今年のJ1にはFC東京の監督経験者が4人もいる──というか、開幕当時はいた。
FC東京・初代監督の大熊さん、その後ではいちばん印象のつよい城福さん、去年指揮を執っていたポポヴィッチ、そして現監督のフィッカデンティ。
このうち元監督の3人が率いるクラブが軒並み残留争いに巻き込まれているのだから、なんとも因果な巡り合わせだ。それも、城福さん率いる甲府こそ前節残留を決めたけれど、あとの2クラブは悲惨な状況。
大宮の監督を務めていた大熊さんは、夏場に成績不振の責任を問われて解任。クラブはその後も低迷をつづけ、現在16位で最終節にかろうじて残留の可能性を残しているものの、自力残留の目はもうない。ひとつ上にいる清水との勝ち点は3差だから、清水が次節引き分けでも降格決定。毎年ぎりぎりで残留を決めてきた大宮も、今年はさすがに厳しそうな雲行きだ。
そしてもっと悲惨なのが、この日アントラーズに引導を渡されることになってしまったセレッソ大阪。
このクラブの場合、なぜに名将クルピの後釜にポポヴィッチを招聘したのかがすでにわからない。ポポヴィッチがFC東京で残した成績はそれほど目覚ましいものではなかったし──というか、あのクラブの戦力からすれば、もの足りなかった印象のほうが強い。
そんなポポヴィッチの指揮のもと、案の定クラブは低迷。W杯による中断期間中に早々とポポヴィッチに見切りをつけ、べつの監督(名前が難しくて覚えられないドイツ人)を招くも、この人は1勝もできないまま、結局3ヶ月持たずに再び解任。今季3人目の監督である現在の大熊裕司氏は、前述の大熊清氏の弟だという。しかも過去にJリーグでの監督経験なし。
この局面でそんな実績なし実力未知数の新人監督にクラブを託すってのが信じられない。フロントはいったいなにを考えているんだろう。
大熊弟さんの力量の如何を判断するだけの知識が僕にはないけれど、少なくてもこの日の試合を見るかぎり、大金をつぎ込んで獲得したフォルランや、後半戦に急遽獲得した元ドイツ代表のカカウをスタメンで使いこなせない──フォルランに至っては、ベンチ入りさえしていない──って時点でもう駄目だと思う。
どれだけフォルランやカカウのコンディションが十分でなかろうと、ちょっと前まで母国の代表だった選手だよ? J1残留にあえぐレベルのクラブの戦力として、彼らの実力が不足しているはずがない。少なくてもサッカーを興行として考えれば、彼らのネームバリューは出場しているってだけでファンサービスに値するわけだし。そんな選手たちをスタメンで使わない監督の手腕に僕は疑問をおぼえる。
いや、それでクラブが勝ってるんならばいいけれど。シュート数で相手を下まわって、決定力不足だって嘆くんならば、もうなにをいわんやだ。
今季のJ1でアントラーズが得点数リーグ1位という素晴らしい結果を残しているのはなぜかといえば、それはシュート数でもリーグ1位という数字が表している通り、積極的にシュートを打っているからだろう。やっぱ打たなきゃ点は入らない。
そういう意味で、この日セレッソでもっとも積極的にシュートを打っていたのは、後半から途中出場で出てきたカカウだった。フォルランもその点では積極性が印象的な選手だから、彼が出ていればもっとシュート数は増えたろう。そんな彼らをスタメンで起用しない理由がわからない。
セレッソの降格については、期待外れに終わったフォルランを戦犯扱いするような意見があるようだけれど、僕は本当にそうなのか、疑問に思う。
そりゃ確かに南アフリカW杯のときのような目覚ましい活躍はしていないけれど、少なくてもポポヴィッチが指揮を執っていた序盤戦の彼は、それなりにゴールを決めていた。
終盤戦になってからはほとんど得点がないけれど、記録を見るかぎりでは、ここ10試合ばかりは出場機会もほとんどなかったようだし。全試合フル出場していて7ゴールではものたりないけれど、ほとんど出番がなければゴールが生まれないのも当然。使いもしない選手にけちをつけるのは間違っている。
これは結果論だけれど、僕はポポヴィッチがそのまま指揮を執りつづけていたら、少なくてもセレッソはJ2降格なんて羽目には陥らなかっただろうし、フォルランももっと活躍していたのではないかと思えてならない。
そう、そういう意味では、同じ大阪のクラブながら、ガンバとセレッソの今季の成績はじつに対照的だ。どちらもW杯前は下位に低迷していながら、かたやその後に破竹の勢いで勝ちあがって、ついには逆転優勝が目の前という状況。かたや監督解任で失敗して、そのままずるずると黒星を重ね、ついにはJ2降格の憂き目を見てしまったという……。
それこそW杯中断前の順位でいうならば、セレッソのほうがガンバよりもまだ上だったんだよ?
