鹿島アントラーズ3-2ガンバ大阪
ナビスコカップ・準決勝/2007年10月13日(土)/カシマスタジアム/フジテレビ(録画)
ホーム&アウェイで2試合を戦い、合計スコアの多いほうが勝ち、もしも同じ場合には、アウェイでのゴール数が多いほうを勝ちとするという、いわゆるアウェイ・ゴール方式が採用されているナビスコ杯・準決勝。
3日前に行われたアウェイの一戦に0-1で負けたアントラーズは、このホームでの2戦目に2点差で勝つことが義務づけられていた。相手は今年になって3回対戦して、すべて負けているガンバ大阪。ただ勝つだけでも難しいのに、2点差をつけろってのは、かなりシビアな要求だ。言っちゃなんだけれど、決勝進出の可能性はかなり低そうだと思っていた。
ただ、試合が始まってみて、おやっと思う。ガンバはマグノ・アウベスに続き、バレーまで故障で戦線離脱してしまっている。さらには五輪代表に招集されて、家長と安田もいない。さすがのガンバもこうなると、持ち前の攻撃力は何割減。あいかわらず中盤でのボール回しは華麗だけれど、フィニッシュにはそれほど恐さがない。
対するアントラーズは、曽ヶ端、中後、岩政、大岩、新井場、青木、小笠原、本山、野沢、田代、マルキーニョスというスタメン。こちらも五輪代表の内田を欠き、故障明けの柳沢をベンチに置くという布陣ながら、それでも準ベストと呼べる顔ぶれだ。これならば、飛車角落ちといった感のあるこの日のガンバにならば、じゅうぶん太刀打ちできそうに思えた。
スタメンで意外だったのは、中後の右サイドバックでの起用。これまで内田篤人がぬけた時には、新井場を右サイドに持ってきてその穴を埋め、左サイドには石神を起用するというパターンだった。去年だとユーティリティの効く青木が内田のポジションにそのまま入ることが多かった。どちらにせよ、中後の左サイドバックというのは、僕の記憶にはない。
開幕当時はボランチのレギュラー・ポジションを獲得した感のあった中後だけれど、途中で怪我をして戦線離脱してからあとは、なんとなくぱっとしない印象で、その頃にチームに戻ってきた小笠原との相性も悪かったのか、ここのところは青木にポジションを奪われていた。それでも経験値は確実に石神よりも高い。大事なこの一番、オリヴェイラ監督は新井場を不慣れな右サイドに回して、経験値の低い石神をつかうよりは、基本的なフォーメーションを維持したまま、中後の適応力に期待したほうがいいと判断したのだと思う。
ただ、アウェイ・ゴール方式を考えると、この試合は失点をいかに防ぐかがなにより重要なわけで、その点、プロパーなDFではなく、本来ボランチの中後をDFにコンバートしたのが成功だったかは、ちょっと疑問。なんたって前のアウェイの試合をPKの1点のみで切り抜けた相手に、このホームで試合で2点を献上してしまったのだから。
いや、でも前半は無失点だったことを考えると、別に悪いのは中後やフォーメーションということもないんだろうか。とりあえず、前半の戦いぶりは文句なしだった。あいかわらず中盤では負けていた感があるけれど、それでも、こと決定機はおそらくこちらのほうが多かったし。そんな流れの中から生まれた本山の2ゴールには、ひさしぶりに痺れさせてもらった。ひとつめは左から、ふたつめは右から。どちらも落ち着いて打った、いいシュートだった。ジーコの後継者たるもの、いつでもこういうプレーを見せて欲しいところだ。
問題は2-0とリードしていながら、守りきれなかった後半の失点。特に、見事な連係からの播戸の1点目はともかく、セットプレーからの2点目がなあ。あそこでファーサイドのシジクレイがフリーってのは、いったい……。
後半わずか4分に播戸にゴールを決められたあと、アントラーズはすぐに小笠原のラッキーなFK──相手DFにあたってコースが変わった──で3点目を奪い、ふたたび2点差をつけてみせた。そのままの流れならば、おそらくアントラーズが勝っていたんじゃないかと僕は思う。ところがそれから間もなくして、前半大活躍だった本山が膝を痛めて途中交替してしまう。替わりに出てきたのがダニーロだった。この交替で試合の流れが、水面下でひそかに変わってしまった気がする。
前回、最後にJ1の試合で見たときには、なかなかの存在感を発揮して僕を感心させてみせたダニーロだけれど、その後、怪我をして戦線離脱してしまい、この試合がひさしぶりの出場だった。そのせいか、なんだか以前の状態に戻ってしまったようで、あまり精彩がない。特別どこがひどいというわけではないけれど、かといって中盤を安心して任せられるような出来とも思えなかった。
そんなダニーロの出場と前後して、ガンバ大阪のほうも、故障明けのマグノ・アウベスを投入してきた。ガンバのサブのメンバーを見落としていた僕としては、おいおい、マグノが使えるのかよという、寝耳に水の交替劇だった。これ以上の失点はどうしても避けたい展開で、後半を30分も残しての相手のエース・ストライカーの復活は、脅威もいいところだ。
結果として、マグノ・アウベスはこれといった仕事はできていなかった。それでも前半2得点の本山が途中交替した直後にガンバのエースが登場してきたという、このふたつの交替劇が、暗黙のうちに試合の流れを変えてしまったような気がする。結局、勝敗を決することになるシジクレイのヘディングがアントラーズのゴールを揺らしたのは、マグノ・アウベスがピッチに立った、わずか5分後だった。
あとでリプレイを見てみれば、そのとき、シジクレイの前にいたのが、ダニーロだったりする。ああ、ダニーロさん……。たっぱがあるんだから、セットプレーの時にはもっとちゃんとディフェンスしてくれよなあ。
終盤、オリヴェイラ監督は、野沢を柳沢に、大岩を興梠に替えて、FWを4人にする超攻撃的なメンバーチェンジで、徹底したパワープレーを仕掛けてみせた。それでも結局、4点目は入らずじまい。アントラーズは惜しくも2年連続でのナビスコカップ決勝進出を逃すことになった。いや、ほんとに惜しい試合だった。残念無念。
(Oct 14, 2007)