2014年12月のサッカー

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  1. 12/06 ● 鹿島0-1鳥栖 (J1・第34節)
  2. 12/13   G大阪3-1山形 (天皇杯・決勝)

鹿島アントラーズ0-1サガン鳥栖

J1・第34節/2014年12月6日(土)/カシマサッカースタジアム/スカパー!

 予想どおり上位3チームの最終順位に変動こそなかったものの、その結果にいたるまでの過程があまりに予想外だったJ1の2014年最終節。
 他力本願ながら、2点差で勝てば、わずかながらに優勝の可能性が残されていたアントラーズは、2点差勝利どころか黒星に終わってしまって、無念の終戦。
 で、試合終了後、即座にチャンネルを替えてみると、ガンバは徳島相手にスコアレス・ドローで終わろうとしている(おぉっ、徳島えらい!)。
 対するレッズはグランパス相手に、ハーフタイムの時点では1-0と勝っていた。
 すわっ、これはレッズの再逆転優勝か──と、あわててチャンネルをレッズ戦に切り替えてみれば、だ。
 レッズはいつのまにか1-2と負け越していました。なんだそりゃあ?
 ……ということで、結局、最終節はガンバが引き分け、レッズとアントラーズが黒星に終わってガンバの優勝が決まるという、いたって締まらない幕切れを迎えたのだった。
 いや、それにしてもまさか、上の2チームがともに勝ち点3を取り逃そうとは……。
 つまり、もしもアントラーズが期待通りに2-0で勝ってくれさえいれば、2007年を再現するような大逆転優勝になっていたわけだ。あぁ、返すがえすも残念な結果に終わってしまった。
 ──まぁ、とはいえ、この流れでまたうちが優勝をかっさらってしまったら、それはそれで申し訳ない気がしないでもないんだけれど。
 それにこの日の対戦相手、サガン鳥栖は正直強かった。だてに4位につけちゃいないと思った。
 今年の鳥栖については、なんといっても中盤戦で首位に立った状態で、監督の尹晶煥(ユン・ジョンファン)を解任するという、あり得ない行動に出たのがインパクト大だった。その後、いまの吉田恵監督が指揮をとるようになってからしばらくは調子を落としていたから、やはり監督かえちゃ駄目じゃんと思ったものだけれど、結局は持ち直して優勝争いに絡んでみせたのがすごい。言っちゃ悪いが、そこまでの力があるとは思っていなかった。おみそれしました。
 この最終節を見るかぎり、監督交替後もやっているサッカーには少しもブレがなかった。豊富な運動量を武器に、ハードワークで相手の攻撃の芽を摘みとり、攻めては迷いのないカウンターで相手のゴールを脅かす。そういう戦いがきっちりとできていた。
 今年のアントラーズは、僕が観たほぼすべての試合で相手より多くのシュートを打っているのだけれど、この日のシュート数はともに10本と互角だった。というか、終盤に攻勢をかけたから五分で終わったけれど、試合の大半は鳥栖が上回っていた。要するにアントラーズは持ち前の攻撃力をみごとに封じ込まれていたわけだ。主将の藤田を欠いていてなお、そういう戦いができるってのは、敵ながらあっぱれだった。
 鳥栖は守備力の高さだけではなく、攻撃での手際のよさも印象的だった。とくに水沼や金民友(キム・ミヌ)のドリブル突破からは何度となくチャンスを作られた。前半早い時間帯の先制点は、最前線にあてた楔のボールにダイレクトであわせての豪快なミドルシュート(決めたのは高橋義希という選手)。あれには曽ヶ端もお手上げだった。
 そうそう、あと鳥栖はGKの林彰洋がよかった。だてに代表に呼ばれちゃいないなと思った。まったくこの試合、僕は観ていて何度「林、邪魔!」と叫んだことか。レッズの西川やガンバの東口と並んで、強いクラブにはいいGKが不可欠であることを実感させてくれた選手のひとりだった。
 以上、思わず鳥栖語りが長くなってしまった。
 この日の鹿島のスタメンはソガ、西、植田、昌子、山本、柴崎、オガサ、遠藤、土居、豊川、赤崎の11人。途中出場はルイス・アルベルト、中村充孝、本山の3人。
 スタメンはカイオを累積警告で欠いたため、豊川ってところが前節とは違った。僕は豊川のアグレッシブな姿勢が好きだけれど、現状ではカイオのようなキープ力は彼にはない。なまじ相手の術中にはまってしまった試合だっただけに、積極的にボールを持ってドリブルで仕掛けられるカイオの欠場は痛かったなぁと思う。
 あと、絶対に勝たないといけないってプレッシャーがあったのか、この日は全体的に細かなミスも多かった。とくに前半はパスが微妙にずれていて、うまくつながらない感じだった。まぁ、それは心理的なものよりも、鳥栖のプレスが物理的にきつかったせいかもしれないけれど。
 いずれにせよ、内容は間違いなく相手のほうがよかったから、負けるべくして負けた試合だったと思う。この一年の最後にして、中田浩二の現役最後の試合がこれというのはどうにもさびしい。そしてその中田浩二がベンチ入りさえしていなかったのが、なおさびしい。トニーニョ・セレーゾの薄情者め~。
 ――って、まぁ、でも今年の成績では文句も言えないけど。よくもこの若いメンツを率いて、最後まで優勝争いを演じてくれたものだと思う。トニーニョ・セレーゾを大いに見直した一年でした。先生、楽しいシーズンをどうもありがとう。
 もちろん選手全員にも感謝したい。とくにディフェンスの柱として全試合フル出場(!!)を果たした昌子にはびっくりだわ。まさか彼がこんな短期間でここまで頼りになるDFに成長するとは思っていなかった。個人的には今年のMVPは彼かも。
 昌子と植田がこの先そろって経験値を上げていったら、向こう十年くらいは史上最強の最終ラインを誇れそうな気がしてきた。それこそ鹿島にかぎらず、日本代表もこのふたりでいけるんじゃないだろうか。来年以降にも大いに期待しています。
 最後に中田浩二、そして仙台で現役引退を発表した柳沢敦に。ふたりとも長いあいだ楽しませてくれてありがとう──。
 試合後の中田の引退セレモニーでは、うつむいたまま顔をあげようともしない小笠原の姿にほろりとさせられた。

