日本はブラジル相手にスコアレスではなく、2-2というスコアで、しかも自ら追いついて引き分けに持ち込んでみせた。これはとてもでかい。確かに相手がある程度は力を抜いていたにしろ、その中で反撃の機会を捕えて同点へと持ち込み、なおかつ終了間際にはよもや逆転かという場面さえ作り出した。終了間際にはあのロナウジーニョがファールの場面で倒れたままボールを抱え込み、時間稼ぎをするなんてシーンもあった。そこまでブラジルを慌てさせた日本代表に拍手喝采を浴びせなくてどうすると思う。
 ただ──と、やはりエクスキューズはつく──その反面で同点に追いついてからのプレーには若干不満が残った。試合展開としては引き分けでもいいブラジルが1点リードのまま後半を流して戦い、あとは逃げ切るだけと思っていたところに土壇場で日本が追いつくという展開。残り時間はわずか5分。ブラジルは思わぬ展開に動揺を隠せない。日本がブラジルに勝てるとすれば、まさにこれという展開だった。この5分間でどれだけのことができるかに勝敗の行方がかかっていたといってもいい。ところが……。
 ロスタイムの最後の1~2分の日本には、危険覚悟であと1点を奪いにゆこうという意識が欠けていたようにしか見えなかった。あの展開ならば、あとは最前線にロングボールを放り込んでパワープレーでもって、もう1点を奪いにゆくのが当然だろう。ところが日本は結局、攻め手を探しつつ中盤よりも後ろでボールを回しているうちにタイムアップの笛を聞いてしまう。勝たないと決勝トーナメント進出がないという試合の最後に、なぜあの位置でボールをキープしたまま終わる? どうにもブラジル相手に引き分けに持ち込めるという事実に満足してしまったように思えてならない。相手がどこであれ、最後まで勝利を求めるという執念が感じられなかった。素晴らしい試合だっただけに、それが最後の最後でとても残念でならなかった。
 残念と言えば、期待した小笠原がこの試合では結局これといった結果を残せずに前半だけでピッチをあとにすることになってしまったのもとても残念だった。あとで知ったところによると、なんでも体調が悪かったらしいのだけれど──そういう選手をジーコもなぜ使うかな──、なんにしろ彼は中盤におけるヒデと俊輔の牙城を切り崩すことはできないで終わった。この分だと小野が帰ってきたらスタメンはあぶないだろう。これからの1年でのさらなる躍進に期待するしかないようだ。
 反対に素晴らしかったのが俊輔。既に試合から十日以上過ぎているので、どこがどう良かったかと問われると困るのだけれど(いい加減なやつだ)、とにかく好印象が残っている。ひさしぶりに納得のゆくプレーを見せてもらった気がする。この試合でもMVPに選ばれたそうだけれど、今回は十分に納得がいった。
 あともう一人、おっと思わせてくれたのが、小笠原に代わって後半から出場した中田浩二。彼がボランチの位置に入ってからは攻守のバランスが非常に良くなった。後半のブラジルにそれほど脅威を感じないで済んだのには──相手が力を抜いていた部分があるにしろ──要所要所できちんと攻守のバランサーとしての仕事を続ける浩二の存在が大きかったのではないかと思う。だてにフランスへ行っちゃいない。いや、とても感心しました。
 なにはともあれ、俊輔の見事なミドル・シュート──力強さはないけれどコースが絶品だった──と、常にゴールを狙う貪欲さを失わない大黒が、その俊輔のポスト直撃のFKのこぼれ球に詰めて奪った同点弾、そのどちらもが、フロッグとは呼ばせないと豪語できるだけの素晴らしいゴールだった。スコアレス・ドロー狙いであわよくば、なんていう弱者のサッカーではなく、日本はきちんと攻撃し続けてブラジルと引き分けた。本当に胸を張っていいと思う。
 残念ながら決勝トーナメント進出はならなかったけれど、この大会予選リーグの3試合で、日本代表は確実に成長の跡を見せた。結局謙譲を美徳とする日本人だということなのか、良くも悪くも日本代表は相手のレベルにあわせたサッカーをしてしまうみたいだ。そういう意味では、当然のことながら、やはりより強い相手と戦う機会を多く作ることこそが、強化への何よりの道なんだろう。日本サッカー協会にがんばってもらいたい。
(Jul 02, 2005)