2009年3月のサッカー

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  1. 03/07 ○ 鹿島2-0浦和 (J1・第1節)
  2. 03/11 ● 水原三星4-1鹿島 (AFCチャンピオンズリーグ)
  3. 03/18 ○ 鹿島2-0上海申花 (AFCチャンピオンズリーグ)
  4. 03/28 ○ 日本1-0バーレーン (W杯・最終予選)

鹿島アントラーズ2-0浦和レッズ

J1・第1節/2009年3月7日(土)/カシマスタジアム/NHK

 Jリーグ2009年シーズンの開幕戦。浦和レッズをホームに迎えたアントラーズは、見事なカウンター攻撃から2得点を奪って、強敵を難なく退けてみせた。この調子ならば史上初の3連覇とアジア制覇、今年はマジで両方とも狙えるかもしれない――そう期待させるに十分な戦いっぷりだった。
 この試合のスタメンは一週間前のゼロックス杯と同じ。ただし先週とのちがいは、ベンチに小笠原が入ったこと。そう、開幕には間にあわないと言われていた彼が、驚異的な回復でこの第1節からチームに合流してみせたのだった。まだスタメンというわけにはいかないようだけれど、それでもこの試合で最後の5分ばかりながら、ピッチに立った。
 彼抜きでガンバやレッズに勝ててしまう状況で、さらにオガサが戻ってくるっていうんだから心強い。なんたって、小笠原が出てきたとたん、それまでキャプテンマークをつけていた岩政が、わざわざ自らのキャプテンマークをはずして、オガサに渡したくらいだ(フル出場の選手が途中出場の選手にキャプテンマークを渡すシーンなんて初めて見た気がする)。それくらいチームリーダーとしての信頼は絶大。なにより勝ちにこだわる負けず嫌いな性格がチームに与える影響が大きいと思う。
 彼が帰ってくるとなると、野沢かダニーロがベンチということになってしまうけれど、JリーグとACL、本気で両方を勝ちとる気ならば、それくらいでちょうどいい。FWも大迫の加入で競争が激しくなっているし、DFはやや手薄ながら、それも中田浩二が戻ってくれば、それほど問題にはならないだろう。戦力の充実度は申し分なし。細工は流々、仕上げをご{ろう}じろってな感じ(古い?)。今後の展開が楽しみでたまらない。
 対するレッズはドイツ人のフィンケ新監督のもと、フォーメーションを4-4-2に変えて新シーズンにのぞんでいる。スタメンは知った顔ばかりながら、なかにひとつだけ見慣れない顔があるから、誰だろうと思ったらば、なんと注目の17歳ルーキー、原口元気だった。
 この子、さすが開幕スタメンに選ばれるだけあって、誰より積極的にシュートを打ってゆく姿勢はなかなか好印象だった。次々と若い才能が台頭してきて嬉しいかぎりだ。けれど、だからといってレッズほどのチームで十代の選手がそれほど目立てるものでもない。
 なんたってレッズのスタメンはGK都築に、闘莉王、坪井のCBコンビ、両サイドバックが細貝と平川で、啓太と阿部のダブルボランチ、攻撃的な位置にはポンテと原口が入り、ツートップが高原と田中達也という顔ぶれだ。でもって途中交替で山田暢久やエジミウソンやエスクデロが出てくる。まだまだ4バックがフィットしていないからか、それほど手ごわい印象もなかったけれど、潜在能力の高さは折り紙つき。フィンケ氏の手腕が確かならば、最終節にアウェイで戦うときには、さぞや厳しい試合になるだろう。でもまだまだそれは先の話。
 この日のアントラーズの2ゴールは、どちらも相手のセットプレーの直後のカウンターから。1点目は曽ヶ端のロングフィードをマルキーニョスがひとりで持ち込み、グラウンダーのクロスで野沢の足元にあわせたもの。2点目は素早いパスワークでゴール前まで運んだボールを、これまたマルキーニョスが思い切りのいいミドルで決めたもの。どちらの場面もゴール前には味方の選手が複数攻め込んでいて、数的有利な態勢を作っていた。強力なFWにロングボールを一本あわせるだけ、みたいな単純なカウンターとはひと味もふた味もちがう、チームの総合力の高さを感じさせる素晴らしい攻撃だった。
 いやはや、いい試合でした。この調子で来週からのACLでも素晴らしいサッカーを見せて欲しい。
(Mar 08, 2009)

