コンサドーレ札幌0-1鹿島アントラーズ
J1・第34節/2008年12月6日(土)/札幌ドーム/NHK総合
アントラーズがJリーグ・ディヴィジョン1で2連覇の偉業を達成した一戦。
試合後に感想を聞かれて「ほっとした」と口にしている選手が何人もいたけれど、僕もそれは同じ。奇跡的な逆転優勝を果たした去年とはちがって、今年の場合は、最終節で勝てば自力優勝──しかも対戦相手はリーグ最下位の札幌──ということもあって、ここまでくれば優勝して当然だという、去年とは逆のプレッシャーがあった。だから優勝を決めた喜びも爆発的なものではなく、どちらかというとしみじみとしたもの。いやぁ、最後につまずかなくて、本当によかった。
それにしてもタフな1年だった。シーズンを通じてコンスタントにプレーできた選手はほとんどいない。小笠原の長期離脱はもとより、マルキーニョスや両サイドバックも故障でチームを離れる時期があった。開幕当時はスタメンだった田代、野沢、大岩らは不調やチーム事情でスタメンを追われているし、本山もすい臓に障害をかかえていて、痛みをこらえながらプレーしていたという(泣ける)。
結局、34節すべてに出場しているのは曽ヶ端、青木のふたりだけ。次点は岩政の33試合(ゼロックス杯で退場をくらって開幕戦は出場停止だった)。まあ、裏返せば、センターの縦のラインを守るこの3人がほぼ全試合に出場できたことが、守備力の安定をもたらしたのは大きかった。とくに青木がボランチというカードの出やすいポジションで全試合出場を果たしてるのはあっぱれだと思う。
ただ、ディフェンスの要であるこの3人にしても、クラブを優勝に導く活躍をみせながら、日本代表には呼ばれなかったり、呼ばれても結果を出せなかったりしているわけで、この1年に完全に満足しているとは思えない。大きな目標だったアジア制覇には失敗したし──しかも自分たちが敗北を喫したアデレードを完膚なきまでに破って、G大阪がアジア・チャンピオンについただけに思いはなお複雑──、予選を免除されたナビスコ杯は準々決勝のわずか2試合で敗退してしまったし、例年ならばリーグが終わったあとの最後のひと仕事として残っているはずの天皇杯でも、今年はすでに9年ぶりの敗退が決まっている。
なおかつ勝利数18、勝ち点63という数字はともにリーグ・トップながら、去年と比べるとずいぶんと少ない(去年は勝利数22、勝ち点72)。レッズが内部崩壊を起こして沈んだり、ガンバがACLの過密日程のために低迷したことに助けられた部分は少なからずあると思う(この2チームには勝てていないわけだし)。
リーグ優勝がもっとも重要なタイトルであるという事実には変わりがないけれど、アントラーズがすべてのタイトルを取りにゆくことをモットーとしているチームである以上、ほかがこれだけ不本意な結果に終わると、どうしてもやり残した感は残る。
でもだからといってこの優勝の価値が薄れるなんてことはないわけで。故障者が出たり、主力が不調だったりでチーム力が安定しない中、綱わたりするようにやりくりして1年をしのいできた果てに、なんとかたどり着いた連覇の偉業だ。ほっとしたという言葉は選手たちの本心だろうけれど、そうした思いとともにもたらされた栄冠は、地味ながらもズシリと重い。きびしいシーズンを勝ち抜いた選手やスタッフの皆さんに心からご苦労さまと云いたい──そしてもちろん、ありがとうとも。
さて、ということで以下はこの日の試合について。スタメンは前節と一緒だった。
