川崎フロンターレ0-1ガンバ大阪
ナビスコカップ・決勝/2007年11月3日(土)/国立競技場/フジテレビ
今年のナビスコ杯決勝は、Jリーグでも屈指の攻撃力を誇る両雄の対戦とあって、両チームのサポーターではない僕にとっても、それなりに楽しみな一戦だった。
どちらのチームもナビスコ杯はこれが二度目の決勝進出で、なおかつ前回はあと一歩のところでタイトルに届かなかったのも同じ。で、個人的にはその試合は両方とも、それなりに印象に残っている。
ガンバの前回は一昨年、初のリーグ制覇を成し遂げた年だった。いまと同じく圧倒的な攻撃力が武器だったにもかかわらず、ジェフに完封を食らって、PK戦で負けた。そのとき、両チームで唯一PKを失敗したのが、いまやPKの名手として有名な遠藤。噂によると彼はJリーグにデビューして以来、これまでに2度しかPKを失敗したことがないのだそうだけれど、そのうちの1回というのがそのときだったわけだ。
かたや川崎が前回ナビスコ杯決勝に駒を進めたのは00年のこと。その試合の相手というのが、われらが鹿島アントラーズだった。あの頃のフロンターレは今とは違って、なんで決勝まで勝ち残ってきたのか不思議に思ってしまうような弱小チームだったから、こちらとしては決勝戦とはいえ、勝って当然という感じで、拍子抜けするくらいあっさりと優勝が決まってしまった。おかげで妙なものたりなさを味わった記憶がある。
まあ、そんな風におたがい、過去に決勝戦で敗れているもの同士の対決だったわけだけれど……。
かたやガンバは遠藤をはじめ、その時にさんざん悔しい思いをした選手たちがいまも中心。いっぽうフロンターレは、あの頃とはすっかり陣容が変わっていて、調べてみた限りでは、当時は我那覇──この日はベンチ入りさえしていなかった──や箕輪、寺田がデビュー2年目とかだったようなので、おそらく前回負けた悔しさを知る選手はこの日はひとりもいなかったんだろう。そういう意味では、タイトルにかける思いという点では、ガンバのほうは強かったんじゃないかと思う。
で、実際に見てみると、やはり戦力の上でもガンバのほうがひとつ上な感じ。マグノ・アウベスとバレーの2トップ、二川、遠藤、橋本、明神という新旧・日本代表の玄人受けしそうな顔ぶれがそろった中盤に、加地、山口、シジクレイ、安田という最終ラインは、すごく強力だ。GKの藤ヶ谷は、ややネームバリューが低い印象だけれど、この日はいくつかファインセーブを見せていたし、さすがにこのメンツをうしろから支えるだけのことはあると思った。
まあ、2トップがともに故障明けで、特にバレーの出来がいまひとつだったり、シジクレイが寄る年波のせいか、二つ三つ凡ミスをして、ピンチを招いていたのは気になったけれど、それでもサッカーの内容的には、やはりリーグ2位は伊達じゃないという充実ぶりだった。このチーム、中盤の構成力からいうと、かなりオシム・ジャパンに近い気がする。
対する川崎は、現在J1得点王のジュニーニョこそ強力なものの、コンビを組むチョン・テセ(鄭大世)──J1では前節、ハットトリックを達成している──がいまひとつ。中村憲剛や谷口など、代表でおなじみの選手もがんばってはいたけれど、それでも最後はセットプレーか、カウンターからのジュニーニョの個人技が頼りという感じがあった。でもまあ、そうやって作り出したビッグ・チャンスの数では、もしかしたらガンバを上回っていたかなという気もする。結局、それらをひとつも決めきれなかったのが痛かった。そういえばマギヌンが出場停止だったのも誤算だろう。
まあ、とにかく攻撃力が魅力の両チームではあるけれど、決勝戦だけあってまずは守備ありき。中盤のプレッシングが徹底しているから、そうそう得点は入らない。1-0というスコアは、ある程度、予想の範囲内だった。
決勝点は、バレーが右サイドから入れたクロスを、二川が空振りして、そのうしろの
十九歳の安田はこれがJリーグ初ゴールだったそうだ。この日の彼と川崎の右サイド・森勇介との一対一は非常に見ごたえがあったし、この試合のMVPに選ばれたのも当然という大活躍だった。
そういえば、去年のナビスコカップ決勝では、ジェフの水野のゴールでアントラーズが負けたんだったよなあと……。同じ五輪代表で、さらにひと世代下の安田の活躍をみて、そんなことも思い出した。こうやって年々、新しい才能が出てくるのだから、Jリーグも捨てたもんじゃないだろうと思う。
(Nov 04, 2007)