水原三星ブルーウィングス4-1鹿島アントラーズ

AFCチャンピオンズリーグ・グループG/2009年3月11日(水)/水原ワールドカップスタジアム/BS朝日

 アントラーズ、AFCチャンピオンズリーグ初戦でいきなりの惨敗を喫する。
 いやはや、4失点はひどいでしょう。この試合で初お目見えの、今期から導入されたアウェイ用の第三ユニフォーム(金色)、あれがあまりにダサダサなので、サッカーの女神がそっぽを向いちゃったんじゃないかと、変なユニフォームを採用したクラブの関係者に責任をなすりつけたくなる。それくらいひどい試合だったし、それくらいカッコわるいユニフォームだった。
 対戦相手の水原三星は「スウォン・サムソン」と読む。つまりあの韓国一の電子機器メーカー、サムソンがバックについたクラブで、去年のKリーグ王者なのだそうだ。監督はかのチャ・ブンクンだし、GKは韓国代表の正GKとしておなじみのイ・ウンジェだし、そのほかにも韓国代表の選手がたくさん在籍しているらしい。僕に聞きおぼえのある名前はキム・デイだけだったけれど、この人は篤人の対面で、とてもいいプレーを見せていた。
 まあ、相手がKリーグ・チャンピオンであろうと、いまの鹿島ならばまず遅れをとることはないだろう――そう思っていたら、これが大まちがい。前半はそれなりに悪くなくて、途中までならば、こちらのほうがチャンスの数は多かったと思うんだけれど、シュートはことごとくイ・ウンジェの真正面。この人、なんと去年のKリーグのMVPなのだそうだ(GKがMVPって、それはいったい……)。とにかくいいGKなので、こちらのシュートは簡単に止められておしまい。
 そうこうするうちに、前半もそろそろ終わりってころになって、アントラーズはFKの混戦から先制点を許してしまう。
 この1点目は、まあセットプレーだから仕方ない。こぼれ球が相手の足もとに入ったのがアンラッキーだった。情けなかったのはその直後にカウンターから奪われた2点目。この場面では相手のブラジル人エースが完全にフリーだった。あそこでマークがはずれているなんてあり得ない。失点の直後で集中力を欠いていたのがありあり。前半の残り時間がほとんどなくなってからの失点ってだけで情けないのに、それが2点つづけてなんだから、やってられない。
 しかも後半はこの劣勢を跳ね返すどころか、さらに2失点を許すていたらく。途中から田代と小笠原を投入したことで、いくらか持ち直したかと思った時間帯もあったけれど、失点は両方ともそのあとだから、どちらかというと前がかりになったのが裏目に出た気もする。しかもこれがまた見事に崩されての2ゴールだったのが、みじめな気分になおさら油を注ぐ。ロスタイムに内田篤人のアシストからマルキーニョスのヘディングで一矢報いたのがせめてもの救いだった。あのゴールがもっと早く欲しかった。
 とにかくきょうはミスが多すぎた。このところずっと立ちあがりはよくないけれど、きょうは途中から上り調子になることなく、ずるずると下っていってしまった感じ。パスはつながらないし、セカンド・ボールは拾えないしで、これで勝てらたそのほうがびっくりって内容だった。3試合連続で同じスタメンだったから、早くも疲れが出はじめたか(んな馬鹿な)。いやはや、本当にだめだった。数日前にJ1とACL、両方獲れるかもとか思った自分が恥ずかしくなってしまうような惨敗だった。ああ……。
(Mar 11, 2009)