 ということで、2014年のJリーグもこれにて幕。優勝はガンバ大阪。アントラーズは3位。得点王は2年連続で大久保。降格は徳島とC大阪、そしてこの日決まった最後のチームは、やはり大宮だった(あぁ、増田誓志……)。入れ替わりにJ2から昇格してくるのは湘南、松本山雅(!)、山形の3チーム。3年連続でプレイオフで敗退のジェフ千葉がなんとも哀れだ。
 そうそう、そういや今回の最終節にはもうひとつハプニングがあったんだった。なんと新潟-柏戦が、突然の大雪のために延期となってしまったのだった。しかも代替試合は月曜の夜に鹿島で、とかいうし。そんなの簡単に観に行けないよなぁ(追記:入場者数2千人ちょいとのこと……)。一年の締めくくりの試合を観そこなった2チームのサポーターがなんとも気の毒でなりません。
 思い返せば、今年の開幕戦では、甲府も大雪のせいで開幕戦をホームで戦えなかったんだよな。シーズンの最初と最後に同じようなトラブルに見舞われるってのも、なんとも不思議な巡り合わせだ。秋春制の導入を考えるならば、そういうこの国でどうやって冬場に試合をやるのか、ちゃんと考えろって。たぶんサッカーの神様はそう言っている。
 そして1シーズン制の歴史はいったん今年で終わり、来年からはまた2ステージ制が始まるんだそうだ。そのことを考えると、なんとも憂鬱な気分になる。
 まぁ、来年のことはまた来年考えよう。
(Dec 07, 2014)