そう考えると、つくづくセレッソはポポヴィッチ解任を早まったよなぁ……と思わずにいられない。そもそも、それ以前になんでポポヴィッチなんか呼んじゃったんだろうって話もあるけれど。優勝候補とおだてられて勘違いをして、監督解任という劇薬に手を出して、副作用のダメージで自滅してしまった印象。
あぁ、柿谷だって、もしもセレッソがJ2に降格すると知っていたら、スイスなんかにはいかなかっただろうに……。彼は自身いまのクラブで出場機会が得られていないようだし、踏んだり蹴ったりだろう。来年はJ2に帰ってきちゃうんじゃないだろうか。
柿谷にかぎらず、山口蛍、扇原、南野、杉本健勇、長谷川アーリア・ジャスールらのプレーが来季はJ1で観られないと思うと、本当に残念だよ。まったく、蛍の怪我など不運はあったにせよ、これだけの戦力を生かしきれないとは……。まぁ、それだけ今季のJ1が難しかったってことだと思うけれど。
――ということで、前置きが長くなったけれど、鹿島アントラーズがセレッソ大阪をJ2に叩き落とす結果に終わったJ1第33節。
アントラーズのスタメンは、前節の青木のかわりに、出場停止明けの植田が入った本来の形。途中出場で豊川、ルイス・アルベルト、杉本が出てきた。
試合の序盤は、降格がかかっているがゆえに必死のセレッソの圧力をアントラーズがしのぎつづけるという展開。相手に主導権は握られていたものの、安定した守備力できっちりと守っていて、はらはらしつつも見ごたえがある内容だった。
その後、相手の出足が鈍くなり始めて、こちらがボールを持てるようになってからは、現在の実力差がそのまま表れた格好になる。小気味よいパスワークで相手の守備陣を切りくずし、しっかりシュートまで持ってゆける今年の鹿島のサッカーはほんと観ていて気持ちいい。
やがて土居の右サイドの崩しからファーでフリーになったカイオのゴールが生まれ、前半のうちに先制すると、後半は赤崎の2ゴール(頭と右足)で突き放す。そして最後はみごとな連携からの柴崎の駄目押し弾(このゴールにはしびれた~)。リーグ最多得点の実力を如何なく発揮した4ゴールで、アントラーズが快勝した。
セレッソの1点は3-0となったあと、背番号9のFW永井龍23歳。この子はもう1本、あわやというシュートがあったし、なかなかいい選手だった。セレッソはほんと、若手を育てるのが上手いよなぁ。でも勝てなくちゃなぁ……。
裏ではまたもやレッズが醜態。退場者が出てひとり少ないサガン相手に後半ロスタイムに同点ゴールを浴びて1-1のドロー。神戸相手にしっかりと勝ち点3を奪ったガンバについに勝ち点で並ばれて、得失点差で2位に降格してしまった。
ガンバの最終節の相手が徳島なのを考えると、残念ながらこれでガンバの逆転優勝は決まったも同然でしょう。ここまでくると、レッズの勝負弱さも、ある意味一芸かもって気がしてくる。
いやでも、徳島には最終節、最後に意地を見せて欲しいな。無理に勝とうとしないでいいから──というか、いまのガンバに勝てるとは、とうてい思えないんだから──、よくばって白星とか狙わず、穴熊のように守りに守って、せめて勝ち点1を分けあうくらいの甲斐性をみせて欲しい。レッズの相手がグランパスなのを考えると、そうなれば鹿島にも優勝の可能性がわずかながら残るので。ぜひともがんばって、すでに優勝を確信してるだろうガンバにひと泡吹かせてもらいたい。
あぁ、そうそう、この日の勝利により、アントラーズの3位以内がほぼ決定。最終節の結果次第ではサガン、レイソルと勝ち点で並ばれる可能性があるけれど(というか、いつの間にかレイソルがこの位置にいるのがすごい)、得失点差ではこの両チームに大差をつけているため、抜かされることはまずない。
――ということで、来季のACL出場が決定!――と思ったら。
なんと。日本は近年の成績不振により、来季の出場枠が4から3.5に減らされてしまい、リーグ3位のクラブはプレイオフを戦わないといけないんだとか。おいおい、なんてこった。
まぁ、とはいえ天皇杯はガンバの優勝でほぼ決まったようなものだし(決勝の相手が山形ではねぇ……)、そうなればリーグ4位が繰り上げ当選となるので、3位のアントラーズのACL出場は決まったも同然。楽しみだな~、ひさびさのACL。
ということで、なにはともあれ、今年もJ1の優勝決定は最終節に持ち越しとあいなった。あぁ、来季からは2ステージ制のせいで、このわくわく感が味わえないと思うと、本当に残念だよ……。
(Nov 30, 2014)