バーレーン0-1日本
W杯アジア最終予選/2005年6月3日(金)/マナマ(バーレーン)/テレビ朝日
最終予選きっての大一番。中田、中村、小野をいかに共存させるかが注目されたこの試合で、ジーコが出した結論は、フォーメーションを3-6-1に変えての、ボランチ小野にダブル司令塔という布陣だった。ところが試合の前々日だかの練習中に、小野が右足甲を疲労骨折。急遽欠場を余儀なくされることになってしまう。
普通この状況ならば稲本か遠藤の出番になると思うのだけれど、ジーコの選択は違った。フォーメーションは3-6-1のまま、中田を再びボランチの位置へ下げて、彼を入れるつもりだったトップ下に小笠原を起用してきた。小野の故障というトラブルがあったとはいえ、この試合での小笠原のスタメン出場は絶対にないだろうという僕の予想は──喜ばしきことに──見事にはずれたわけだ。そして日本に大きな一勝をもたらしたのは、その小笠原による決勝ゴールだった。いやはや、素晴らしいゴールだった。
1トップで戦ってはどうかという議論は前々から仲間うちではあった。決定的なFW不足の一方で、これだけ強力な中盤のタレントを擁しているのだから、なにも2トップにこだわらないでもいいのではないかと。それに対する反論は、1トップだと最前列でのボールの預けどころが減るために、パサータイプの選手が多い日本には向かないのではないかというものだった。ところがこの試合を見る限り、1トップはなんの問題もなく機能していた。まあ1トップを任された柳沢──ボールのないところの動きは素晴らしさと、ボールを持たせた時の積極性のなさはあいかわらずだ──の運動量が多かったのが効いていたかもしれない。ただそれよりも2列目以降の選手に、FWの不足分を補うために積極的に前へ行かなければという意識が芽生えたのが大きかったのではないかと思う。小笠原の決勝ゴールもそうした積極性が生んだものだろう。
そのゴールに限らず、この試合における小笠原の攻守に渡る貢献度の高さは特筆に値する。中田英寿もすごく良かったけれど、その中田とタイプがかぶり、それゆえにバックアップの地位に甘んじていたとも言える小笠原が、この試合ではその中田と肩を並べるだけの働きを見せてくれていた。中田、中村が累積警告で出場停止となる次の試合で結果を出せるようならば、ジーコもおいそれと彼を控え扱いはできなくなるだろう。そういう意味でも次の北朝鮮戦は大事な一戦となる。本人もそのつもりだろうし、完膚なきまでに北朝鮮を叩きのめす立役者となってもらいたいもんだ。
オガサやヒデとは対照的に、俊輔はこの大事な試合でもあまりよくなかった。イエローをもらったあとで、それに腹を立てたかのように果敢に切れ込んで、はっとするようなシュートを打ってみせた場面こそあったけれど、それ以外はなんとも積極性に欠けた印象。彼のプレーの煮え切らなさにはかなりじれったい思いをさせられている。もっともっとその力を見せつけて欲しい。あと、これは彼個人に限った問題じゃないけれど、このところセット・プレーにアジアカップの時ほどの精度がないのも気がかりだ。そう言えば両サイドの攻め上がりもほとんどなかった。それらは反省点だろう。
守備では3試合ぶりに復帰した中澤の強さがやはり際立っていた。体調は万全じゃないらしいけれど、そんなことは露とも感じさせない強さを見せてくれていた。彼がいるといないのでは、ディフェンス・ラインに対する安心感が段違いだ。なまじ彼を欠いた試合で2連敗を喫したあとだけに、なおさらそう感じてしまった。なんにしろバーを叩くシュートこそ一本あったけれど、その場面以外にはまったくあぶないところのない試合だった。
快勝の理由としてはバーレーンが調子を落としていたのに救われた部分も大きかった。とにかくこの日の彼らの出来はひどかった。どうしても勝たなくちゃいけないホームでの一戦で、後半にあれだけ足が止まってしまったら話にならない(日本もかなりまいっていたけれど)。中盤でもまったくといっていいほどプレスがかかっていなかったし、ここまで調子を落としている相手だったらば、最初からなんの心配もなかったと思う。
ともかく大一番を見事に乗り切り、3大会連続のW杯出場決定まで、あと勝ち点1となった。次の試合でスカッと勝って決めてしまって欲しい。次戦ではあいにくヒデ、俊輔、アレックスが累積警告で出場停止という状況──アレックスのシミュレーションと俊輔の遅延行為は自業自得だけれど、中田はまったくカードに価しない、ひどい判定だった──ながら、それゆえに出場が確実な小笠原や、このところ調子が良さそうなのに出番をもらえないでいる可哀想な稲本には大きなチャンスだ。ぜひともいいところを見せて、今後のジーコを大いに悩ませてあげて欲しいと思う。
(Jun 05, 2005)