ガンバ大阪3-1モンテディオ山形

天皇杯・決勝/2014年12月13日(土)/日産スタジアム/NHK総合

 国立改築のため、今年は恒例の元日決勝が前倒し。12月のなかばに天皇杯が終わってしまうという。しかもその結末がガンバの3冠達成という。異例ずくめの2014年最後の公式戦。
 異例っちゃぁ、今回は前倒し日程で調子を崩したのか、J1勢が軒並み低調で、アントラーズにいたっては、2回戦でJFLのクラブにPK戦で破れて早々に姿を消してしまうという体たらく。結局、準決勝に残ったのはJ2のクラブ2チームに、去年はJ2だったガンバ、そして今年は降格レース真っ只中にいた清水とくるんだから、なんだそりゃって話だ。天皇杯の伝統が泣いている。
 この日の決勝に残ったのはガンバ大阪とモンテディオ山形──って、なにげに去年のJ2のカードじゃん。
 まぁ、ガンバはともかく、山形が決勝に残ったと知った時には、さすがにそれはどうなんだと思ったものだけれど、それでも来季のJ1昇格を決めているわけだし、プレーオフでのGK山岸(元レッズ!)の神懸かり的な活躍──ジュビロ磐田のJ1昇格の夢を奪ったGKによるロスタイムのゴールは伝説もんでしょう──がとても印象的だったので、まぁ、こういう展開ならばこのカードもありかなと思って観ていた。
 それと、今季の山形では、元鹿島の石川竜也が主力としてMVP級の活躍をしていたようだし、この試合では途中出場で中島裕希が出てきたりして(いまはここにいたのか)。アントラーズ・サポーターとしては、それなりに見どころがあった。
 あとね、このあいだから山形のサッカーは鳥栖のそれと似ているなと思っていたら、この日のテレビ放送はゲストが豊田陽平で、彼が「うちと似ている」と公言していておもしろかった。「だから手強くて来年は嫌な相手になりそうだ」とまで言うし。なんか自画自賛してません? でも豊田、朴訥とした感じがなかなかおもしろかった。将来解説者としていけるかも。
 試合はもしも山形が徹底的に守りとおしてスコアレスゲームに持ち込むような展開になれば、いくらか山形にも勝機があるかなと思っていたのだけれど、結局はキックオフから5分もしないで、宇佐美のゴールが決まった時点で勝負ありの感あり。ガンバはさらにパトリックのゴールで2-0として前半を終える。
 山形はそれでも諦めずに反撃を試み、後半一時は2-1と盛り返したのはあっぱれだった。それでも終盤に交替カードを使い切ったあとで、DFの山田拓巳が足をつってピッチを離れているあいだに、宇佐美に追加点を奪われて、今度こそ本当に勝負あり。波乱の連続だった今回の天皇杯も、最後は順当にJ1王者ガンバの3冠達成で幕を閉じた。
 いやぁ、しかしガンバの宇佐美とパトリックの2トップはちょっと強烈だわ。いまのJリーグでは間違いなく最強ではないでしょうか。ふたりともJ1前半戦では出場機会がなかったのに、年間ベスト11に選ばれたのも当然って存在感だった。
 宇佐美はあいかわらずボールタッチは多くないけれど、ことボールを持ったときの瞬間的な判断力には、日本人離れしたものを感じた。胸トラップからの浮き球をダイレクトで打って先制点につなげたシュートとか、圧巻だったし(山岸に止められこそしたものの、こぼれ球に詰めていて、あらためて決めたのが偉かった)。パトリックへの長めのパスとかも、的確だった。あれを見たらアギーレも将来的には宇佐美を代表に呼ばずにはいられないんじゃないだろうか。今年は怪我で前半戦を棒に振ったので、通年休みなくプレーできたとしたら、来年は宇佐美の年になりそうな予感。
 しかし、今年はこれで全日程了で、この先、来年の3月まではJリーグの試合が観られないってのは、さびしいものがあるな。元日に行動を制限されるのは不便だから、天皇杯の決勝自体はべつに元日でなくてもって思うのだけれど、準々決勝や準決勝は、やはり12月末にあって欲しいなと思う。すっかり年末年始のサッカーが体内時計に組み込まれている感あり。
(Dec 14, 2014)