2007年10月のサッカー

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  1. 10/13 ○ 鹿島3-2G大阪 (ナビスコ杯・準決勝)
  2. 10/17 ○ 日本4-1エジプト
  3. 10/17 ● U-22カタール2-1U-22日本 (五輪最終予選)
  4. 10/20 ○ 磐田1-3鹿島 (J1・第29節)

鹿島アントラーズ3-2ガンバ大阪

ナビスコカップ・準決勝/2007年10月13日(土)/カシマスタジアム/フジテレビ(録画)

 ホーム&アウェイで2試合を戦い、合計スコアの多いほうが勝ち、もしも同じ場合には、アウェイでのゴール数が多いほうを勝ちとするという、いわゆるアウェイ・ゴール方式が採用されているナビスコ杯・準決勝。
 3日前に行われたアウェイの一戦に0-1で負けたアントラーズは、このホームでの2戦目に2点差で勝つことが義務づけられていた。相手は今年になって3回対戦して、すべて負けているガンバ大阪。ただ勝つだけでも難しいのに、2点差をつけろってのは、かなりシビアな要求だ。言っちゃなんだけれど、決勝進出の可能性はかなり低そうだと思っていた。
 ただ、試合が始まってみて、おやっと思う。ガンバはマグノ・アウベスに続き、バレーまで故障で戦線離脱してしまっている。さらには五輪代表に招集されて、家長と安田もいない。さすがのガンバもこうなると、持ち前の攻撃力は何割減。あいかわらず中盤でのボール回しは華麗だけれど、フィニッシュにはそれほど恐さがない。
 対するアントラーズは、曽ヶ端、中後、岩政、大岩、新井場、青木、小笠原、本山、野沢、田代、マルキーニョスというスタメン。こちらも五輪代表の内田を欠き、故障明けの柳沢をベンチに置くという布陣ながら、それでも準ベストと呼べる顔ぶれだ。これならば、飛車角落ちといった感のあるこの日のガンバにならば、じゅうぶん太刀打ちできそうに思えた。
 スタメンで意外だったのは、中後の右サイドバックでの起用。これまで内田篤人がぬけた時には、新井場を右サイドに持ってきてその穴を埋め、左サイドには石神を起用するというパターンだった。去年だとユーティリティの効く青木が内田のポジションにそのまま入ることが多かった。どちらにせよ、中後の左サイドバックというのは、僕の記憶にはない。
 開幕当時はボランチのレギュラー・ポジションを獲得した感のあった中後だけれど、途中で怪我をして戦線離脱してからあとは、なんとなくぱっとしない印象で、その頃にチームに戻ってきた小笠原との相性も悪かったのか、ここのところは青木にポジションを奪われていた。それでも経験値は確実に石神よりも高い。大事なこの一番、オリヴェイラ監督は新井場を不慣れな右サイドに回して、経験値の低い石神をつかうよりは、基本的なフォーメーションを維持したまま、中後の適応力に期待したほうがいいと判断したのだと思う。
 ただ、アウェイ・ゴール方式を考えると、この試合は失点をいかに防ぐかがなにより重要なわけで、その点、プロパーなDFではなく、本来ボランチの中後をDFにコンバートしたのが成功だったかは、ちょっと疑問。なんたって前のアウェイの試合をPKの1点のみで切り抜けた相手に、このホームで試合で2点を献上してしまったのだから。