鹿島アントラーズ2-0上海申花

AFCチャンピオンズリーグ・グループG/2009年3月18日(水)/カシマスタジアム/BS朝日

 先週は韓国で負け、3日前にも新潟で負けと、ACL、Jリーグとアウェイで2連敗中のアントラーズ。始まったばかりで先の長いJはともかく、わずか6試合でグループ・リーグの勝敗が決するACLのほうは、ここで連敗を喫するようだと非常に苦しい立場に追い込まれてしまう。ましてや今度はホームだし、相手の上海申花はすでに1勝していて、自分たちより上位にいるクラブだ。本気で4冠を目指すならば、この試合は絶対に落とせない。
 そんな大事な一戦で、オズワルド・オリヴェイラ監督は一気にスタメン3人を入れ替える思いきりのいい用兵で、サポーターを驚かせてみせた。しかもそのうちのひとりが、注目の高卒ルーキー、大迫勇也とくる。
 大迫くん、先発デビューがいきなりの国際試合。しかも、単に出ただけで終わらず、ちゃんと仕事をして、2得点両方に絡む活躍をみせてくれてしまうんだから恐れ入った。1点目は貴重な先制点のアシスト。2点目は自らのプロ初ゴール。しかもそのゴールってのが、すでに自身の途中交替が決まって、控えの選手がプレーが切れるのを待っているあいだの最後のワン・プレーなのだから、なにをいわんやだ。もしかして彼は本当にただならぬ星のもとに生まれてきているのかもしれない。
 得点シーンでのプレー内容がまた素晴らしかった。1点目はゴールに背を向けてボールを受けると、右回りにターンしながら、左サイドを駆け上がってきた野沢に、絶妙のスルーパスを通してみせた(野沢もナイスゴール)。2点目では左サイドからマルキーニョスがグラウンダーのクロスを上げた場面で、ペナルティエリアのど真ん中に居あわせ、ためらうことなく左足を振り切ってみせた。フリーだったとはいえ、とても見事なダイレクト・ボレーだった。
 どちらのシーンもそうだったけれど、彼のプレーにはぶれがない。ためらいがない。その場面場面で最善のプレーを、じつに簡単そうにこなして見せている。ぱっと見の派手さはないんだけれど、確実に結果につながるプレーをしている印象。前半に打ったファースト・シュートは大きくふかしていたけれど、あれだってゴール前でボールに追いついたタイミングで、ためらうことなく右足を振り抜いていた。あの判断力の速さがこの子の最大の武器のような気がする。まあ、得点の場面以外では、とりたてて目立っていなかったので、まだまだ改善の余地はありそうだけれど、それでもこの子には本気で期待してもいいような気がしてきている。
 さて、そんなスーパールーキーの活躍に負けず劣らず──というかそれ以上に──僕らを喜ばせたのが、小笠原のスタメン復帰。J開幕戦以来、5分、20分、45分と試合ごとに出場時間を伸ばしてきた彼が、この試合ではようやくスタメン復帰&フル出場を果たした(そんな風に時間をかけて少しずつプレーに慣れさせていったオリヴェイラさんの慎重な起用法もおもしろかった)。オガサがいるのといないのでは、チームとしての安定感がちがう。背骨がしっかり伸びるというか、下半身が強くなるというか。彼の復帰によって攻守のバランスがより一層よくなった感があって、この試合は安心して見ていられた。こと、スタメン起用の効果という点では、小笠原こそがこの日の主役だったと思う。
 もうひとりの初先発はパク・チュホ。アントラーズにブラジル籍以外の外国人が加入するのは初めてなのだそうだけれど(言われてみれば)、わざわざJ2水戸から引き抜いてきた韓国人選手だけあって、この人もかなり使えそうだ。新井場に代わって左サイドに入り、攻守にメリハリの効いたプレーを見せてくれて、なかなか好印象だった。
 以上の3人に代わってスタメンをはずれたのは、興梠、本山、新井場の3人(あとのメンバーは先週のスウォン戦と同じ)。興梠と新井場については単にスタメンをはずれただけではなく、ベンチにも入っていなかった。中途半端に出場の機会をうかがわせるよりも、きちんと休ませて次のリーグ戦に備えさせようということなのだと思う。本山のベンチも意外だったけれど、彼も大きな手術をしたあとだけに、あまり無理はさせたくないんだろう。それにしてもこの日の出来を見てしまうと、次の試合で彼らがスタメン復帰するとは限らない気がする。オリヴェイラさんも贅沢な悩みを抱えることになって、チームにとってはなにより。
 対する上海申花はラフプレーの目立つ、いかにも中国って感じのクラブだった(なんであの国のサッカーはいつもこうなんだろう)。あまり好敵手とは呼びにくい相手だったので、負けていたら悔しくて仕方なかったにちがいない。ほんと勝ててよかった。
(Mar 19, 2009)

