最近は体力の衰えがいちじるしくて、平日の深夜の試合はとても観れないので、初戦はパスしてしまった。本番を直前に控えた五輪代表が、最後の選手選考をかねて参加しているトゥーロン国際大会の第二戦目、オランダ戦。
この大会、初めて観るけれど、やたらと変則的だった。なんたって試合は40分ハーフだし、観客席のないグラウンドでの試合だし。日程もすべて中1日の強行日程。そのくせ4チームが2グループに分かれて総当たりのリーグ戦を行ったあと、上位2チームずつで決勝トーナメントまでやるらしい。なんだか商売っ気抜きのくせして、フォーマットは本格的な不思議な大会。
日本は初戦でトルコに0-2で負けて、内容的にもよくなかったようなので、申し訳ないけれど、この日で敗退決定だろうと思っていた。トルコに勝てない国がオランダに勝てるとは思えなかった。
ところがどっこい。ここで中1日の強行日程がものをいう。さすがにこの日程では毎試合、選手を固定しては戦えない。日本もオランダも初戦から大半のメンバーを入れ替えてきた。そしてこの2戦目で日本の攻撃を引っぱったのは、初戦には出場していなかった宇佐美、指宿、高木善朗ら、ヨーロッパでプレーする選手たちだった。
さすがにオランダといえども、大半の選手を入れ替えて戦えば、才能のある選手ばかりが出てくるってわけにはいかなかろう(右サイドのルコキってアフリカ系の選手はすごかったけど)。対して、こちらにはバイエルン・ミュンヘンでプレーする宇佐美らがいるんだから、それなりに互角の戦いができても不思議じゃない。
ま、正直いって開始3分で先制されたときには、うわっ、こりゃ虐殺の憂き目かと思ったりしたんだけれど(失礼)、そのわずか2分後に齋藤学がドリブルから個人技で貴重な同点弾をたたき込むと、あとはほんと、互角だったと思う。おー、オランダに負けてねぇ……ってそれだけでもう十分、誇らしい。
そもそも今回の五輪代表は、思うように選手を招集できていない(今回山口蛍がいないのは、おそらくセレッソへの配慮なんでしょう)。かつてならば当然主力となるべきトップレベルの選手たち──香川、清武、宮市、酒井宏樹ら──はA代表やJリーグと日程が重なったり、海外移籍してしまったりして、呼ぶに呼べない。まぁ、だからといって、いつまでも先発を固定できないでいる関塚さんの姿勢には、前からけっこう疑問を覚えていたんだけれど、この試合とか見ちゃうと、五輪代表の監督って難しいのかなぁと思う。
だって、やっぱりうまいんですもん、宇佐美。これだけの才能のある選手を普段から主力として使えないってのは、きびしいもんがあるよな。香川だって清武だって宮市だって酒井宏樹だって、なんでいないのさって話だし(そういや今回は権田もいない)。
とはいえ、サッカー界でオリンピックのステータスが低いって話からすれば、そのために予選の段階から海外組を招集するのは難しいってのもわかるし。いろいろ考えるに、いまの五輪代表監督って、すごい難しい仕事のような気がしてくる。
ま、なんにしろこの日の五輪代表はよかった。得点への意欲がびしばし伝わってきた。その辺はやはり攻撃的なポジションの選手たちが海外で揉まれてきているからなんだろう。宇佐美や高木家の長男のプレーはゴールへ向けて迷いがないように見える(指宿は高さはあるけれど、技術的にはまだまだだと思った)。その積極的にゴールに向かう姿勢が見ていてとても気持ちよかった。
この日のスタメンはGK安藤、DF大岩一貴(千葉)、鈴木大輔、山村、比嘉、MF村松大輔(清水)、扇原、宇佐美、高木、齋藤学、指宿洋史。
注目すべきは、セレッソ・コンビにボランチのレギュラーを奪われた山村が、センターバックで2試合続けて起用されていること。五輪代表ではずっとボランチだったのに、結局こちらでもアントラーズと同じくCBとしてプレーせざるを得なくなったらしい。でも、関塚さんがポジションを変えてでも使いたいと思うくらいだから、そのキャプテンシーは高く評価されているんだろう。おかげでポジションを奪われた形の濱田には気の毒だけれど、アントラーズ・ファンで、セレッソのボランチ・コンビも大好きな僕としては、ありがたい話だったりする。山村のCBとしての適性には、まだちょっと疑問を感じないでもないんだけれど。
この日の3得点は、1点目が斎藤の個人技、2点目が宇佐美のアシストで指宿、殊勲の決勝点は扇原(の右足)だった。あっぱれ、扇原。
勝ち越したあと、関塚さんは残り時間わずかになってから、時間稼ぎのために東や大迫を投入した。選手選考のための大会だったはずなのに、あの時間帯は選考なんてまるで度外視の、なりふり構わない采配がおかしかった。どれだけ本気でオランダに勝ちたかったんだ、関塚さん。
でもまぁ、そういう本気さって大切だよなとも思う。オランダに勝ったという記録はこの先ずっと残るんだから。日本代表が確実に世界との差を詰めつつあるってのが実感できた一戦だった。
ちなみにこの大会、ちゃんと観るのはこれが最初で最後の予定。やはり午前3時近くまで起きているのはいまの生活じゃ無理だ。翌日、眠いこと、眠いこと。
(May 26, 2012)
【追記】結局、五輪代表はこのあとエジプトにも負けて予選リーグ敗退。なぜオランダに勝って、ほかの国に負けるかな。よくわからない。