2008年2月のサッカー

Index

  1. 02/06 ○ 日本4-1タイ (W杯・3次予選)
  2. 02/17 △ 日本1-1北朝鮮 (東アジア選手権)
  3. 02/20 ○ 中国0-1日本 (東アジア選手権)
  4. 02/23 △ 日本1-1韓国 (東アジア選手権)

日本4-1タイ

ワールドカップ・アジア3次予選/2008年2月6日(水)/埼玉スタジアム2002/BS1

 2010年の南アフリカを目指しての戦いは、雪の降る埼玉スタジアムで始まった。
 降雪地帯に住む人からみれば、なんだこの程度、降っているうちに入らないじゃんという雪なんだろうけれど、温暖化の進むこの頃の東京近辺では、雪が降ってるというだけで大変なことのような気がしてしまう。そうでなくても不惑をすぎて、めっきり寒さに弱くなった僕は、こんなコンディションのなかでサッカーやっているというだけで頭が下がる。それは雪のちらつく寒空の下、埼玉に集まった3万5千人の観客に対しても同様。スタジアムの半分が空席であろうと、残り半分はこうして日本代表を愛する人たちで埋まっているんだから、それだけでも偉いものだ。ということで、チームの出来はあいかわらずいまいちだったのだけれど、あまりつべこべいう気になれない一戦だった。
 この日のスタメンはGK川口、DF内田、中澤、阿部、駒野、MF啓太、憲剛、遠藤、山瀬、FW高原、大久保の11人。前の試合後に僕が期待したどおりの顔ぶれだったけれど、でもこの日も内容はいまひとつ。相手が格下だから、パスは自由にまわせるものの、やはりフィニッシュが遠い。前半はツートップあわせてシュートがわずか1本だった(高原が枠を外した)。やはりFWがゴールの近くで仕事ができないようじゃ苦しい。
 それでも実力はこちらのほうがあきらかに上。そうこうするうちに前半なかばに遠藤が完璧なFKを決めて日本が先制する。よーし、これでこの試合は決まり──っと思ったのが甘かった。そのわずか1分後に、タイの選手に、信じられないようなビューティフルなミドルシュートを決められ、同点においつかれてしまうんだから、びっくりだ。
 あの同点の場面はほんと、いただけなかった。あまりにプレスがゆる過ぎた。いくら相手がタイの選手で、おまけにゴールまで距離があったとはいえ、ゴール真正面であんな風にフリーでボールを持たせたら駄目だろう。ああいう風に中盤の底でふっと気を抜いてしまって、思わぬ距離からミドルシュートを決められて痛い目を見るというのは、以前はよくあるパターンだった。でもそれだって、相手が強豪国だったりした場合だ。最近は日本のサッカーも進化したし、プレッシングが徹底されているから、そういうミスはなくなったと思っていたのに、こともあろうかタイに決められちゃうなんて……。まあ、これもアジアのサッカーも日々進歩しているということの証拠かもしれない。
 結局、前半はその同点ゴールのショックさめやらぬといった感じで終了。ピッチをあとにする遠藤たちの渋い顔も当然という内容だった。カメラが切り替わってみると、放送席の山本昌邦氏と山口素弘もそうとう渋い顔をしていたのには、ちょっと笑った。
 後半についてもそれほどよかったとは思わないけれど、それでも3点を奪っていることだし、勝ち点3はきちんと手に入れたから、とりあえず文句なし。
 決勝点となった2点目は大久保のゴールで、そのお膳立てをしたのは山瀬だった。ゴールラインを割りそうなボールをしぶとくキープして、ドリブルでゴール前に切れ込んでみせた。あいにくボールを奪われてしまい、自らヒーローにはなり損ねたけれど、そこに中村憲剛が加わって、途切れかけたチャンスを呼び戻す。相手DFがサイドに蹴りだそうとしたボールは、憲剛が出した足にあたって勢いよく跳ね返り、ゴール前につめていた大久保の足元へ。大久保は瞬時にこれに反応。右足のワンタッチでコースを変えて、ゴールへと流し込んでみせた。ラッキーな展開ではあったけれども、それでも山瀬の諦めない姿勢と中村の積極的な攻撃参加、そして大久保のFWらしい反応のよさがあいまって生まれた、なかなか味のあるゴールだった。
 あとの2点はどちらもセットプレーからで、決めたのは中澤と、途中出場の巻。タイは大久保のゴールのあとで、10番の選手が2枚目のイエローをもらって退場してしまい、その時点でもう勝負ありという感じだった。
 ということで、日本代表が2010年のW杯出場に向けて、無難な第一歩を踏み出した一戦だった。そういえば、この日もスタンドの個室ではオシムさんが家族ともども観戦していた。前回は母国との対戦だったから無理してきていたのかと思ったら、そういうわけでもなかったらしい。本当にサッカーが好きなおじいさんだ。
(Feb 06, 2008)