日本1-0バーレーン

ワールドカップ・最終予選/2009年3月28日(土)/埼玉スタジアム2002/テレビ朝日

 ワールドカップ最終予選もいつの間にか後半戦に突入。今回の対戦相手は「またもやお前か~」と言いたくなるバーレーン。アジア杯のテレビ放送がなかったことで、印象よろしからぬ相手でもあるので、このへんでコテンパンにやっつけて欲しかったのだけれども、結果はまたもや1点差勝負になってしまった。
 スタメンはGK楢崎、4バックが内田篤人、中澤、闘莉王、長友、中盤が長谷部、遠藤のダブル・ボランチに、俊輔、大久保、ツートップが玉田、達也という布陣。途中出場は橋本、松井、岡崎。
 直前のメンバー選考で話題になったのが、川口の代表落ち。彼が怪我以外の理由で代表を外れたのは今回が初めてだそうだ。でも今年もジュビロはいきなり不調だし、そんな中でベテランの彼が信じられないようなミスから失点を許すシーンをニュース番組で見たあとだったので、今回はそれも仕方ないかなと思った。もとより岡田さんのファースト・チョイスは楢崎なので、彼が復帰した以上、川口は選ばれてもベンチだろうし。ただし楢崎のバックアップとして考えるならば、いまはまだ都築や川島とよりも、川口のほうが安定感があると思うので、このまま代表落ちということはないだろうとも思う。まあ、いつまでも川口、楢崎のふたりに頼りきりって状況もいささか困りものだけれど。
 試合のほうはと言えば、この前のオーストラリア戦と同じように、日本が圧倒的にボールを支配しながらも、ゴールがまるで奪えないという展開。なまじ細かいパス回しがスムーズで、チャンスもそこそこ作れている分、そのチャンスをきちんと生かせていないことに、やたらとストレスを感じてしまった。ゴール前まではボールを運べるのに、そこでシュートが打てない。打つチャンスが最初からないならばともかく、チャンスはあるのに、みすみすそれを逃しているようなシーンが多すぎるのが問題だ。こっちが「打て!」とテレビの前で叫んでいるのに、無理にボールをこねくり回したり、余計なパスを出したり、判断が遅れて相手DFにつめられたり。そんなシーンが多すぎる。もうちょっと判断力を高めるか、強引でもいいからゴールが見えたらまずシュートを打つという姿勢を徹底してゆかなくてはいけないんじゃないだろうか。
 その点、この試合ではウッチーが積極的に攻め上がってシュートを打っていたのは好印象だった。バーをたたいたり、枠に飛ばなかったり、GKとの1対1をトラップミスで逃したりと、結果はともなわなかったけれど、それでもああいう姿勢こそが大事だろう。彼の場合、守備力という点ではやや難がある気もするけれど、それでもサイド攻撃における貢献度はその分を帳消しにすると思うし、そこにこの日のようにゴール前へ出てゆくプレーが加われば、おそらく向こう10年は代表でもレギュラーを張れる。ぜひがんばってもらいたい。ちなみに彼は前日が21歳の誕生日だったそうです。まだ21なんだ。若いなぁ……。
 決勝点は俊輔のFK。相手DFのスキンヘッドにあたってコースが変わり、絶妙のキックとなってゴール右上にすべり込んだもの。あれが入っていなかったら、どうなっていたことやら……。いやぁ、運はこちらの味方だった。
 とにかくこれで次の試合に勝てば、早々とW杯への出場が決まってしまうんだそうだ。残り3試合で1勝すればいいんだから、こりゃほぼ決まりでしょう。韓国がいる隣のグループはまだまだ混戦で、最後までもつれそうなのを見ると、こちらは組合せに恵まれたなあと思ってしまう。なんたってあちらは、イランが4位、UAEはほぼ絶望って状況ですからね。いやぁ、あまりにシビアだ。
(Mar 29, 2009)