始まってちょっと驚いたのが、札幌が意外と強かったこと。右からのサイド攻撃にはかなり迫力があるし、FWのダヴィもマルキーニョスにつづくリーグ2位のゴール数を記録しているだけあって、ゴール前ではけっこうこわい。22歳のMF上里は「こいつ何者?」とびっくりしてしまうほどのキック力を持っている。優勝を目前にしてこちらが硬くなっていたというものあったのかもしれないけれど、前半に関してはほぼ互角という感じだった。なんでこれだけのプレーができるチームが、ダントツの最下位に沈んでいるんだろうと不思議になってしまった。
それでも地力の違いは前半のうちに出た。チームに勝利をもたらすことになった虎の子の1点は、前半35分の野沢の豪快なミドル。いやあ、これは素晴らしいシュートだった。この日のチームの最初のシュートも、彼が相手GKの位置を見て打った、いいアイディアのループだったし(これも惜しかった)、オガサ、ダニーロがいない現状でアントラーズが優勝するには、彼の活躍が必要不可欠だと思っていたけれど、大事な試合で本当にいい仕事をしてくれた。ナイス。
現状のディフェンス力ならば1点でも取れば負けはない。引き分けならば優勝はほぼ確定という状況なので、この1点は本当に大きかった。後半はマルキーニョスを中心としたカウンターで何度も好機を作りつつ、守るほうでは適当に時間をつぶしながら危なげなく守りきって、無事ゲームセット。6度目のリーグ優勝の栄冠は、連覇という快挙にはふさわしからぬ安堵感とともに訪れたのだった。
優勝に加えて、通算21得点のマルキーニョスの得点王が決定。アントラーズとしては初の得点王だ。こちらもとても嬉しい。
それにしても、この試合でのマルキーニョスは本当にゴールに嫌われていた。さんざんシュートを打っているのに、まるで決まらない。ようやく決まったと思ったらばオフサイドだったりするし、なんでこんなに決まらないのと笑っちゃうくらいに決定力を欠いた。もしも彼が通年この調子だったとしたら、絶対優勝はなかっただろう。
とはいっても今年の彼の貢献度の高さは文句なしだった。ゴール・ゲッターとしての活躍ももちろんながら、守備での貢献度が高いこと高いこと。攻守ともにこれだけ貢献してくれるFWはそうはいない。MVPはおそらく彼で決まりでしょう。
さて、他チームに目を向けてみれば、前節まで2位だった名古屋は4位の大分と引き分けて3位に後退。2位には川崎フロンターレが上がってきた。フロンターレの勝利数は18で、鹿島と一緒。関塚監督が不整脈で途中降板したというのに、優勝にあと一歩という成績を残しているのは、すごいと思う。
ここまでの上位3チームは来期のACL出場が決定。でも、川崎にしろ名古屋にしろ、JとACLを両立させて戦い抜けるだけの選手層の厚さはなさそうなので、今年の好成績がアダになって、来年は苦戦を強いられるんじゃないかと思う。これだけ故障者を出してなお今年のリーグを制したアントラーズのほうが有利だろうと(贔屓目ながら)僕は考える。
一方の降格レースでは、ジェフ千葉がFC東京を相手に、2-0のビハインドから後半だけで4点を奪うという奇跡的な逆転勝利を上げて、残留を決定した。僕はテレビ放送でその試合の途中経過をみて、ひとりで「マジかよ」と叫んでいた。この逆転勝利はこちらの試合よりもよほどインパクトがあった。
結局、千葉に追い抜かれて逆転でJ2に降格することになったのは、フロンターレに負けた東京ヴェルディだった(岡田主審の不可解な判定で福西が退場になったのが気の毒のきわみ)。J1・J2入れ替え戦にまわる16位は、なんとジュビロ磐田だ。かつて鹿島にとって目の上のたんこぶだったヴェルディと、鹿島とともに2強といわれたジュビロが、いまや両方とも降格レースの真っ只中にいるというんだから、盛者必衰のことわりというか、なんというか……。
あらためて鹿島アントラーズという常勝チームのサポーターであることの喜びをしみじみと味わった08シーズンの最終戦だった。
(Dec 08, 2008)