定番の4バック+海外組6人という布陣でのぞんだ試合。高原と柳沢のツートップはトルシエ時代以来だとかいう。ヒデと俊輔のダブル司令塔に、ボランチは稲本と中田浩二。故障中の小野がいたらば浩二の出番はなかっただろう。そういう意味では浩二にはまたとないチャンスだった。結果は結構出せたのではないかと思う。なんたって先に交替したのは稲本だったし。イナには厳しい風が吹いている。
川口が故障中のため、GKは楢崎だった。けれどどうもこの頃は楢崎が先発すると試合が荒れるというか、苦戦必至という印象がある。そんな彼のせいというわけではないけれど(絶対それはない)、この日の試合はまれに見る乱打線となった。日本代表でこういう内容の試合を観たのは初めてだと思う。
なにしろ前半途中でいきなり2点のビハインドを追う展開。まずは日本の一番の弱点であるアレックスのサイドを見事に破られた。この日の得点は3点目のヒデのミスからの1点を除くと、どれもサイド攻撃のお手本を教科書に書いてあるとおりに実演して見せてもらってしまったような綺麗なゴールだった。試合後にホンジュラスの監督が「失礼ながら日本はもっと守備に力を入れたほうがいい」と忠告してくれていたらしいけれど、そういいたくなるのももっともだ。あんな風に左右から同じような形で3点もとられるというのは絶対に組織に問題がある。僕は4バックの起用に関しては、ある程度の失点は覚悟しなきゃいけないだろうと思っているけれど──この日の決勝点にアレックスが絡んでいるのを考えれば、彼の守備でのマイナスは相殺されて0といえなかないだろう──、しかしこの試合での失点の形はあまりにもひどすぎた。やっぱり4バックの起用については、もう少し慎重に見極める必要があるのかもしれない。
とはいっても4点を奪われながら、そしてつねに先行されながらも逆転で勝ったという結果は、非常に高く評価していい。少なくても僕はこんな勝負強い日本代表は見たことがない──って、いや、アジアカップでのバーレーン戦が印象的には近かったか。いずれにしてもこうした粘り強さはジーコのチーム作りがもたらしたものだ。アンチ・ジーコな人にもそれはきちんと評価して欲しいと思う。
なんにしろ試合はいきなり2点を先行される展開。それでも相手のミスから高原がひさしぶりのゴールで泥臭く1点を返し、よし1点差で前半は終了かと言うところで、ヒデのまさかというミスにより3点目を奪われる。チームリーダーのミスからの失点で前半を終わるという展開は最悪に思えた。
後半は早い時間にセットプレーから柳沢がどんぴしゃのヘッドを決めてまた1点差とするも、その直後に加地のサイドを崩されて──本当に1点目の鏡写しのリプレイを見ているようだった──4失点目。見ているこちらには絶望感が漂う。
ただ基本的にはボールを支配できていた日本はその後も攻勢を続け、宮本がペナルティエリア内で迎えたシュートチャンスに後から倒されてPKをゲット。これを俊輔がきちんと決めてまた1点差。
同点ゴールは柳沢。相手DFの隙を見逃さず、ドリブルで持ち込み遠目から思い切りよく打ったシュートは、GKの手を弾いてゴールネット左を揺らした。彼のこれまでにない積極性は、イタリアでの経験に加えて、おそらく同じタイプの大黒の台頭に刺激されてのものだろう。ヤナギには散々期待を裏切られてきたけれど、もしかしたら今、日本代表のFWで一番先頭を走っているのは彼なのかもしれない。
決勝ゴールはわれらが小笠原。アレックスからのマイナスのパスにインサイドであわせた落ち着いたシュートだった。稲本と交替して途中出場した彼は──イナのポジションには前半途中から下がり目でプレーしていたヒデがそのまま入った──敵将に一番印象に残った選手の一人として名前をあげられていたそうだ。確かに彼が入ってからの安定感には、これならいけると思わせるものがあった。僕は基本的にワントップにしてでも、ヒデと俊輔とオガサを一緒に使って欲しいと思っている人間なので、彼がこうして結果を出してくれたことをなによりも嬉しく思う。
最後は相手の反撃に手を焼き、俊輔に代えて田中誠を投入。フォーメーションを得意の3バックに変えて、なんとか逃げ切った。逆転した時点で、もうこれは絶対勝って終わらないといけない試合だった。あれだけの失点を許した試合で、あそこからさらに同点、逆転となったらばもう目も当てられない。そういう意味では、最後に得意な逃げ切りの形を取れるだけの引き出しの広さがあるってのは、それなりに評価できる。ホント、あの時間帯は田中誠が頼もしく見えて仕方なかった。いいのやら、悪いのやら。
とにかく課題山積みの観ていて疲れることこの上ない一戦だった。
(Sep 23, 2005)