オーストリア0-0日本(PK4-3)
2007年9月7日(金)/クラーゲンフルト(オーストリア)/TBS(録画)
オシム・ジャパン初のヨーロッパ遠征──ということで、今回は海外組の誰が招集されるのか注目されたのだけれど、結局、呼ばれたのは、俊輔、稲本、松井の三人のみ。御当地オーストリアでプレーしているアレックスと宮本には声がかからなかった。
宮本はともかく、アレックスはちょっと意外だ。ここで呼ばずに、いつ呼ぶんだという気がする。もしやオシムは、左サイドは駒野で固定というつもりなんだろうか。アレックスが日本にいるあいだは、あんなに重用していたくせに、いざ海外移籍したとたんに、見向きもしなくなるオシムの姿勢には、ちょっとばかり疑問をおぼえる。
国内組はアジアカップの時のメンバーを中心に、田中達也や山瀬が加わったくらいで、あとは微調整という感じ。巻、羽生、山岸らのジェフ千葉勢はふたたび代表に返り咲いた。ただし、阿部は腰痛のため、代表辞退。この日の稲本のスタメンは、彼がいなかったせいじゃないかと思う。阿部には悪いけれど、おかげでちょっと興味が増した。
この日のスタメンは川口、加地、中澤、闘莉王、駒野、鈴木啓太、稲本、俊輔、遠藤、田中達也、矢野という顔ぶれ。
このなかで一番の注目は、やはり稲本。前回の招集時には、慣れないトップ下のポジションを任されて、十分に力を発揮できなかった彼が、本職のボランチでどれだけその実力を証明してみせるか。日本代表でもっともレギュラー争いの激しいポジションだけに、今年はブンデスリーガで主力として活躍する稲本が、その実力を見せつけてくれるかどうかには、おおいに注目していた。
でも、残念ながらアピール度はいまひとつだったと思う。日本人選手らしからぬハードなスライディング・タックルで何度も相手ボールを奪ってみせたのには感心したけれど、そうした目立つプレー以外には、それほど存在感がなかった。個人的には、彼と交替で途中出場した中村憲剛のほうがよっぽどよかったと思う。
とにかく中村憲剛の球離れのよいボールさばきと、徹底したパス&ムーブの姿勢は、観ていて本当に気持ちがいい。この日は彼が出てくるまでが停滞気味だったから、なおさらそう思った。中村憲剛が出てからは、チームのリズムがずいぶんと変わった。まあ、同時に入った松井の貢献もあったのかもしれないけれど、僕は中村の貢献度のほうが、はるかに大きかったと思う。いま、一番好きな日本代表の選手は、と問われたら、僕は絶対に彼の名前をあげる。
そんな中村憲剛にベンチを温めさせる以上、中盤の選手たちには、彼以上のプレーを見せてもらわないことには、納得がゆかない。中盤のストッパー役としてオシムの信任厚く、すっかりアンタッチャブルな存在になってしまった鈴木啓太がいる以上、もうひとりのボランチには、もっと攻撃的な姿勢をはっきりと見せてもらわないと。
この試合での稲本は、個人としてのいいプレーはあったものの、チームへの貢献という意味では、まだまだ足りない印象があった。ボールを持った時には、さすがヨーロッパ仕込みと思わせるすごみを見せるものの、その反面、消えている時間も多かった。
これは途中出場だった松井も同じ。果敢なドリブル突破は魅力的だったけれど、そうした個人技以外の面でのチームへのプラスアルファはあまり感じなかった。二人とも、もっと運動量を増やして、コンスタントにボールに触るようにしないと、流動的ないまのチームには貢献できないんじゃないだろうか。守備の場面において、ボランチの稲本や途中出場の松井よりも、俊輔の方が目立っているようじゃ、しょうがないだろう。
なんにしろ、試合自体もスコアレスに終わってしまい、海外組のプレーにもチーム全体のパフォーマンスにも、やや消化不良な感が残った一戦だった。
ちなみにこの試合は単なる親善試合ではなくて、三大陸トーナメントとかいうイベントだそうで、勝敗を決するために延長戦なしのPK戦があった。放送時間は早朝3時からだったので、当然観戦は録画。慎重を期して録画時間を延長しておいて助かった。まあ、そのPK戦では、俊輔、遠藤、憲剛、今野、中澤の五人が蹴って、最後の二人が外して負けたんだけれど。どうにもオシムはジーコと違って、勝ち運がない気がする。
対戦相手のオーストリアは、来年開催されるヨーロッパ選手権の開催国で、なおかつ、ここ数試合は勝ち星がないとかで、日本ごときに負けられるかとばかりに、序盤から気合いの入ったプレーを見せていた。観客もさすがヨーロッパで、バックラインでボールを回したりしていると、容赦なくブーイングが巻き起こる。ああいう環境だと、バックラインでだらだらボール回しをしたりもしていられないだろう。観客が試合を作るという面もあるんだなあと、あらためて教えられた気がする。なんにしろ、横パスだらけのいまの日本代表にとっては、アウェイの戦いを満喫する上で、うってつけの対戦相手だった。
(Sep 08, 2007)