日本1-1北朝鮮

東アジアサッカー選手権/2008年2月17日(日)/中国・重慶/TBS

 高原が体調不十分だということで招集を見送られたり、坪井が出番の少なさに見切りをつけて、みずから代表引退を宣言したりと、いきなりさびしい話がつづいたと思ったらば、さらには大久保、巻、阿部といったレギュラー陣が、あいつぐ故障で招集を辞退(気がつけばレッズの選手は啓太しかいない)。岡田さんは代わりにわれらがアントラーズの田代有三やガンバの安田理大を追加招集して、中国で開かれる東アジアサッカー選手権にのぞむことになった。
 初戦となる北朝鮮戦のスタメンは、GKがなんと川島、DFが内田、中澤、水本、そして左サイドが加地、MF啓太、遠藤、山岸、羽生、そしてFWが播戸と田代のツートップという布陣だった。川島と田代、そして後半途中から出場した安田が代表初キャップ、水本や播戸、羽生もひさしぶりのスタメン出場、加地は自身初の左サイドバックと、なんだか、ちょっぴりもの珍しい顔ぶれの日本代表になった。中村憲剛は発熱のため欠場とのこと。
 それにしてもなんで加地が左サイドなんだろう。なんで山瀬がベンチで、羽生と山岸がスタメンなんだろう。川島のスタメンにしろ、僕には岡田さんの用兵がよくわからない。いや、新戦力を試したいという意図はわからないでもないけれど、今回は親善試合などではなく、いかに小さかろうとタイトルがかかった大会だ。本気で勝ちにゆくつもりがあったらば、こういう顔ぶれにはならないと思うのだけれど……。
 ということで、なんだか釈然としない気分で観始めてみれば、開始わずか6分で北朝鮮代表に名を連ねる川崎フロンターレのチョン・テセに先制ゴールを許してしまう。そりゃチョン・テセもよかったけれどさ。それ以前に日本代表のディフェンス・ラインがもろい、あまりにもろすぎる。なんでDFが四枚そろっていて、あんな風にシュートを打たれちゃうんだ。最後にマークについていたのは内田篤人だったみたいだから、アントラーズ・ファンとしてはやや申し訳ない気もするけれど、それにしてもどうにかして欲しかった。
 これでなんだか雲行きがあやしくなった。記憶力のない僕はすっかり忘れていたけれど、北朝鮮にはジーコが指揮をとっていた3年前にも、同じ大会で負けている。そういえば、2年前のアジア大会でも、五輪代表がこの国に負けて、グループリーグ敗退を喫したんだった。僕は北朝鮮のことを格下だと思い込んでいたけれど、どうやらこの国とは意外と相性が悪いらしい。
 しかもこの日の会場は、4年前にアジア杯で大ブーイングにあった因縁の地、中国・重慶。今回もまた、スタンドはかつてのアジア杯の記憶が否応なくよみがえる態度の悪さだった。日本の国歌斉唱でさえブーイングが巻き起こるくらいだから、試合が始まってからのブーイングはあたりまえ。応援は一方的な北朝鮮びいき。いまとなると観客のなかには日中戦争のことを覚えている人なんて皆無だろうし、ピッチでプレーをしている選手たちには罪はないのはわかりそうなものなのに、それでもあんなに無礼な態度をとるほど日本が憎いのかと思うと、うすら寒い気分になる。最近の餃子事件も尾を引いてるんですかねぇ……。
 まあ、なんにしろスタジアムは圧倒的なアウェイ状態で、しかもピッチはぬかるんでいてスリッピー。日本にとって、やりにくい環境だったのはまちがいない。それでさらに守りを固めてくる相手に先制点を許してしまったんだから、なおさら具合が悪い。メンバーがかなり入れ替わってしまっているせいか、内容もぱっとしないし、前半をそのまま終了したときには、こりゃあ3年前の悪夢よふたたびかと思った。
 でも後半、日本はなんとか一矢報いて、ドローで試合を終えた。得点は途中出場のふたり、安田と前田の活躍によるもので、その点では岡田さんの采配がどんぴしゃだったことになる。ただ、なまじスタメンのときに首をかしげているものだから、いまひとつ選手起用が上手かったという感じがしない。三枚目の交替枠を使って、右サイドの内田に代えて駒野を入れたのも、なんだかよくわからなかったし……。そもそも駒野が使えたんならば、なにゆえ加地を左サイドで起用したんだろう。やっぱりサイドバックにも両サイドをまかなえるユーティリティを要求しているんだろうか。ほんと、よくわからない。
 安田を山岸に代えて中盤で使ったのも最初はやたらと疑問だったのだけれど、結果的にはこれが同点ゴールに結びついたのだから、それは結果オーライ(調子のいいやつ)。五輪代表では招集を受けながら一度もピッチに立つ機会がもらえなかった安田が、飛び級してA代表でデビューそうそう活躍してみせたのは、なかなか痛快だった。岡田さんも加地を左サイドで使うくらいならば、いっそ安田をスタメン起用してみせて欲しいところだ。次の試合に注目しよう。
 同じくA代表初出場となったわれらが田代の出来はまあまあ。失礼ながら僕は、彼にはまだA代表は早いんじゃないかと思っているのだけれど、この日はフル出場を果たしたのでもわかるとおり、けっこういいプレーをしていた。巻がいないこの大会は絶好のアピールのチャンスなので、選ばれた以上は代表定着を目指してがんばってもらいたいと思う。
 なにはともあれ、今日は負けなくてなによりという試合だった。いまの調子では、ホームの中国やライバル韓国にはそう簡単には勝てそうにないけれど、それでも去年のアントラーズのJ1制覇のように、サッカーはなにがあるかわからない。少なくても勝ち点1は稼いだことだし、次の中国戦では貪欲に勝ちにいく姿勢をみせて欲しい。
(Feb 17, 2008)

