アントラーズ、天皇杯初登場で、なんと大学生と引き分ける。
北京五輪の最終予選時に大学生だった長友や本田拓也が、J1のチームに入団してすぐレギュラーを獲得してることを考えても、最近は大学生のレベルも高いようだから、そうそう楽な試合はさせてもらえないだろうとは思っていたけれども、いや、それにしてもまさかPK戦にまでもつれこむとは……。去年もJFLのホンダ相手に延長戦を戦っているけれど、あのときは延長でなんとか勝っている。それが今年は大学生相手にPK戦というていたらく。まったく、なんてこった。こんなにストレスを感じた試合はひさしぶりだった。
しかも、この試合のスタメンは、曽ヶ端、内田、岩政、伊野波、新井場、青木、中後、マルシーニョ、ダニーロ、興梠、マルキーニョスという顔ぶれで、つまり本山が腰痛で欠場したことをのぞけば、リーグ戦と同じベスト・メンバーだ。そのくせ大学生に押されまくって2失点も許すってのは、前年度王者としてあるまじき醜態だろう。なにより、このあいだのFC東京戦での3失点といい、リーグ終盤のこの時期になって、ディフェンス面で安定感を欠きまくっているのは、いったいなんなんだろうか。いやんなってしまう。
内容にしても、1点目は、相手の豪快なミドルシュートが素晴らしかったのは確かだけれど、それにしたってゴールから遠かったせいで油断していたのがありありだったし、ミスからカウンターを許した2点目なんて、悲惨なほどに守備陣形が混乱していた。前日、大分が鉄壁の守りでナビスコ杯を制するのを見たあとだけに、この守乱ぶりは情けなくて仕方ない。こちらの得点はセットプレーとPKだけだし……(決めたのはダニーロとマルキーニョス)。
なにより情けなかったのは、プロの意地を見せて、なにがなんでも勝ってやるという気迫が感じられなかったこと。2-2で残り10分という時間帯に、大学生に攻め込まれていたのを観たときには、本気で腹が立った。あと、延長も残りわずかだというのに野沢が横パスを出していたり(前を向け!)、田代がヘディングを外したあとで苦笑いしているのを観たときも。なんなんだろう、あの覇気のなさは。本気で大学生相手に負けてられるかと思ったならば、あの時間帯に横パスを出したり、笑ったりできるはずがないだろう。
僕はこの日のマルシーニョのスタメンは疑問だった。現状の彼と比べれば、野沢のほうが力は上だと思うからだ。でも、この試合で途中出場した野沢のプレーを見てしまうと、やはり彼をスタメンで使わないオリヴェイラさんの気持ちもわかる気がしてしまう。いまの野沢は攻撃での積極性、守備での運動量ともに足りなさすぎる。これは田代も同じく。このふたりには期待している分、そのプレーを観たときの失望も大きい。
そうそう、あと伊野波も。オリヴェイラ氏は延長戦のあたまから、新井場を増田に代えて、伊野波を左サイドへとコンバートしていたけれど(代わりにCBには青木が入った)、あれなんかは、やはり伊野波の守備力への信頼のなさの表れだろう。実際、大学生がすっかり疲れ切っていたせいもあるのかもしれないけれど、青木が真ん中に入ってからのほうが、チームとしては安定感があった。どうにも伊野波のCBは信頼できない感がある。個人的にはJ1の残り4節は大岩をスタメンに復帰させたほうがいいんじゃないかと思っている。
この試合での唯一の救いはPK戦を3本連続で止めて、チームに勝利をもたらした曽ヶ端のプレー。相手のGKが試合中とても当たっていたので、PK戦は不安だったのだけれど、曽ヶ端はまさに守護神という言葉にふさわしい活躍で、チームを五回戦へと導いてくれた。あのPKにだけは、これぞプロという意地が感じられた。あっぱれ。
それにしても、PK戦のときに国士舘大のキッカーに対してブーイングを浴びせていた鹿島サポーターの姿勢はいかがなものかと思う。ご贔屓のチームを勝たせたいという気持ちはわかるけれど、相手はアマチュアなのだし、プロ相手にあれだけ素晴らしい試合をしてみせたのだから、エールのひとつでも贈ってみせる余裕があっていいんじゃないだろうか。それを逆にブーイングを浴びせるなんて、大人げないというか、なんというか……。最初のキッカーの子が苦笑いしていたのも当然だ。そもそも、こんなひどい内容の場合ならば、逆に味方にブーイングを浴びせるくらいであっていいと思う。どうにも鹿島サポーターは狂信的で、まわりが見えていないイメージがあって馴染めない(※1)。
なにはともあれ、大学生をPK戦で下し、どうにか5回戦への進出を決めたアントラーズだったけれど、いまの調子じゃ先行きは不透明。今年の天皇杯での戦いを観られるのは、これが最初で最後なんてことになりませんように。
(Nov 02, 2008)
(※追記)鹿島サポーターがPK戦のときにブーイングをしてたことにケチをつけてしまったけれど、試合後にはちゃんと大学生たちに拍手とエールをおくっていたそうなので、あのブーイングはもしかしたら不甲斐ない戦いをしたアントラーズに対するものだったのかもしれない……って、あのタイミングでそれはないか。いずれにせよ、鹿島サポーターにもきちんと相手の健闘をたたえる姿勢があるとわかってよかった。
それにしても、結局この試合が今回の天皇杯で僕が観たアントラーズの最後の試合になろうとは……。