 いや、でも前半は無失点だったことを考えると、別に悪いのは中後やフォーメーションということもないんだろうか。とりあえず、前半の戦いぶりは文句なしだった。あいかわらず中盤では負けていた感があるけれど、それでも、こと決定機はおそらくこちらのほうが多かったし。そんな流れの中から生まれた本山の2ゴールには、ひさしぶりに痺れさせてもらった。ひとつめは左から、ふたつめは右から。どちらも落ち着いて打った、いいシュートだった。ジーコの後継者たるもの、いつでもこういうプレーを見せて欲しいところだ。
 問題は2-0とリードしていながら、守りきれなかった後半の失点。特に、見事な連係からの播戸の1点目はともかく、セットプレーからの2点目がなあ。あそこでファーサイドのシジクレイがフリーってのは、いったい……。
 後半わずか4分に播戸にゴールを決められたあと、アントラーズはすぐに小笠原のラッキーなFK──相手DFにあたってコースが変わった──で3点目を奪い、ふたたび2点差をつけてみせた。そのままの流れならば、おそらくアントラーズが勝っていたんじゃないかと僕は思う。ところがそれから間もなくして、前半大活躍だった本山が膝を痛めて途中交替してしまう。替わりに出てきたのがダニーロだった。この交替で試合の流れが、水面下でひそかに変わってしまった気がする。
 前回、最後にJ1の試合で見たときには、なかなかの存在感を発揮して僕を感心させてみせたダニーロだけれど、その後、怪我をして戦線離脱してしまい、この試合がひさしぶりの出場だった。そのせいか、なんだか以前の状態に戻ってしまったようで、あまり精彩がない。特別どこがひどいというわけではないけれど、かといって中盤を安心して任せられるような出来とも思えなかった。
 そんなダニーロの出場と前後して、ガンバ大阪のほうも、故障明けのマグノ・アウベスを投入してきた。ガンバのサブのメンバーを見落としていた僕としては、おいおい、マグノが使えるのかよという、寝耳に水の交替劇だった。これ以上の失点はどうしても避けたい展開で、後半を30分も残しての相手のエース・ストライカーの復活は、脅威もいいところだ。
 結果として、マグノ・アウベスはこれといった仕事はできていなかった。それでも前半2得点の本山が途中交替した直後にガンバのエースが登場してきたという、このふたつの交替劇が、暗黙のうちに試合の流れを変えてしまったような気がする。結局、勝敗を決することになるシジクレイのヘディングがアントラーズのゴールを揺らしたのは、マグノ・アウベスがピッチに立った、わずか5分後だった。
 あとでリプレイを見てみれば、そのとき、シジクレイの前にいたのが、ダニーロだったりする。ああ、ダニーロさん……。たっぱがあるんだから、セットプレーの時にはもっとちゃんとディフェンスしてくれよなあ。
 終盤、オリヴェイラ監督は、野沢を柳沢に、大岩を興梠に替えて、FWを4人にする超攻撃的なメンバーチェンジで、徹底したパワープレーを仕掛けてみせた。それでも結局、4点目は入らずじまい。アントラーズは惜しくも2年連続でのナビスコカップ決勝進出を逃すことになった。いや、ほんとに惜しい試合だった。残念無念。
(Oct 14, 2007)