中国0-1日本

東アジアサッカー選手権/2008年2月20日(水)/中国・重慶/TBS

 中国は観客の態度が悪いだけではなく、選手のプレーもやたらとラフだった。とくに終盤は腹が立つほど、アフターチャージだらけ。安田がGKに跳び蹴りをくらって負傷退場してしまってからは、みんな怪我をせずに無事にこの試合を終えてくれよと思いながら、祈るように観ていた。攻撃はロングボールばかりで一本調子だし、まったく困ったもんだよ、中国人。
 この試合、岡田さんは前の試合で得点に絡んでみせた安田を、最終ラインではなく攻撃的なポジションで起用してきた。で、GKを楢崎に代え、CBには今野、左サイドは駒野、中盤に憲剛と山瀬を入れ、田代のワントップと。前の試合と同じなのは、残りの中澤、内田、啓太、遠藤の四人のみ。シーズンイン前のむずかしい時期ということもあって、どうやらこの大会は調整とテストの場と割り切っているみたいだ。
 それでも今日の試合はとてもよかったと思う。やはり憲剛と遠藤がそろうとパスの流れがスムーズになるし、早めのインターセプトもびしびし決まるので、観ていて気持ちがいい。山瀬はそのふたりに絡んでMVP間違いなしという活躍だったし、田代も持ち前の高さとトリッキーなワンタッチ・プレーの組み合わせで、けっこう味のあるプレーを見せてくれていた。今野を加えた4バックも非常に安定していたし、ほんとこの日の日本代表のサッカーには大満足だった。危険なプレーを連続する相手や、北朝鮮のレフェリーの判定があいまいだったのは残念だったけれど、それでも今日はみんな、そんな相手のラフプレーや不利な笛にも動じずに、最後まで冷静にプレーしていたのが、とても誇らしかった。
 決勝ゴールは駒野のクロスから。田代がこれに足から飛び込むも触れず、それでも彼が相手GKと交錯気味になったことで、GKがパンチングで弾いたボールが山瀬のもとへ。山瀬はこれをズドンときれいに決めてみせた。ほんと、彼のゴール前での落ち着きぶりと決定力は素晴らしい。この日はほかにもいいシュートをいくつか打っていたし、クラブでもあんなプレーをされてしまうようだと、今年のマリノスには手を焼くことになりそうだ。
 それはそうと、この日も岡田さんは後半あたまからサイドバックの交替を行った。大事をとって守備固めで、前の試合と同じように右サイドの内田篤人を代えるのかと思ったら──どうにも守備があぶなっかしかったので──、この日は駒野を加地にスイッチしてきた。なんだろうと思ったら、前半で駒野が足を痛めたのだそうだ。北朝鮮戦で貴重な同点ゴールを決めた前田も故障して帰国してしまったし、この試合での代表デビューが噂されていた岩政も足首を痛めたとかいうし、そういえば前の試合で山瀬が出なかったのも、怪我が原因だったようだ。この大会の故障者の多さははんぱじゃない。中国人の呪いじゃないかと勘ぐりたくなる。
 なんにしろ、これで次は優勝をかけての韓国との一騎打ちだ。ひさしぶりの日韓戦だし、きっと気合の入った試合を見せてもらえることだろう。とても楽しみだ──とかいいつつ、不覚にもバンプ・オブ・チキンのライブと重なってしまって、生放送で観られないやつ。残念無念。
(Feb 20, 2008)

日本1-1韓国

東アジアサッカー選手権/2008年2月23日(土)/中国・重慶/TBS(録画)

 前に書いたとおり、この日の試合はバンプ・オブ・チキンのライブとかぶっていて、生放送で観れなかった。しかもそのライブから帰宅したのは午前0時半。強風でダイヤが乱れていたせいで開始時刻が遅れ、終わったあとで食事をしてから帰ってきたら、そんな時刻になってしまった。帰宅後に風呂に入ってさっぱりして、さあサッカーだと思ったのは、もう1時半近く。観始めたはいいけれど、もとから疲れている上に、おもてでビールを1リットルばかり飲んできたせいもあって──おまけにすでに飲んでしまっているんだからと、録画を見つつバーボンまで飲んでいたし──眠くなってしまって、内容がどうこう言える状態じゃなかった。どうせならさっさと寝て、朝いちに素面で観るべきだったのかもしれないけれど、結果が気になっていたし、なにより観たかったんだから仕方ない。ということで、この試合に関しては簡単に。
 スタメンは川口、内田、中澤、今野、加地、啓太、憲剛、橋本、遠藤、山瀬、田代の11人。橋本が初先発だというから、啓太とダブル・ボランチを組ませるのかと思ったら、攻撃的なポジションでの起用で、これはちょっと意外だった。途中出場は安田(怪我が大事に至らずなにより)、矢野、播戸の3人。
 試合が動いたのは15分。韓国が左サイドのクロスから11番ヨム・ギフンの見事なボレーシュートで先制する。またもや篤人のサイドからの失点だ。彼を起用していることで、どうにも守備が不安定になっている感が否めないし、いまだ得意の攻撃参加もきちんと結果に結びつけられていないし、やっぱりまだA代表は早いんじゃないかという気がする。
 この試合に勝つことが優勝の必須条件だった日本だけれど、この日は出来がいまひとつ。韓国はプレスもきついし、攻撃も破壊力があるし、やはりいままでの2チームとは格がちがった。そんな韓国を相手に先制を許してしまったのでは、やはり苦しい。前半に憲剛が打った素晴らしいミドルが、2本ともポストに嫌われたりGKにファインセーブされたりして決まらなかったのも痛かった。後半、ショートコーナーから山瀬のミドルで同点に追いついてみせたのはよかったけれど、反撃もそこまで。結局、日本は勝ち点、得失点差ともに韓国と並ぶも、総得点で及ばず、2位に甘んじた。3試合すべて1点ずつしかとれないんじゃ、致し方ない。得点力不足という課題はあいかわらずだ。
(Feb 24. 2008)