日本4-1エジプト

2007年10月17日(水)/長居スタジアム/テレビ朝日

 AFCアジア/アフリカチャレンジカップ2007と銘打ったこの試合、日本サッカー協会の皮算用では、日本代表がアジアカップを制して、アフリカのチャンピオンであるエジプトと対戦する、というシナリオを狙っていたんだろうけれど、あけてみれば日本はアジアカップでベスト3にも入れず、エジプトも主力がクラブ優先でほとんど来日しないという、いまひとつ締まらない状況で開催された今年最後の代表戦。
 スタメンはGK川口、DF加地、中澤、阿部、駒野、MF遠藤、啓太、憲剛、山岸、FW大久保、前田遼一という顔ぶれ。エジプトが若手中心のメンバー構成だということで、事前情報では、日本も戦力底上げのための大幅なメンバーチェンジをおこなうのではないかという噂もあったけれど、そこはオシム氏。今回もたいして意外性のないセレクションだった。
 闘莉王はねんざのため招集が見送りになったそうで、中澤とセンターバックでコンビを組んだのは、またもや阿部だった。この形の4バックは、アジアカップでさんざん見せられているので、あまりおもしろみがない。大久保と前田の2トップというのはちょっと新鮮だけれど、これも田中達也を加えた3トップという形で、夏ごろのカメルーン戦ですでに披露済み。あまり貢献度が高いとも思えない山岸をあいかわらず使うし、途中出場も藤本、橋本、今野と、いたって地味だし。なんだかこう、メンバー表を見ても、いまひとつわくわくしない。
 まあ、そうは言っても、アフリカのチャンピオン・チームに快勝してみせてくれちゃうのだから、やっているサッカーは決して悪くない。相手が主力を欠いているとはいえ、こちらだって海外組の招集を見合わせているわけだし。得点はすべて流れの中からで、しかもそのうち3点がFWのものとなれば、ケチをつけるのがどうかしている。
 たとえば、日本が海外組やレッズの選手抜きでアフリカ遠征を行ったとして、現地のチームに4失点して負けたらば、大ブーイングだろう。でもそんな日本代表はいまとなると考えられない。たとえ俊輔や闘莉王がいなくても、この日のエジプトのようにメンバーを大きく入れ替えたとしても、いまの日本代表ならば、そんなにぶざまな戦いはしないだろうと僕らは思っている。そういう信頼感があるだけでも、日本はずいぶんと強くなっているんだろう。セットプレーからの不用意な失点があいかわらず余計だけれど──なんでこうも同じような失点を繰り返すかなあ。そこだけは反省して欲しい──、まずまず満足のゆく一戦だった。
 それにしてもようやく大久保が代表初ゴールを決めてくれたのが、やはり嬉しい。調べてみたら、彼が初めてA代表に招集されたのは、03年5月の日韓戦のことだった。あの頃の大久保は、アテネ五輪代表チームのエースとして、次世代の日本代表を背負うだろう存在として、大きな期待を担っていたものだった。それがまさか、それから4年もたって──次の五輪代表が最終予選を戦っている時期に──、ようやく代表初ゴールなんてことになるなんて……。まったく、遠回りしすぎもいいところだ。ここからはブレーキを踏むことなく、南アフリカ大会まで突っ走って欲しい。
 なにはともあれ、今日の2ゴールは素晴らしかった。1点目は遠めの位置から思い切りよく打ったミドルで、斜めにゴールマウスに吸い込まれ、直接サイドネットに突き刺さった。2点目は遠藤の右からのピンポイント・クロスに頭で合わせたもので、たたきつけるヘディングのお手本として、教科書に載せたくなるような、きれいなシュートだった。まったく、いままで代表で無得点だったのが嘘みたいだ。
 これら大久保の2ゴールはどちらも前半のことで、後半に入ってからの3点目は前田。彼もこれが代表初ゴールだった。
 前田は柔らかなボールタッチと豊富な運動量が好印象で、こと決定機の数では大久保を上回っていた。ただ、あまりに外しすぎ──というか、GKに止められすぎ。あれだけチャンスがあったらば、あと1本くらいは決めておいてくれないと、高原のレギュラーの座は脅かせない。
 本当ならば、この3点を守り切って完封勝利で終わってくれれば、文句なしだったのだけれど、どうもそのあとがいけない。日本代表はそのわずか5分後に、山岸がペナルティエリア付近でハンドをおかしてFKをとられ、そこから失点を許してしまう。いまのチームは相手のセットプレーに対して脆すぎるのが、一番の欠点だと思う。
 でもまあ、この日はそのあとちゃんと追加点してみせたのが立派だった。4点目はサイドチェンジのパスを受けた加地のグラウンダーのシュート。なんでも彼もこれが代表2ゴール目だそうだ(初ゴールはドイツW杯最終予選でのイラン戦)。
 まあ、失点のシーンはちょっとなんだったし、相手のシュートミスに助けられた場面も2、3度あったけれど、それでも4点を流れの中からとってみせるという、いつもの得点力不足な嘘のような景気のいい試合で、とりあえず一年の締めくくりとしては上々だった。
 次の親善試合は来年の1月だそうだ。そして2月からは、早くもワールドカップの予選が始まるという……。
(Oct 18, 2007)

U-22カタール2-1U-22日本

オリンピック最終予選/2007年10月17日(水)/ドーハ(カタール)/BS1

 おいおいおいおいおい、ロスタイム残り30秒でハンドを取られてPKで逆転負けなんて、そんなのないだろう。
 とにかくこの試合、僕はむちゃくちゃ眠かった。この頃は年のせいか、めっきり夜が弱くなったのに加え、ドライアイの影響もあって、目が疲れて仕方ない。週の中日に、午前1時キックオフの試合を見るのは、正直なところ、かなりつらかった。それでも五輪出場に向けての大事な試合だ。見ないわけにはいかない。眠らないよう、夜だというのにブラック・コーヒーをおかわりしたりして、のぞんだ試合だった。それなのに、ああ……。まったく、なんて負け方をしてくれることやら。
 この日の五輪代表のフォーメーションはまたもや4-5-1。GK山本、4バックが内田、青山直、水本、伊野波、ダブルボランチが青山敏と細貝、左右のウィングが水野と本田圭佑、トップ下に柏木、ワントップが李忠成という形だった。
 本田拓也が累積警告で出場停止、梶山は前の試合で骨折して戦線離脱と、ここのところ、レギュラーだったボランチの二人がともに出られなかったこの試合。もともとレギュラー格の青山敏弘はともかく、細貝のボランチでの起用や、ふたたび内田と伊野波を両サイドに起用しての4バック、李のワントップなど、前回の試合からの微調整という印象のフォーメーションは、僕としてはやはり疑問だった。途中交替が水野→家長、李→森島、柏木→上田康太ってのも、あまりぴんとこない。
 とにかくこのチームは点がとれない。なにがどう悪いんだかわからないけれど、とにかくとれない。この試合もセットプレーからの青山直の一点のみで、この最終予選はここまで4試合を戦って、得点はセットプレーからの3点のみという成績。これはもう、構造的に欠陥があるとしか思えない。
 それなのに、こんなに点がとれないのに、反町監督はワントップを選択する。単純に考えれば、ゴールに近い位置でプレーする選手を増やさなきゃ、仕方ないだろう。そもそもなんで4バックなんだろう。前の試合の時にも書いたけれど、伊野波がほとんど攻め上がらない、いまみたいな状態だったらば、形ばかりの4バックなんて意味がない。僕ならば、3バックに戻して、あとの5人はそのままで、FWを2枚にする。得点力に問題がある状況で、わざわざDFを増やしてFWを削る意図がわからない。
 個々の選手のプレーにはあまり不満はなかった。みんながんばっていたと思う。ただ、あまりにも点が入らないし、A代表と同じようにセットプレーからイージーに失点するし、そして後半ロスタイムにまさかの逆転を食らうし。なんなんだ、いったいこれは。
 本当、いつもながらボールは持てるのに、まるでゴールの匂いのしない、あまりに毎度の試合展開だったので、後半は眠い目をこすりながら、とにかく試合終了の笛が鳴るのを、いまか、いまかと待っていた。
 ああ、あと30分もあるよ──眠い──あと15分──あらら、同点にされちゃったぜ、ちくしょうめ、こりゃ勝ち点1だなあ──あと10分──あと5分──ロスタイムは3分──ああ、あと1分で横になれる。こりゃベッドに入ったとたんにぐっすりだ──あと30秒……、んん、なんだなんだ、おいおいPKだあ?
 ちっくしょう、あのPKで目が覚めました。試合終了後、やってらんねんぜと、すぐに横になったけれど、眠れない。結局、30分くらいは敗戦の原因やらなにやら、あれこれ思いをはせつつ、悶々としていたと思う。本当にいやんなってしまう。
 結果、日本はカタールと勝ち点、得失点差で並んで、総得点で1ビハインドという状況で2位にあまんじることになった。それはつまりもう自力での本戦進出はないってことだろう。いやはや、ドーハの悲劇ふたたび……。
 でもまあ、済んでしまったことは仕方ない。まだ最終予選は終わっていない。あとはとにかく残り2試合を勝つこと、しかもカタールより1点でも多くとって勝つこと、それだけだ。ちゃんと2連勝して、カタールより1点でいいから多く取りさえすれば、日本のオリンピック出場は決まる。ある意味、わかりやすくていい。その前にカタールがサウジに負ける可能性も大いにあるんだし。
 なんにしろ、こうなった以上、次のアウェイのベトナム戦では、開き直って超攻撃的なサッカーを見せてくれるよう、願ってやまない。頼んだぜっ。
(Oct 18, 2007)

ジュビロ磐田1-3鹿島アントラーズ

J1・第29節/2007年10月20日(土)/エコパスタジアム/BS1

 この両チームの対戦が黄金カードと呼ばれたのも、ひと昔前の話で、いまとなると、なんでリーグ終盤のこの時期にテレビ放送があるのか、そのほうが不思議になってしまう。アントラーズは現時点で3位につけているとはいえ、残り試合数を考えれば、優勝の可能性はゼロに近いし、悲しいことにいまや日本代表がゼロ。対するジュビロは川口や前田ら、日本代表こそ輩出しているものの、今シーズンは一度も優勝戦線に絡むことがなかった。もちろん、両チームともポテンシャルは決して低くないので、そうそうつまらない試合にはならないのだけれど、それでもなんとなく、ものたりない気分をおぼえてしまうのは、数々の名勝負を演じてきた両者の過去を知っているからだろう。
 この日の鹿島のスタメンは、曽ヶ端、内田、岩政、大岩、新井場、青木、小笠原、本山、野沢、マルキーニョス、田代という組合せ。
 対するジュビロはGK川口、DF加賀、田中誠、茶野、MFエンリケ、マルキーニョス・パラナ、成岡、村井、西、FW前田、カレン・ロバートという顔ぶれ。
 普段は書きとめない相手チームのスタメンを今回わざわざ書いてみたのは、その顔ぶれが興味深かったからだ。藤田、名波、福西、服部──鹿島と{しのぎ}を削っていた頃のジュビロの中心だったそうした名選手たちが、ものの見事にいなくなっている。唯一の例外はこの日、最後までベンチだったゴン中山だけ。
 でも、だから弱くなかったのかというと、そうとも思えない。スタメンの顔ぶれを見れば、GKは川口だし、田中、茶野、村井、西、前田と、新旧の日本代表経験者を数多く擁しているし、カレン・ロバートや上田康太(途中出場)ら五輪代表の選手もいる。成岡も代表歴こそないけれど、若くして10番を背負うくらいで、デビュー当時から評価の高い選手だし、ボランチには新顔のブラジル人2人を配している。これで弱いチームのはずがない。
 それでも、いまのジュビロにかつてのような恐さがないというのも確かなところだったりする。なんでもこの対戦でここ8試合くらい、鹿島は負け知らずなのだそうだ。確かにこの日も特別、脅威は感じなかった。
 まあ、単純に見てしまえば、ゴンや名波が中心だったジュビロと、小笠原や本山ら、彼らよりひと世代あとの選手が中心だったアントラーズで、その世代の差が現状に出た、ということなのかもしれない。磐田の場合、名波ら、中心選手の経験を上手く後輩たちに伝えてゆくことができないまま、安易に彼らを放出してしまった結果が、現状の中途半端な成績につながっているんだろう。
 そう考えると、アントラーズもあまり他人事ではない。いまはまだ小笠原や本山が元気にやっているからいいけれど、じゃあ、彼らの力が衰え始めた頃に、いまのジュビロのようなことにならないかというと、{はなは}だ心許ない。最近、小笠原が戻ってきてからの野沢のプレーぶりを見ていると、なおさらそんな不安がつのる。
 小笠原の復帰については、戦力の充実という面では申し分なかったけれど、その反面で、野沢や中後、増田ら、若手の出場機会を奪い、モチベーションを下げるという悪影響も少なからずあるのではないかと思う。本来ならば、今シーズンのチームの中核として活躍するはずだった野沢なんて、小笠原の復帰とともに、なんだかいまひとつ精彩を欠いてしまったような印象がある。本人が否定しようとも、実際にはそれまで任されていたFKのキッカーの役を奪われたりしているわけで、心理的なマイナスは否めないと思う。
 レギュラーポジションを失った中後や、五輪予選に向けての貴重な途中出場の機会が減ってしまった増田や興梠などもそう。出番が減るのは実力だから仕方ない、と割り切って奮起してくれればいいけれど、人間、そう簡単に割り切れるものじゃない。なんだか、その辺の微妙な力関係のあやが、今シーズンここまでの、十冠にあと一歩届かない成績につながってきているような気がする。
 でもまあ、なんにしろ現状では、ジュビロよりもアントラーズの方がまだまし、という状況には変わりがないわけで。この日の試合では、前半こそ相手のペースで中盤を制されて──どうもこの前のガンバ戦といい、優秀なMFがそろっているわりには、今年はなぜか中盤のせめぎあいに弱い──、ほとんど見せ場らしい見せ場が作れなかったけれど、後半はオリヴェイラ監督の指示で、そうした試合内容を反省したらしく、五分に渡りあえるようになって、得意のセットプレーから続けて2得点を奪取──決めたのはマルキーニョスと岩政。最後は途中出場の柳沢が、得意のディフェンス・ラインの裏をとる動きから川口と一対一のチャンスを作り、(2度目に)これをきちんと決めて、勝負を決定づけた。
 まあ、1点失ったのは余計だったけれど、それでも後半の内容は文句なし。仇敵を難なく退けて、アントラーズがリーグ戦4連勝を飾ってみせた。
 ちなみにジュビロの得点は、記録では鈴木秀人──茶野に代わって途中出場していた──のゴールということになっているけれど、リプレイではダニーロ(彼も途中出場)のオウンゴールに見えた。まったく彼ときたらば……。
(Oct 22, 2007)